2024年7月現在 案件の審査をたくさんやっていますが

アメリカ不動産投資で資産倍増中ブログの中山道子です。

現在、WEIRD TIME(微妙な時期)というかいろいろな案件を見ていますが、「これだ」と思えるものがなかなか出ません。

今日は、いくつか、いつものように具体的な内容をぼかし、「無理」となった案件例を、取り上げてみたいです。

《デトロイト近郊で富裕層が居住するバーミンガム市に更地2つを提供するから》

この案件では、下が魅力でした。

□ 借り手は、地元で成功している有名事業家で収入も資産額も高い

融資希望額は、50万ドル。最初、借り手は、「200万ドルの価値のある更地を提供する」という話だったので期待していたのですが、申し送りされてきたのは、きちんとした鑑定額ではなく、BROKER’S PRICE OPINION。

BPOとは、不動産ブローカーライセンスを持っている業者さんの査定のこと。一般的に、普通の居宅案件程度であれば、精度はそれほど低くないのですが、案件によっては、きちんとした鑑定書と比べると、有効性が低く、特に、銀行融資を取るときには、いずれにせよ、鑑定士の資格がある方が物件内に立ち入るといった手順を取って作成する鑑定書が必要になります。

今回の土地の査定書については、内容自体は不透明なことはなく、しかし、「この土地が100万ドルの価値がありますよ」という結論には明らかに無理がありました。

該当土地区画2箇所がなぜ、それぞれ、100万ドルの価値があるかというと、以下の論法でした。

「これらの土地エリアで、マンションを開発すれば、1区画の土地に10戸2ベッドルームが建築できる。そうとなれば、すぐ満室経営だ。そこで、400万ドルの価値がつくだろう。商業物件開発では、土地取得代は、25%が普通なので、これらの土地は、それぞれ、100万ドルの価値があることになる。」

地元地主に対する営業トークのようなこのロジックは、何だ、、、

実は米国の高級都市では、ゾーニング、つまり、土地利用の区域指定は大変厳しく、戸建てしか建ててはいけない場所に、マンションを建てるためには、区域指定を変更する必要があります。

BPOや鑑定書ですらも、「ゾーニングについては、専門家に聞いてくれ」的なスタンスで、メンションは通り一遍であることが多く、このBPOでも、バーミンガム市で、これらの土地がどういうゾーニング指定を受けているか自体(レジデンシャル、つまり、戸建て建築用)は表記されていましたが、マンションを建てるには、ゾーニング指定を変更しなければいけないことについては、スルー。

私は土地に対する融資も多少やっているので、プロセスについても、頭の中での知識だけは存在しています。

ゾーニング指定を変更するとなると、地元の市民が参加する委員会のヒアリングを経なければならず、大体、委員会は不定期開催なので好きなときに申請なんかできません。ゾーニング指定変更申請するとなれば、委員が誰かを確認し、事前の根回しを経たうえで、施主が、委員会に自分で参加して趣旨説明をするといった1年越しのプロセスが必要になるのが普通。

このため、土地のゾーニングを変えるだけで、土地の価格というのは変わるものなのです。

融資申請書類を見ると、融資希望者様は、ここ2,3年に、これらの土地を、それぞれ20万、30万ドルで購入したとあり、購入後、区域指定変更などの手は全く入れていないわけですから、値上がりしたとしてもインフレ率しか上乗せできません。

回答としては、「BPOは、合計200万ドルとあるが、プライベート融資担当者としては、区域用途指定の手間を取る力はなく、そのコストが入っての逆算には賛成できないので、鑑定額は、購入額そのままの50万、インフレを入れて55万ドルがいいところ。50万ドル融資を希望するならもっと担保を持ってきてください」としか言えませんでした。

相手は資産家で、含み資産の多い賃貸物件も多数ホールディングしていたので、多少時間をかければ、融資枠増額申請をするなどの手がいくらでもあるように見受けられました。「それならもういい」で終わりました。

《要修理物件、自己資金で、初期融資を返済するから、差額15万ドルだけ頼む》

こちらは、上と逆で、場所は、デトロイト近郊ではなく、車で3時間もかかるグランド・ラピッド市近郊。せっかく地元に根ざす初心で戻ってきているので、第一に目が届かないというのが気に入りませんでした。

申し送りに基づくこちらの魅力は、下です。

□ 修理後50万ドルの鑑定額の物件に15万ドルだけ貸してほしい。低い融資比率。

話を聞いて、断ることにした理由は、「これは、すでに数字的に破綻しているフィックスアップだ」と確信したから。借り手様からの申し送りによると、物件を当初、要修理で購入し、その際の初期融資を返済する必要がある。修理は進んでおらず、自己資金をプラスして初期融資を返済するので、差額15万ドルだけ繋いでほしい、という話でした。

この案件については、書類を見て、「このフィックスアッパーさんは、すでに赤字状態に陥っている。2年間でフィックスが進まなかったのもおかしい」と判断したため、<融資比率が低いため、手堅そうです>ということで申し送りが来ましたが、ノー回答をすることとしました。

フィックスアップの場合、最も重要なのは業者さんの技量で、ここがしっかりしていないと、相手が何をやっているかを貸し手がコントロールすることは大変困難。

お膝元、眼の前であれば、それでも、失敗したら、物件を取り上げて、共同経営者の経営する修理会社を使ってもらい、自前で修理をすることができますが、車で3時間ではそれは無理です。

修理が進んでいないこともそうですし、2年経って自己資金をさらに投入し、この物件の完成に拘泥するのも、冷静さを失っている証拠で、問題があります。

融資はウインウインでないと案件が想定内で進みません。

こういう、「ちょっと合理性、冷静さがあるかわからない方」につなぎで融資をしてしまい、この方が、3ヶ月後に、「あれ、自分、すでに赤字に陥っている!修理をきちんと済ませても、投入した額はぜんぜん帰ってこないぞ。なのに、高金利融資だけは返済義務があるのか!」という事実に目が覚めたら、どんな行動に出るかは考えることもしたくありません。

もちろん、頑張りで修理を完成させ、返済をしっかりしてくれる確率のほうが高いのかもしれませんが、過去2年間に修理ができていないわけですので、頑張ろうにも資金が足りなくて頓挫することも考えられるわけです。

以上から、米国で言う、

Throw good money after bad
悪い状況に陥っている場合、同じ方針で追加増資をしても問題は解決しない

という状況には陥りたくないと回答し、共同経営者に、「一見硬いと思ったが、そういうふうに判断するべきなのか」と、感心されたという次第です。

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終わりに

以上のように、常に案件審査はやっていますが、経済に不透明感がある現在、ご投資資金を預かる側としては、ご資金が寝てしまう場合であっても、リスクを取るより良いと割り切るしかありません。

実は、このような微妙な状況が続く可能性を前提に、現在、並行して、「融資」だけではなく、「積極投資」、「物件経営」のためのFOR SALE物件開拓や審査も並行して行っています。それについては、また別途。