フロリダ州の不動産にさらなる受難か? 不法移民が支えるアメリカ経済の脆弱さ

 

対米不動産投資ブロガーの中山道子です。

今日は、連邦政府の動向が、私たちの不動産投資により大きな影響を及ぼし始めているのではないかという観点から、ブログ記事を書きたいと思います。

概略としては、フロリダ不動産が、多少のバブル破裂を経験している可能性が高い状況に対し、連邦政府主導の不法移民規制の問題が、今後、フロリダの経済、そして、不動産の動向に影響を及ぼす可能性にご注意、というお話です。

  • フロリダ不動産市場は、調整局面に入っている

  • そこに加えて、連邦政府主導の不法移民規制がフロリダの雇用と経済成長を鈍化させるリスクが浮上している

  • 結果として、不動産市場にも新たな下押し圧力となるかもしれない

 


フロリダ不動産市場:地域差が鮮明な2026年の実像

◆ フロリダ州全体の住宅価格

  • 州全体の平均住宅価格は、2026年2月段階で、 約370,000ドル前後で、前年から 約5%程度の下落をしている状況です。参考:ZILLOW

◆ 都市別の違い

  • マイアミでは平均住宅価格が約 57万ドル前後で、前年比では やや下落というデータが複数のデータソースから示されています。参考:コアロジック

  • 一方、ケープコーラルやノースポートなどの沿岸・地方都市ではもっと大きな価格下落が予測されており、2026年の価格予測では最大10%超の下落が想定される地域もあります。

    Florida Home Prices Poised To Drop Even Further in 2026 After Years of Weakness

◆ 大都市圏の傾向

  • フロリダの8大都市圏全体では、2026年も価格が平均 1.9%程度の下降傾向が予想されています。一部には、背景として、特にマンションの下落(condominiums, condos)や保険料の暴騰が指摘されています。

  • ただし、マイアミだけは例外的に若干の価格上昇(約1%程度)が見込まれるという見方もあります。

まとめると、フロリダ全体ではまだ調整局面だが、主要都市ごとに動きはバラバラというのが現状です。マイアミは、ここ10年で、一地方都市、二級都市(tier 2, second tier)というイメージより、ワシントンDCレベルの国際都市として、経済的な独自の地位を確立してきており、フロリダの「リタイヤ族の天国、他はB級」というイメージとは別格のアウトライヤーになってきています。

 

フロリダ市場をどう見るか。アメリカ人を守ろうとする共和党政策が裏目に?

短絡的に言ってしまえば、不動産は、ロケーションである、良いロケーションの物件は、堅実であるという言い方ができるかもしれません。他方では、いわゆる新興市場(emerging markets)では、割安で、値上がりが生じうるのですが、加熱しやすく、弾けるのは最初、そして、大きな後退を経験することになります。

定石通りすぎる結論ですが、様々な複合要因の中に、今回、これらの要素に加え、フロリダの中期、下手をすると長期成長を阻むかもしれない政策要因が新しく台頭してきています。

それが、共和党知事の導入したE-verifyシステム。25人以上の被雇用者を抱える雇用主は、新規雇用時に、これらの労働者の合法的な移民ステータスを確認する義務が課せられることになったのです。

2026年2月9日にウオール・ストリート・ジャーナル紙に報道されたところによると、「不法移民大量追放とフロリダの雇用ー移民規制は強化、フロリダ経済の雇用拡大は大幅減速」と、ほぼ、ストレートに政策批判に。

Mass Deportation and Florida Jobs The state passed an E-Verify law. Job growth quickly declined.

同紙が援用する数字は、確かにヒヤヒヤもの。

  • 建築関係の労働者の三分の一が移民
  • ホスピタリティ(ホテル等宿泊関係)に関わる労働者の場合は、二分の一が移民

であるとされていると指摘、この多くが、合法ではなく、不法移民であると説明しています。

このような状態で、新規雇用は難しく、農業も大きく影響を受けているとのことです。「E-verify成立後、ある農家は、わざと、雇用規模を25人以下に調整することにしたと述懐。この政策は、経済成長にとってのマイナス・インセンティブ以外の何ものでもない。」と鋭すぎる口調…

もちろん、過去にも、底辺労働に従事する不法移民が40万ドルの戸建てを銀行ローンを使ってゆうゆう購入するというような直接的な状況があったわけではありません。現在、不動産市場における直近の影響としては、建設関係の工事が大幅に遅れ始めていること、コストが上がっていることなどが指摘されます。しかし、中長期に見ると、例えば、割安住宅の賃貸にも影響が生じるかもしれませんし、新築の価格にも跳ね返るでしょう。

また、多いとは言いませんが、不法移民の家庭であっても、子供が市民であったり、IRSには納税申告をしているなど、融資を受けての住宅購入が可能な世帯もあり、需要に与える影響も生じるでしょう。

大局的に言って、フロリダの雇用機会拡大が、その経済成長を、そして、不動産市場の上昇を支えてきたことは間違いありません。

新たな政策の痛みを直接感じるに至っているビジネス・コミュニティが、このような過度の移民規制にブーイングするのは当然でしょう。

実は、さらに深刻なことに、統計局の人口統計は、居住者の合法・不法を区別せず全員をカウントしています。

つまり、これまでの米国の人口成長には不法移民が大きく寄与してきたということでもあるわけで、彼らを排除すれば、中長期的な人口成長率の大幅鈍化を避けることはできません。

この問題を指摘する例として、下は、2025年1月に発表された連邦のCBO(議会予算局)の人口予測についての発表。ここでも、

  • 自然増加では、人口増加を維持することはできない
  • 移民のうち、不法移民については不確実な数字
  • 移民政策が大きく状況を左右する

という指摘がされています。

The Demographic Outlook: 2025 to 2055

トランプ政権の一部の政策は、ここしばらく、逆風にさらされており、また、同大統領の任期が限られていることを勘案しても、不動産投資家は、このようなマクロな流れにも目配りをしていく必要が生じているのかもしれません。

最後に、フロリダに似たような構造(移民の労働力に大きく依存しており、共和党が強い)を持つ他の州としては、以下の州が注目されます。

  • テキサス — 最も典型的。アボット知事は移民規制で全米のリーダー格
  • アリゾナ — 歴史的に移民規制の最前線(SB1070の前例あり)
  • ジョージア — 既にE-Verify義務化あり、アトランタ圏の成長が移民に依存
  • ノースカロライナ — 急成長中の共和党州で移民労働力への依存度が上昇中

すでにジョージアについては、このような議論は去年から始まっており、景気後退懸念が表面化しているとのこと。(National economic headwinds blow through Georgia, though job outlook steady for now ‐ Experts put odds of a recession at 49%.)テキサスは、日本人の投資家も多く進出しているエリアです。

直近、連邦レベルでは、雇用統計の動向を見てから、金利追加調整を検討する、というのが連邦地銀の方針となりましたが、年末の雇用統計が政府休業で収集できなかったのは、痛手ですね。

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