置いてけぼり感が半端ない! 上位三割が1,000万以上稼ぐ米国経済の物凄さ

アメリカ不動産投資で資産倍増中ブログの中山道子です。

アメリカ経済の二極化を示すデータの一つが、世帯所得。

日本のサラリーマンは、5%しか達成できていないといわれる年収1,000万、米国では、総世帯中アッパー3割近くが、この金額をたたき出しています。

データは、Consumer Expenditure Survey, U.S. Bureau of Labor Statistics, April, 2019 から

2019年10月現在、米国の経済は、まだ、先があると考える人も多く、悲観的な見解を取っている方は、ポジティブなデータに頭をひねっている場合もあるでしょう。

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一つの読み方は、米国経済自体が、二極化しているという事情。

貧富格差は、大恐慌後の復活の中、大きく拡大し、現在の米国は、楽しく消費生活している層と、あえいでいる層とで、全く様相が異なります。そして、現在、世界の経済をけん引しているのは、8割方が、アッパー層。残り2割は、借金返済時に異常な高金利を払う羽目になっているロウワー層が担い、中間層は、置いてけぼりというイメージです。

日本も、事情は似たり寄ったり、と思われるかもしれませんが、そのレベル、スケールが全然違います。

現在、米国の世帯収入の中央値は、大体、2018年次で6万2,000ドル。

Real Median Household Income in the United States

日本が、2017年の数字で、442万ですから、ここだけ見ても、米国の一般的な世帯は、日本の一般的な世帯より、1.5倍くらい稼いでいるイメージです。

平成29年 国民生活基礎調査の概況

しかし、ここからが今日の記事の本題です。

現在の米国は、すべてがトップHEAVY。

全世帯の3割近くが、日本円に換算して、1,000万以上稼いでおり、この層がすべてにおいて、主役です。

2018年次の米国の統計上、上位3割が、世帯年収 $87,264ドル以上稼いでいる、という数字です。

Table 1110. Deciles of income before taxes: Annual expenditure means, shares, standard errors, and coefficients of variation, Consumer Expenditure Survey, 3rd quarter 2017 through 2nd quarter 2018

米国では、大不況後の総所得は、既に当時の2倍という勢いになりましたが、他方で、そのほぼ100%が、所得分布上のアッパー20%に行ったという次第でもあります。

そのため、「米国の消費者動向が堅調」とか、米国の消費者が世界経済を主導している、といった言及がある場合、基本、このほとんどを、アッパー2、3割程度が担っているイメージなわけです。

デロイトは、これを、

The great bifurcation 大きく明暗が分かれている状態/大いなる分岐

と呼んでいます。

リテール業界を、3つに分けて、

<価格志向>なお店
<高級志向>なお店
<中間的>なお店

に分けて調べると、ここ5年で伸びているのは、高級志向なリテールばかりで、中間的なお店は、この間相当低かったインフレ率上昇について行くことすらできていません。

The great retail bifurcation Why the retail “apocalypse” is really a renaissance

ここ数年、米国では、トイザらスやシアーズの破産など大型店の閉鎖が続き、「すわ、大不況の前触れか?」と、深刻な気持ちにさせられましたが、実は、これらはすべて、「微妙な中間層」にフォーカスしていたお店。

実際には、ロウワーと、アッパーは成長機運、大規模経営から小規模経営への時代だそうですから、先入観はわきに置いて、調べてみるものですね。

出店規模でいうと、ロウワーの雄は、ウオルマートより下層を相手にしているDOLLAR GENERAL。私は、けちなので、良く行きますが、店員さんが歯が欠けていることが多くて(米国では歯科治療費用がない時は、数百ドルで抜くだけで終わらせるため)、行くたびに、胸が痛みます。このブログを読まれている方は、「行ったことない」方のほうが圧倒的でしょう。

そういえば、高級デパートのNORDSTROMが、ついこの前、ニューヨークに巨大店舗、しかも、日本人には想像もつかない、メンズ専門店を開店していましたね。報道を見たとき、「土地も自社取得だ」といっていたので、基本、本業がだめになっても、不動産プレイが可能というプランBを合わせた勝算なんだろうと思いましたが、実際、アッパー層は、景気がいいわけです。

100年ぶり? NYマンハッタンに大型デパート開店

これに対し、懸念材料が出る場合は、下のような様相を呈します。最近話題のオートローンのデフォルト率の上昇、見ると、サブプライム層だけが上がっています。

Subprime Auto Loans Blow Up, 60-Day Delinquencies Shoot Past Financial Crisis Peak

2009年次の大恐慌時にはも、プライム層におけるオートローンデフォルト率はそれほど高まりませんでしたが、現在は、この層のデフォルト率は、さらに低くなっています。

私の見立てでは、考え方としては、

米国では、ロウワー層は、大恐慌期の経済状況をほぼ脱することがなかった。景気回復や経済成長は、アッパー2割がけん引。この層が好景気のメリットをほぼ100%享受しているため、米国経済全体が、まだまだ底堅さを見せている。オバマ大統領以来の量的緩和に低金利、トランプ減税といったアセットかさ上げ政策に支えられ、株式、不動産、消費と、ポジティブな輪は、上澄み、上層部で好循環しており、それ以外は、蚊帳の外。

といったところだと思います。

これは、人口の大多数が貧困にあえいでいる状況と背反しないため、両極端な数字が同時に存在するわけで、いわば、米国内には、景気のいい米国と、景気の悪い米国が二つ両立しているイメージ。

このアッパーの層については、よしんば景気後退があったとしても、持ち家を追い出されるとか、車がなくなるといったレベルの生活水準が後退するようなイメージは湧きません。むしろ、私の周囲では、ローンの繰り上げ返済をしていることのほうが多いのかと感じるくらいです。

また、この層は、「親兄弟から友人・知り合いはみなリッチ」な「リッチマン・バブル」に生きており、自分のZIP CODE(郵便番号、居住圏域)から出ていく必要がないので、「その他」の人々からは隔離された生活を一生送ることができそうです。

それに対し、一歩、「安全ゾーン」を出ると、ドラマのWALKING DEADと同じで、外は戦場。

参考記事 米不動産バブル、西海岸の街は「ホームレス」&「人糞」だらけ

今後、何らかのきっかけで、現在のぎりぎりのバランスが崩れるようなことがあると、それは、政治によってしか解決できない<ズバリ、富の再配分です>、よって、問題は長期化するだろう、米国社会の未来は暗くなるばかりだ、といった考え方をとる識者の懸念の根拠も、こういうゆがんだ構造にあるといえるでしょう。フランスで起こっている黄色いベスト運動的な動きが米国で広まらないとも限らず、アメリカ人は、ぶっちゃけ、のんきにツイッターで、香港の反政府運動を応援している場合ではありません。

毎回言っていますが、ロウワー層への不動産投資で個人レベルの零細大家が利益を出せた時代は、米国では終わっています。他方で、よしんば不況となったとしても、アッパー層の生活圏は、それほど崩れないのではないかと思う根拠も、「2007年次よりずっとリッチになったアッパーアメリカ」の底力にあります。

最後に。

2017年次の日本では、1、000万以上を稼ぐ世帯の比率は、13%未満で、米国と比べると、アッパーの層が大変薄い状況です。

日本の経済も米国ほどではありませんが、6割が個人消費に依拠しているわけで、高額所得者自体の所得すらが、他の先進国と比べると、なかなか上がらない状況が続いており、ひいては、消費が脆弱であり続けているのではないかとも言えそうです。

米国の総世帯数は、大体、127.59ミリオン、、1億2,759万世帯。ざっと見積もって、このうちの3割、つまり、3,800万世帯が、1,000万以上の世帯収入があるわけで、それに比べ、日本の総世帯数は、現在、5,042万程度ですから、そもそも、米国の高額所得層だけで、日本の総世帯数の75%を占める勢いです。

それに対し、日本で、世帯年収1,000万以上は、約655万世帯に過ぎません。

米国の高額所得者層は、総数でいっても、日本の高額所得者層の7.7倍という一大商圏なのです。

GDP自体は、4倍差程度のようなので、ここからも、米国では、アッパー層がいかに大きな位置を占めているかがわかります。

アメリカの生活は、医療費・教育費や人種問題などに疲弊する場合も多々あり、住むのは日本のほうがいいやと思う方のほうが多いかもしれませんが、そうした方も、「日本に居住しているがために、同じ仕事についていても、米国のような先進大国と比べても、今後、相対的に所得が低まっていくばかり、下手をすると、アジアに追いこされそうな勢い」という現状と向き合う必要があります。

挽回するには、投資が必要。世界の動きから目を背けることはできないのではないでしょうか。

この記事のまとめ

米国経済の7割が個人消費。そのほとんどが、アッパー2、3割によりけん引されている。この層の経済力は大変なもので、日本の総世帯数の75%に当たる数。

米国内でも、「アッパー米国」とでもいうべき、<全く別な社会>を形作っています。

アッパー層においても、このレベルの実力がない日本では、個人投資家、特に不動産投資家は、米国のような成長気運がある海外への投資へとシフトしていかないと、全く太刀打ちできないところまで、沈み込む可能性がありえます。