プライベート・エクイティの申告書類、K1解説、なぜ遅れるのか?対策は?

 

アメリカ不動産投資ファンドを共同運用している中山道子です。2月となり、タックスシーズンが始まりました。今日は、プライベート・エクイティファンドが作成するタックス書類、K1についてご説明をさせていただきたいと思います。

 

K1とは何か?

 

アメリカの不動産ファンドやプライベート・エクイティに投資している方は、毎年「K1」という書類を受け取ります。正式名称は「Schedule K-1 (Form 1065)」で、パートナーシップ(組合)からの所得配分を報告する税務書類です。

株式投資で受け取る1099フォームは「受け取った配当額」を報告するだけのシンプルな書類ですが、K1は、パートナーシップの収益、費用、減価償却、利息など、様々な項目が各人の持分に応じて配分されており、それを自分の確定申告に反映させる必要があります。

私が共同運用しているファンドの場合、初年度、2024年度は、それほど複雑ではなく、物件を購入し、修理をしただけでした。家賃収入も殆どありませんでした。2025年以降、内容はより本格的になり、ストラテジーを反映させた複雑なファイリングとなっていくことになります。

ファンド投資の醍醐味は、この複雑な不動産経営とそのタックスファイリングを、投資家様が、自分でしなくて済むことです。

 

ファンドの不動産経営はここが個人レベルとは違う

 

ファンド経営の具体的な内容については、例えば、2025年時には、個人レベルの投資家ではほぼ不可能な投資戦略がどんどん実現していきました。具体的には、内々に困窮している大口の不動産投資家から、良好なポートフォリオを、キャッシュを使い、購入する事ができました。

これらのケースでは、必要だった投資資金は、150万ドルほど。個人投資家であれば、通常は融資を必要とする額です。しかし、困窮案件は、ローン取得に時間をかけることはできないので、必ず現金を調達する必要があります。

そもそも、何十戸もの物件を、2週間ほどでデューディリジェンスをしなければならず、そうしたノウハウも、個人レベルの投資家では、なかなか難しいでしょう。

大口決済の場合、法的なやり取りも、通常の決済と異なり、物件所有をしている相手の会社を購入するなどの技が必要となるため、相手の会社の信用確認などもデューディリジェンスの対象となり、会計士に、会社の負債状況などを確認してもらうことにもなります。

更に、既存の物件ポートフォリオを購入する場合、修繕予備金の蓄えが必要で、購入後、すぐ支出が更に生じることが一般的です。このため、余剰資金を前提に投資をすることになります。

以上のように、ファンドでの投資は、投資家様のご資金を集めて、プロが投資運用をするため、個人レベルでは難しい投資活動ができることが魅力です。

 

ファンドのタックスファイリングはここが違う

 

ファンドでは、個人レベルでは想定しない数の不動産を所有するために、すべての物件の資料をトラッキングするための独自のシステムが必要になります。

個人レベルで複数の物件をお持ちの方はすでに多少経験済みと思いますが、管理会社の明細は、当然個別にトラッキングをしている反面、最終的には、大体、以下のフォーマットで、振り込みまたは請求が立てられることになります。

戸数分で回収した家賃の合計(例えば、A、B、C、Dとする)
マイナス個数分の管理料
マイナスその月かかった修繕代(例えば、BとDのみ)
合計振込額、あるいは、合計請求額

しかし、タックス上は、物件ごとの減価償却を計上し、物件ごとの修理代をまとめ直し、税理士さんには最終収支を物件ごとに、同時に、合計して、提出する必要があります。それを自分でしない場合は税理士さんに時給を払ってやってもらうことになりますので、タックスファイリングが会計もプラスとなり、割高になるからですね。2026年現在、この程度の作業なら、AIが上手にやってくれるでしょう。

ファンドの場合も同様ですが、私たちのようにスタートアップしたばかりのファンドでも、100戸以上について、これをやらなければいけないため、実のところ、私たちは、現在進行中で、スタッフをトレーニングし、このデータを効率的に税理士さんに渡してもらうためのシステムを作りながら、実際の納税も行っています。

管理会社の最後のデータ(12月)が出てくるのは、1月の段階となるため、11,12月の分の計上や確認作業は2月に食い込んできます。税理士さんが2月は忙しいことも勘案すると、「大した作業量がない場合」は、3月15日の納税期限を守ることでいっぱいとなり、うまく行けば、その際に、皆様に、K1をお届けすることになり得るという状況。

大した作業量がない場合、つまり、ファンドがそれほど複雑な行動を取っていない2024年度は、このケースに当てはまりましたが、2025年以降、作業はどんどん複雑化していくこととなります。

第一に、取得物件の件数の問題。これで、物理的に、確実に作業量が増えます。

第二に、2025年には、初めて、いくつかの物件の売却を、12月に経験しました。

今回、売却件数やキャピタルゲインは、多くはありませんが、一般論的に言えば、こういう複数の状況が同時進行しだしてくる場合、できるだけ利益をオフセットできるように、その年の活動を逆算もしていく必要があります。場合によれば、3月15日の締切に対し、延長申請を行い、必要があると思えば予定納税だけ多めに行い、丁寧に申告を行うことに意味があります。更には、場合によると、翌年の最初の数カ月の活動を確認し、その上で、「この分はコストセグリゲーション、こちらは、減価償却で行こう」といった分類作業をし直すことにメリットが生じることもありうるわけです。(コストセグリゲーションは、建物をパーツごとに細分化して早期償却する手法。減価償却と使い分けする)

この作業は、やはり大変な手間がかかります。いくつかの申告シナリオを比較検討することになるからです。

個人レベルで、これだけ大々的に不動産経営をされるとしたら、もう、事業として、フルタイム投資に取り組んでいるケースでしょう。本業が別にある方にとっては、このレベルの申告戦略は、考えたこともないケースのほうが多いでしょう。

 

K1が遅くなる理由とは

 

ここで、最後のトピック。K1が出る「投資組合」では、以上のように、業務が複雑になっていくにつれ、K1の目的は、皆様のタックスファイリングを、4月15日に間に合わせるようにすることが趣旨ではなくなります。

K1の準備と発行は、資産家様の長期的な節税戦略と成長戦略をサポートするために作成することが目的なのです。

2024年には、皆様から、K1を早くお届けするようにというご依頼があり、それは、K1投資に慣れていない方からすれば、当然の依頼なのですが、以上のように、単に、税理士さんが有能ではないので、すげ替えればいいだろうとか、みんなが残業をして頑張れば納期が早まるとか、そういったプロセスの問題ではありません。

K1の性質は、当該「投資組合」(米国のリミテッド・パートナーシップは、正確には日本の投資組合とは違うので、《》付けにしています)がどのような活動をしているかの成績表なので、該当事業により、内容も異なり、かかる時間も異なるというのが実態であるため、わかりにくいことは間違いありません。

私たちの場合も、この投資プロセスに共同に乗り出していただくため、この背景をご理解いただく必要があるということです。

 

K1投資家の対策は?

 

一般投資に慣れておいでの方は、1月に準備を始め、4月15日に間に合わせてスッキリされている方も多いでしょう。

しかし、K1投資に着手される場合、基本、おすすめは、ご自身も、申告期限を延長申請されることです。

個人の申請期限は、米国では、4月15日。

この際に、鍵は、納税だけ済ませることです。納税額は、SAFE HARBORルールをご利用ください。

===SAFE HARBORルールとは===(こちらはAIで作成しましたので実際には顧問税理士さんにお問い合わせください)
延長申請(Extension)を出す場合のペナルティ回避ルールは、**予定納税(Estimated Tax)**のルールと同じです:
Safe Harbor ルール
以下のいずれかを満たせば、ペナルティなし:
1. 前年度納税額の100%ルール(高所得者は110%)
前年度の納税額の100%を4月15日までに納付
ただし、前年度のAGI(調整総所得)が$150,000超の場合は110%
夫婦合算申告で$150,000超の場合も110%
2. 当年度納税額の90%ルール
今年の実際の納税額の90%を4月15日までに納付
ただし、今年の所得が確定していないと計算が難しい
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この他、CLASS A投資家様はまったく分配がないので、K1を提出せずに、四半期明細だけを税理士さんに確認してもらい、収入なしで計上されても、該当年にはそれほどの影響はないとも言えます。ただ、長期的には、毎年K1を提出していない場合、下の齟齬が生じる可能性がゼロではないので、税理士さんとご相談をされてください。ある年度に提出するべきK1は、翌年度以降、提出し直しはできないようです。

  • 損失配分を受けることができない(将来の繰越しができない)
  • 投資元本(ベーシス)の追跡ができなくなる
  • そのため、将来の配当や売却時に影響が出る可能性

私自身は、しばらく前から、タックスは、いつも延長申請をして納税だけしています。支払いは、当然、多めにするので、確定申告後、登録銀行口座に差額が戻ってきます。過分に振り込んだ分の資金流動性が落ちるといえばそうですが、それ以外に、金銭的なペナルティはありません。

 

日本在住者様へ

上の内容は、日本の納税申告には適用しないかと思います。日本の居住者であれば、米国の延長申請にかかわらず日本の3月15日の申告期限は動かないため、K1の遅延を想定して早めに日本の税理士に状況をご相談されてください。