アメリカでプライベート・エクイティ・ファンドを共同経営している中山道子です。
最近、ある投資家様と話したとき、その方がこんなことを言っていました。
「米国式のビジネスは効率優先で、こちらの希望が先方の方針に合わなければ、あっさり切り捨てられますね。」
この方は、良い管理会社に出会いながらも、あちらが、「やらない」と決めた業務については、問い合わせをしても、「NO」の返事さえ来ない、そういう米国式効率経営の顧客選別眼の厳しさを体感している、ということでした。
この投稿記事のテーマは、そんな「効率主義社会アメリカ」は、効率至上主義のゆえに、別の問題を作り出している、それが、私達プレイヤー各人が背負わなければいけない不便である、そういうことを認識しよう、という趣旨です。
米国式「効率」のメリットと代償
米国は実力主義で、無駄なやり取りは排除されます。
年賀状や菓子折りといった形式的な習慣もなく、合理的で気持ちよい部分も多くあります。
しかし、この効率性はしばしば“切り捨て”と紙一重です。
AI に仕事を奪われる話題もその延長線上にありますが、実際にはもっと身近なところでこの効率主義は私たちの生活に影響します。
ここで取り上げたいのは、この一点。ビジネス側が効率を求めているため、顧客の要望は、あえて切り捨てられるのだという視点を持とう、ということです。
顧客側は、
「嫌なら他所へどうぞ」
「お膳立ては全部やりましたが、トラブルシューティングは自分でやってください」
と言われやすくなる。
これが米国式効率化社会の現実なのです。
不動産における「効率」の現実
〘問題が起きても、誰も助けてくれない、自助努力が当然視される〙。この効率主義は、不動産取引でも顕著です。
米国では、物件の購入後に問題が見つかっても、
- 建物の不具合 → Home Warranty(保険)
- 名義トラブル → Title Insurance(権原保険)
で“自分で解決する”のが前提です。これらの保険は、売買時に、売り手が買ってくれますので、「あとは自分でやってね」というわけです。
購入時に関わった業者も、コミッションを受け取った後には、一切関係ありません。
仲介会社も、検査会社も、決済代行会社も、売り手も、購入後は連絡してくれるなというスタンスです。
効率化の裏で、アフターケアは極端に切り捨てられているわけですね。このことで、不動産仲介エージェントなどは、新規のセールスに100%の努力を注力できるわけです。いつまでも、フォローに手間がかかっていたら、売上が立ちません。効率的なセールスというのは、見込み客を過去の客に対して優先するメンタルです。
結論:効率主義社会で生き抜くための心構え
効率社会は便利ですが、その前提として、忘れてはならないのが、ロスの問題。この状況では、どんな消費者も1〜2割は“ダメ商品”を掴む可能性があるのです。
あなたも、私も、ものやサービスを購入した場合で、何か問題があったら、
・クレームしても返事が来ない
・助けてくれる人はいない**
という前提で動く覚悟が必要なのがアメリカ社会。
米国流の効率主義は、サービス品質を一定保ちつつも、「切り捨て」も同時に発生する世界だからです。
その前提を理解した上で、米国不動産に向き合うことが必要です。
このような状況に対し、不安を感じる場合は、ハワイのように日本人のニーズを理解する業者が多数存在するエリアで、日系サービスを利用するなどの対策は可能ですが、どのような方向性を取るにせよ、米国を代表とする海外では、品質管理が雑であること、それこそが、まさに効率経営の肝であることを知っていきましょう。
最後に、日本の状況を振り返ると、、、
2025年現在、日本では、「効率至上主義」より、「人材不足」により、米国他の社会類似のレベルへと、サービスが低下していく機運がありますね。これからの日本、こうして普通の国になっていくのでしょうか。ジャパンクオリティの今後もが、興味深いですね。