不動産投資家、弁護士との付き合い方/弁護士費用高騰がビジネスのコストを圧迫する!

居宅不動産ファンド・マネージャーの中山道子です。

不動産投資も上級になってくると、弁護士との付き合いがどんどん増えてきます。例えば、商業不動産売買の際には、契約内容が複雑になることが多く、弁護士をつけることが増えます。

私の体感では、コロナ後、弁護士料は、倍近くに跳ね上がった気がしていました。

まさに、それを裏付けて余りある記事が、ウオール・ストリート・ジャーナルに掲載されていたので、ご紹介したいと思います。

そもそも、不動産投資家は、どのようなときには弁護士が必要なのか。そして、いくらくらいかかるのか。弁護士との付き合い方も合わせ、この記事で、見ていきましょう。

 

初級レベルの取引には弁護士は通常不要

 

戸建て、マンションなどの居宅用不動産(residential real estate)を購入する場合は、多くの州で、仲介業者さんを使い、MLSリスティング(不動産協会のネットワーク)上で探した物件を買うことが多いでしょう。

このような一般的なケースでは、ニューヨークやイリノイのような一部の州以外の多くの州では、弁護士は不要です。

ただ、これらの一部の州では不動産取引に当たって、消費者保護の観点から、仲介業者さんに加えて、弁護士を立てて決済することが求められているのです。

こうした州では、名義保険(title insurance)がタイトル・エージェンシーで購入できるにもかかわらず、弁護士を使う羽目になります。一部の単純な取引では、取引の円滑を図るために、レアルターさんに大きなコミッションを支払い、決済代行会社で決済するのに、それにプラスして、弁護士代が無駄にかかっている、他の州なら不要なのに、と思うこともあるでしょう。弁護士協会のロビイングの結果、一部の州では、昔のやり方が残っただけだと陰口を言う人もいます。

しかし、通常取引に弁護士が法的に要求されていない場合でも、一部の取引では、弁護士が必要になってきます。

一つの例は、物件を、ランド・コントラクトで売買する場合。

 

弁護士が必要になる例 ― セラー・ファイナンシング(Seller Financing)が必要な場合

 

ランド・コントラクトとは、seller financing (売り主が銀行の代わりになって物件購入費用を一部、短期間に融資してくれること)の一種。

詳しくは、過去のブログ記事をよければ御覧ください。

Land contract とは何か

通常の融資期間は、2、3年で、なんらかの理由で銀行融資がつきにくい場合、売り主が売却を容易にするためにオファーする仕組みです。

ランド・コントラクトは、個々の条件に基づいて合意をしなければいけないので、普通のレアルター協会の定型契約書上、「ランド・コントラクトを選ぶ」と記入し、ランド・コントラクト契約書は別途用意することになります。細かい点の読み落としで損をすることもありうるので、弁護士に指示を出して契約書をオーダーメイドするわけです。

売り主、買い主どちらが用意をしてもよいのですが、通常用意するほうが弁護士費用を負担することになるので、「ランド・コントラクト、そっちで用意してくれるかな?」という交渉があれば、それは、通常、起草の弁護士費用をそちらが負担してくださいという意味。そのうえで、自分の弁護士に、時給を払って読み込んでもらうケースも有り、双方の弁護士が細かいやり取りを始めると、これだけで千ドル単位で請求が上がります。

というのも、冒頭に書いた通り、昨今弁護士費用が急騰しているから。

コロナ以前には、一人弁護士事務所を経営しているところなどを探すと、少なくとも中西部では、時給250ドルが割合スタンダードだった時代がしばらく続いていたと思うのですが、コロナ後、資格取得直後の方は別として、実務経験が数年以上のランクのアソシエート弁護士であっても、時給450ドルといった請求額が標準になりました。

数人以上の弁護士が経営している事務所でのパートナー・ランクの弁護士の場合は、600ドル台、私自身の知っているところでは、ミシガン州では、高めの弁護士は、時給1,000ドル、実に1時間で15万円となります。

 

弁護士の選び方、付き合い方/優秀な弁護士は高いと覚悟?

 

コロナ前までの私は、弁護士を利用するにしても、融資案件のデフォルト時の回収の手伝いや和解合意など、今考えると、それほど難しい案件を抱えていたわけではありませんでした。

この頃までは、割安の弁護士をネットでサーチし、オンラインのレビューで選び、2人くらいと30分くらいの無料のお話をして、良い方を選ぶ、といった程度の、ごくごく一般的ないち消費者。

現在、毎月のように、誰かに何かをお願いする必要があり、弁護士費用は高いため、弁護士になにか依頼するときは、自分で、AIエージェントと向き合い、仕事の大部分を自分が済ませるレベルの覚悟で準備をして挑みます。

具体的には、求める契約書がどのような内容になるべきかを丁寧にかつわかりやすく書いたメモを作成し、それを何度も推敲したのち、会議の直前にメールをして、メモ内容を見てもらいながら、依頼の会議に挑むわけです。

弁護士が合意をしてくれる際には、ZOOM会議では、音声収録のアプリを使い、後日自動文字起こしし、理解を深め、記録とします。

事務所によりポリシーが異なることもあり、不動産投資家が集まると、どんなケースで、どういう弁護士を使い、相手の弁護士はどこで、どういう結末になったか、といった話題でいくらでも花が咲かせる状態となってきました。

事実、私の現在の顧問弁護士は、友人から紹介してもらった方なのですが、時給は1,000ドルで、地元ではトップランクの先生です。

これまでは、もっとリーズナブルな先生に慣れていた私ですが、新しい先生にお願いをするようになって、彼とのやり取りが、大変ストレスフリーであることに直ちに気が付きました。

それは、この先生が、大変優秀で、集中力が高く、一度やり取りしたら、再度説明をする必要がなく、私が全力で準備をし、メモを送ってからZOOM会議をすれば、いきなり、1時間で、問題がどんどん解決していくからです。

案件が複雑になるにつれ、弁護士とのコミュニケーションに、いらだちを感じる経験はこれまでよくありました。

そのため、過去に何度もいろいろな先生にお世話になった経験に照らして、「この人は時給が二倍くらいと高いけれど、能率は三倍四倍くらいじゃないかしら、良心的に対応してくれて、絶対過剰請求しようとしないし、この先生にお願いしておけば、逆にすごく効率的だ!コスト的にも、割高に感じない。」と感じるに至りました。

私が共同運営するファンド自体については、顧問弁護士は、時給450ドルといった中ランク・クラス。割高の先生をお願いすることは、逆に私の一存では難しいのですが、自分のコントロールできる範囲のことについては、足を掬われて、周囲に迷惑をかけてはいけないので、、、

これまで、資産形成のために節約をモットーとしてきた私ですが、ことこの件については、現在、「ここは節約するところじゃない」と思うように至っているのですから、これも成長の証なのかもしれません。

いずれにせよ、このように、不動産経営ビジネスが本格化してきたら、次に信頼できる弁護士を探す必要が生じますが、この初級投資家から、中・上級投資家への道は、あらゆる面で、なかなかハードルが高いなと感じます。

弁護士の探し方についても、同じ弁護士と言っても、専門分野があり、例えば、きちんとした弁護士なら、自分の専門分野以外に手を出そうとしません。職業保険(弁護士賠償責任保険)を掛けていれば、それ以外の分野で法的なアドバイスをすることが禁じられているという実務的な面もありますし、実際、書類を作るだけの弁護士は、通常、裁判に出てくることはありませんので、訴訟となれば、普段の顧問弁護士ではなく、法廷弁護士と別途付き合う必要が生じるわけです。

一部の例外は、小規模事務所が、強制退去訴訟など、賃借人相手の訴訟に応じてくれるようなケース。こうした定型訴訟であれば、不動産関係の弁護士なら、契約書作成、出廷から和解書作成まで、だいたい、一連の流れを一人でやってくれます。

話し出すときりがありませんが、以上は、すべて、我がのどかな中西部の話。

冒頭に述べたウオール・ストリート・ジャーナルでは、弁護士は、主要都市では、3,400ドルといったレートが普通になっているといった話が紹介されています。

デトロイトで、時給1,000ドルがピンなら、確かに、人件費、保険、家賃と三拍子高いサンフランシスコやニューヨークで大企業相手に営業をするなら、時給は、3,000ドル取らないと、確かにおかしいでしょう。

 

大家さんが気をつけなければいけない訴訟とは

 

最後に悩ましいのは、実は賃借人層の方々にとっては、弁護士を利用する敷居が私たちより低いという事実。これも気をつけなければいけません。

というのは、大学付属のロースクールには、ロー・クリニックという学生の研修のための無料相談事務所があり、教授が「上司・指導教授」となって、学生が無料相談を受けるといったことをよくしており、こうした相談窓口や弱者救済の非営利団体の支援を受けると、正直言って、こちらから見ると、いわゆるニューサンスに近い訴訟を起こすことも、簡単だからです。

私の知り合いは、シカゴ大学の近く(治安がよくないエリア)で大家業をやっており、管理も自分でやっています。

彼の管理する物件を借りている賃借人層のほとんどは、エリアの人口を反映して、アフリカ系アメリカ人なのですが、この方は、ある時、「人種差別」に基づく訴訟を起こされ、困っていました。地元、また、テナント・ベースの殆どが、アフリカ系アメリカ人であるのに、そこに人種差別を主張しようとするのは、大家からすれば、なんだか、あえて訴える理由を探してきた感が生じるわけですね。

そのテナントさんは、実際、彼に、「訴訟を起こすと儲かる。この前は、子供が学校の前でころんだので、子供の学校を訴えてお金をもらった」という世間話をシェアしてくれたそうです。弁護士のサポートを容易に受けることができる彼女にとっては、訴訟はダメ元・ビジネスの機会、いろいろやってみて、どこかに引っかかれば、棚ぼたとなりうるというわけです。

この会話からわかることは、米国では、弱小大家が、物件を、自分自身で管理することは、必ずしも望ましくないという事実。

管理会社さんに任せると、通常、賃貸借契約は、管理会社とテナントさんとの間となり、こうした問題は、管理会社さんのリスクとなります。大家さんと管理会社さんとの契約は別途行われ、テナントさんとの間の賃貸借契約においては、大家さんは、名前を出さなくて良くなるからです。

実際、しっかりした管理会社であれば、こういう対策は何かしらあるものです。そう考えれば、管理料が10%、15%の米国の管理会社さんですが、別段高いとばかりも言えません。

 

最後に

 

ざっぱくな話が続いてしまいましたが、初級投資家が、中上級投資家に登る道は、私自身経験しましたが、あまりスムーズなものではありません。

長年不動産系に携わる場合でも、あまりディープな勉強をしたくない場合は、レジデンシャル案件(4室以下)の物件のみを対象にする、あまりクリエイティブなディール・メーキングにはタッチしないなどの保守的な戦略をあえて守ることが、ストレスフリーな兼業大家さんの王道なのかとも思います。

私自身は、初期に、わけもわからず冒険してしまった結果、逆に、これが本業となるまでに至りましたが、きちんとした本業がある方が週末だけ、時間を割くといったケースの場合は、あまり複雑なことに手を出さないほうが無難なわけです。

最後に、毎回手前味噌になりますが、私の共同運用している不動産ファンドは、こうしたベテランが経営しているファンドへのご参加をしていただくことで、高度なプロの技にストレスフリーにあいのりしていただくことができます。投資家の皆様は、ニュースレターや報告会での私たちの活動に大いに関心を持ってくださっており、私たちにも、大いにやりがいがあります。

「初級大家さん」を卒業したくなったら、過去の私のように大冒険に乗り出してしまわず(笑)、ぜひファンド参加のお声掛けください。