アメリカ不動産投資で資産倍増中ブログ管理人、プライベートエクイティファンドマネージャーの中山道子です。
当ファンドでは、基本、要修理物件を取得する際には、転売目的ではなく、長期保有が前提です。修理をして価値を高め、すぐに含み資産を出す。そこから賃貸に回し、初年度からキャップレート7%といった高利回りを狙うのが鉄板です。
しかし、今年、一つだけ、地元のビジネスパートナーの紹介で共同投資した物件があります。ジョイント・ベンチャー自体が短期収益を目標としていたため、修理後、賃貸ではなく売却することにしました。つまり、**FIX AND FLIP(フィックス&フリップ)**です。
物件はPINGREE PARKという地区にあります。ここは、GENTRIFICATIONで爆発しているINDIAN VILLAGEの向かいのエリア。いわば、「上昇気運に乗ってエリアが大幅改善したブロックの近く」という波及的なエリアです。



周囲が殺風景なのはともかく、さすがの仕上がり!実需希望者への転売の場合、家電は白ではなく、シルバーが基本、など、修理のグレードは高く設定する必要があります。
インディアン・ビレッジは、デトロイトのスーパー田園調布、グロース・ポイントにも至近ということで、もともと、歴史的な美しい建物が多く、昔のマンション(日本式のマンション、つまり区分所有ではなく、いわゆる大型の建物という意味のMANSIONです)が歴史的建造物指定され、観光の名所にもなっています。この物件は、シュタイナー式教育で有名なデトロイト・ウオルドーフ・スクールにも歩いていけるナイスポジションです。
収支は以下の通りです。
購入価格:6万ドル
修理予定費用:12万ドル(*賃貸向けの修理の倍位、高くなります)
掲載価格:29万9000ドル
不動産情報サイトMLSへの掲載は始まっていますが、惜しむらくは、修理に少し時間がかかり、不動産売買が盛んになる夏ではなく8月末にしか掲載ができなかったこと。そのためか、内見の申し込みがまだなく、1万ドル値段を下げて様子を見ているところです。
私たちもベテランですが、フィックス&フリップにはリスクも相応に存在します。どんなにベテランであっても、10件やれば、1〜2件は利益が出ない、または赤字すら出てもおかしくない世界です。
私がこのように言う理由は、フィックス&フリップの場合、コントロールすべき要因が多すぎるからです。この物件も、修理を始めたところ、事前見積もりで見つからなかった土台の問題があり、修理は難航しました。
費用については、共同経営者が建設会社や管理会社を経営しているため、予算オーバーになるのをなんとか支えてくれたようです。まだ最終収支を見ていませんが、大幅には超過していないと思います。
しかし、売却時には各種費用がかかるのが不動産です。
「プロがやってると自称しているようだが、手間の割に大したことないな」
と、もしかしたら思われたかもしれません。
実際、利益が確定しても、手間や税金もかかります。 このように、フィックス&フリップは、長期的に持続可能な安定的なビジネスとは言えません。そのため、私達は、リスクとリターンのプロフィールが最適な物件を購入し、修理をして賃貸に出す長期戦略で、大局的な観点に立つことでブレを最小化する戦略を取っています。
この物件は、賃貸に出せば月額2,000ドルくらいで、20万ドルかけて年収2万4,000ドル。しかも、場所がいいので固定資産税も高く、投資する現金に対するリターン(CASH ON CASH)は高くありません。
ただ、直近のキャッシュフローが低めなことを除けば、資産価値的には長期的にはより高いので、少し現金収益が低くても、ポートフォリオの一部とすることも不可能ではありません。しかし、冒頭で述べた事情、つまり共同パートナーが短期で売却したいという前提で持ってきた話に乗る結果となったため、「短期売却」をすることになりました。
このように、不動産も戦略の如何で明暗を分け、大きく異なった展開となります。昔からフィックス&フリップをしている人たちと多く付き合っていますが、リスクが大きいことを知っていたので、「どうして長期的視野に立たないんだろう」と思ってきました。
こうした方々は、日々の生業として修理業を営んでいるのであって、それは、例えば自分で厨房に立つオーナーシェフのようなものなのかもしれません。しかし、長期資産形成のためには、現場のシェフではなく、レストラン経営者の視点に立つ必要があります。
この物件も、シーズンが終わりつつある秋に向けて、今の価格で買付希望者が出てくるのか、または28万ドル以下にならないと決着がつかないのか、わかりません。いずれにせよ、多少、不本意な形でお別れすることになりそうです。投資家は、目先の利益を追うな、という良い教訓ですね。