米国で納税者番号を取得する!前編 ITIN NUMBER とは何か 


アメリカ不動産投資で資産倍増中!
ブログ管理人の中山道子です。この記事の後編で、取得方法をご説明していますので、そちらも合わせてご覧ください。

米国で納税者番号を取得する!後編 ITIN NUMBER の取得の段取り 

この記事の概要

米国で不動産投資に着手する場合、納税者番号の取得が必要になってきます。

米国で生まれたり、留学・仕事をした方は、SSN(社会保障番号、SOCIAL SECURITY NUMBER )を持っていますが、こうした経験がない場合、ITIN NUMBER と呼ばれるタイプの納税者番号を申請することになります。

申請は、米国の連邦政府直管の内国歳入庁( INTERNAL REVENUE SERVICES、IRS 、日本の国税庁にあたる)にて行います。

米国で、はじめて、確定申告を行う時に同時にするのが一番楽ですが、時間の余裕がない場合、「これこれの投資を行い、それに基づき、収益を上げる予定で、そのため、それを申告するのに納税者番号が必要です」ということを説明する書類を作成し、番号申請だけをまず行うことが必要になります。

この前編記事では、実際的な取得の段取りについてではなく、「どうして、納税者番号が必要になってくるのか」という鳥瞰図のご説明をします。

外国人が納税者番号を必要とするのは、申告が必要になった段階。

昔は、欲しい人には、割合、簡単に発行していたとも聞きますが、現在は、「こういう理由があって申告が必要になりました」という旨を説明する書類を付けて、パスポート等 ID 認証とともに、歳入庁に申請し、回答を待つことになります。

確定申告が必要になる場合の例(不動産編)

★ 物件を購入し、賃貸に出して家賃を受け取る場合。
★ 物件を購入し、別荘として利用後、売却を決めた場合。
★ 私のやっているような「不動産への融資」スタイルの投資で利息が生じる場合。

それぞれ、見ていきましょう。

物件購入後、すぐに家賃が生じる場合

物件を購入するにあたっては、納税者番号は、要求されません。しかし、家賃が生じるケースでは、購入後、すぐに、納税者番号を取得する必要があります。

実は、外国人に対して、家賃や利息等の送金をする米国内機関は、管理会社であれ、何であれ、送金前に、「該当送金先の納税者番号を取得しておく義務」があります。

ところが、外国人の場合、「米国で納税者番号がない」ということになると、IRS の規則上は、

「その場合は、家賃や金利を分配する会社が、源泉徴収を行い、当庁に徴収税を送金しなさい」

となります。

顧客側は、徴収伝票が回ってきたら、納税者番号を取得後、確定申告で、差額があれば、それを取り戻すことになります。

一般論的に言って、多くの管理会社で、このルールを厳密に守っていないところもあるかと思います。

なので、「長年賃貸経営をしているけど、管理会社に納税者番号を記載する書類を要求されたことはないなあ」という方もいるかもしれません。コンプライアンスしているかどうかのチェックや懲罰が、あまりない規定なので、小規模の経営なら、そんな決まりがあることを、経営者が知らない会社もあるでしょう。

しかし、決まりがある事自体は間違いなく、万が一、監査の時、該当の管理会社が、そのルールを守っていないということになると、税務署とのトラブルの元になるかもしれない、ということです。

米国籍の方が要求される書類は、下の通り。

W-9

外国人で ITIN ナンバーを持っている方が要求される書類は、下のいずれかです。

W8-BEN
W8-ECI

どちらも、基本、米国内で行われ、米国内で申告の対象となる取引を掌握するための IRS のへ報告制度の一環です。銀行などの金融機関でも、利息が生じたりしますので、そっちの関係で、これらの書類にサインをする必要があった方もおいででしょう。

売却については、次の「別荘の例」を御覧ください。賃貸物件についても当てはまります。

 

別荘として利用する場合でも、納税者番号は最終的に必要になります

この場合は、収益が上がらないため、当面は、申告をする必要はないのですが、他方では、売却するまでには、納税者番号を取得しないと売却自体ができなくなります。

これは、一般に流通する物件を売買する場合、タイトル・カンパニーという司法書士的な役割を演じる決済段取りの機関を通して金銭の授受をするため。

タイトル・カンパニーは、不動産決済取引を司るためにいろいろな規制を受けて行動します。その多くは、投資家にとって、取引の安全を守るために、大きなメリットとなるわけなのですが、その一環として、取引概要を、IRS に報告するという義務があるのです。

もう一つ、外国人が不動産を売却した後には、儲かっていようといまいと、確定申告をする義務が生じます。過去には、確定申告を行わずに、終わらせてしまう外国人が多かったということで、現在、米国の歳入庁は、外国人が物件を売るときには、

「売却価格から源泉徴収」

を行うことを、決済代行機関に義務付けています。

これを、FIRPTA WITHOLDING といい、歳入庁の説明は、下のリンクです。

Withholding of Tax on Dispositions of United States Real Property Interests

具体的な例を想定すると、こんな感じです。

別荘を、キャッシュで30万ドルで購入、賃貸収入はなかったが、7年後に50万ドルになった。売却時に、売却合意価格の15%である7万5,000ドルを、決済代行機関( TITLE AGENCY、タイトル・エージェンシー)が差し引き、歳入庁に送金する。

このケースでは、融資がなかったので、本来、この方は、50万ドル近くの現金(マイナス各種手数料)を受け取ることができるはずですが、歳入庁への送金があったため、決済時には、結局、受け取ることができる額は、7万5,000ドル分、低い状況です。

この方は、そこから、この年の年度末に、実際に確定申告をし、「実際にはいくら儲かったか、実際に払うべきキャピタルゲイン税は本当はいくらであるべきか」を計算、歳入庁に確定申告書を送ります。

この方の場合、実際には、各種手数料や、修理代を引くと、実際のキャピタルゲイン純益は、12万ドルしかなかっとします。

一般に、長期キャピタルゲイン税率は、連邦レベルで、15%の事が多いので(複雑なのでここは例として見て、実際にいくら掛かるかの参考にはされないでください)、12万ドルの15%は、1万8,000ドル

IRS からは、7万5,000ドルと1万8,000ドルの差額を返してもらうことになります。

この方は、利益があったわけなので、源泉徴収が生じても、仕方ない感じですが、これが、もし、50万ドルの物件が30万ドルでしか売れず、ロスカットで終わる場合でも、30万ドルの15%の源泉徴収が生じ、それを回収するための確定申告が必要になりますので、お気をつけください。

もう一つ、この源泉徴収のコンプライアンスは、米国全土で津々浦々まで周知されているわけではないらしく、決済してみないと、実際に差っ引かれるかはわかりません。私も2018年に何件かの売却のお手伝いをしましたが、その一部は、源泉徴収されず、取り戻す手間がなくてラッキーでした。(もちろん、そうであっても、確定申告自体は、するのが義務です。)

 

不動産への融資スタイルでの投資で利息が生じる場合

投資方法は全く違いますが、これも、不動産を利用して収益を得るということで、「賃貸収入」を上げる場合と同じ書類( W-9 か W-8 )を提出し、確定申告をすることを約束する必要があります。

これがない場合、利益を分配する立場にある会社が、源泉徴収代行をする必要が生じます。

源泉徴収は、納税当局のポリシーで、「確定申告を促す事ができるように、懲罰的な税率を設定」していることが多いので、通常は、確定申告すれば、「本来払うべき税率と、徴収されていた額との差額」が、取り戻せることが多いでしょう。

逆に言えば、納税者番号は出来るだけ早く取得しておくことが、トラブル回避のために必要です。

現在、ちょうど、私の投資案件を新規開始された投資家様には、納税者番号取得をお願いしているところです。今年の年末(2018年12月から2019年1月)は、IRS の政府閉鎖で閉口しました。

後編では、実際の取得の段取りをご説明します。相手はなにせお役所なので、「手続きをしないと、源泉徴収だぞ!」と言う割には、あちらの動きは鈍く、申請から、番号取得まで、最大2ヶ月がかかります。

この記事のまとめ

外国人が米国不動産投資をする際には納税者番号を取得する必要があります。具体的なケースを取り上げ、どういう局面で納税者番号が必要になるか、また、納税者番号の取得が遅れるとどうなるか、ということをご説明しました。

物件を売却したい場合、納税者番号がなければ、売却できません。

家賃収入を得る際には、納税者番号を管理会社等に告知しなければ、源泉徴収されてしまうかもしれません。

税務当局のルールははっきりしていますが、周知されておらず、一般慣行は、ばらつきがあるため、ルール通りに段取りを進めなくても、なんとかなってしまうこともありうるかもしれませんが、それは例外。

ポイントは、「納税者番号は早めに取得しましょう」ということです。

この記事の後編で、取得方法をご説明していますので、そちらも合わせてご覧ください。

米国で納税者番号を取得する!後編 ITIN NUMBER の取得の段取り