デトロイトで不動産保有型のプライベート・エクイティ・ファンドを共同運営している中山道子です。
現場では、寒波の影響により在宅勤務体制に切り替えるなど、臨機応変に対応していますが、通常の不動産管理や売買のための諸活動のようなものは、なかなか難しいところが生じています。
さて、この記事では、2025年第4四半期ファンドニュースレターの概訳を一部ご紹介します。初動から参加してくださっている方にとっては、投資額に対し、12.32%の投資元本切り上げとなります。
エグゼクティブ・サマリー
2024年11月の設立から2025年12月31日までの期間において、純資産価値(NAV)が12.32%増加したことをご報告いたします。過去1年間、様々な投資戦略を検証し、スケーラビリティに最も適した戦略を特定しました。その結果、オーナー売却意欲の高い戸建賃貸(SFR)ポートフォリオへの投資に注力する方針を決定いたしました。この成長軌道が2026年も継続するものと確信しております。
詳しい活動内容については、投資家様向けのニュースレターでお届けしている他、今週末の参加投資家様向けのZOOM会議で、質疑応答を合わせ、お届けします。
特にうまく運んでいるのが、困っている売り手(distressed seller)の手放すポートフォリオ取得。下で、ファンドの公式ブログで取り上げたのが初めての取得成功事例でした。
SFR Acquisitions; A 29 Pack Portfolio Purchase – July and August 2025
基本、「事情がある経営者、所有者」の現金化のニーズを前提に、キャッシュで購入オファーをすることにより、「経営中、賃貸中のポートフォリオ」をお得に取得するという、ごくごく単純な戦略ではあるのですが、実際のプロセスについては、なかなか個人レベルの投資家では再現性が難しいのではないかと思います。
第一に、こういう話は、外聞が悪いので、ほぼ、広くは回ってきません。特定の仲介業者さんが「この相手なら買えるだろう」と思ったら、個別にこっそり持ってきてくれるというスタイルで、私たちがスタートアップした2024年には、こういう話は、あまり持ち込まれませんでした。
やはり実績を作っていったところで、「あの買い手はこういう物件なら買うことができるだろう」と思ってもらえるところまで行き、初めて、話が持ち込まれる、そういう流れはあったと思います。
《複数戸の経営中物件購入のデューデリで私たちがやっていること》
- エリアチェック、物件のコンプスの一斉チェック
- 取得担当マネージャーが一戸一戸現地で立ち入り検査
- テナントがいる場合は、テナントと契約状況を確認
- 賃料が格安の場合は、オーナーチェンジ後、賃上げする交渉まで済ませてしまう
これを2週間で済ませ、すぐ、契約。
相手は、「今すぐ現金が必要」なので、取引に当たっては、できるだけ早く契約をする必要があり、契約後は、決済書類が揃ったら、30日以内であっても現金で決済が条件です。
同時に、購入後には、すぐ、テナントとの賃貸借契約の切り替えがあります。付き合っている管理会社さんの初動で、これが迅速にできないと、翌月の支払いがいきなりトラブることになります。
上に述べたように、長期に賃貸が続いている物件は、往々にして賃料が割安な状態になりがち。
確かに、一回賃貸が始まると、新装後の空室物件の最高値と同じ賃料を取ろうとするのは無理があります。
ここで、「少しお得感を残しながら、賃料を相場に準じてあげていく」のはなかなか難しいもので、これは、一つには管理会社が、あまり頻繁に賃料交渉をすると、テナントとの関係が悪化することもあったり、「逆にリフォーム要求が出てきたりしかねない」と感じがちなことも理由。
最終的には、管理の手間に見合うかという判断で、「割安だとわかっている賃料」なら、テナントは、多少の問題があっても、それを飲みこんで、苦情を言ってこないので自分も楽だし、オーナーも大局的に見れば、大損をしているわけでもないだろう、というわけです。
私も経験がありますが、優秀な管理担当者であっても、こういう思考をすることがよくあるため、一旦テナントがついてしまうと、個人レベルの大家さんは、基本、管理会社さんの言いなりです。
さて、少し話が脱線しましたが、私たちは、去年、こういったポートフォリオを購入し、ホールディングしてみて、改めて、資金の回転率を大きく上げる手法だということを改めて認識しました。
自分たちで、空室のよう修理物件を購入する場合と比較をすると、はっきりします。購入後、大規模修繕を施し、テナントが賃料を払うところまで、早くても4ヶ月、通常は9ヶ月を想定します。昨今の米国のリフォーム業者さんの状況を考えれば、これができるだけでも、驚異的に早い状況。
ただ、この期間中、資金が寝ることは間違いないわけです。初期のポートフォリオは、賃貸が始まると、キャッシュオンキャッシュリターンが7%から9%を目指すことができるので、これも、誇っていい数字なのですが、それに対し、賃貸中のポートフォリオを購入する場合は、最初の数ヶ月間で、いきなり、この数字が叩き出せる状況。
つまり、お金が収益を生むにあたってのタイムロスがほぼないわけです。
取得担当チームとしては、こうした物件取得方法は、今後も、現市場において再現性が高い、と判断しています。
一つには、デトロイトという市場の特殊性があるかもしれません。市場は、テナントの質が高いとは言えず、賃貸経営には手間がかかるため、手を抜くことができません。大規模取得後、ポートフォリオの満額流動化は、よその市場に比べ、難しいこともあり、現地の事情がはっきりわからない遠隔オーナーは、あらゆるところで失敗をしがちです。
このポートフォリオも、経営者は遠隔で経営は管理会社任せ。経営者の財務状況が悪化したところで、現金補填に動くしかなくなったということでした。
私たちの資金の主たるソースは、共同経営をする覚悟で参画してくださっている投資家様。スタートアップなので、まだ銀行の支援を受けるに至っておらず、透明性をモットーに、ご一緒にフォローをしていただくことで、盤石な基盤が作れるものと祈念しています。
注)冒頭地図は、今回取得した29戸のポートフォリオの物件所在地を示すものです。