不動産用語 REDEMPTION とはなにか

アメリカ不動産投資で資産倍増中!ブログの中山道子です。

米国では、不動産が競売にかけられた場合、前の所有者(抵当権の債務者)は、落札者から、半年といった決まった期間の間、「買い戻し」権を行使することができます。このことを、REDEMPTION といいます。

10月も半ばを過ぎ、2018年ももう終わりが見えてきました。

居宅不動産(レジデンシャル。4室以下の複合住宅を含む)は、2月から8月いっぱいがトップシーズンで、11月の感謝祭を一つの目安に落ち着き、1月が最低。

それに伴い、2018年のフィックスアッププログラムは、今年、締め切ることにしました。

過去には、自然に案件数が減っていたものの、意識的に「今年10月で店じまい」と決めたのは、今年、春先から秋にかけて取得した案件数が過去最大となったため。

当グループが提携している借り手は、シーズン中は、取得(ACQUISITION)に熱中し、それに伴い、工期の遅れが多少生じたりしました。

そのため、大事を取って、新規取得より現在の在庫管理に労力をシフトするとのこと。今の予測を見ると、この業者は、成功裏に、当方との提携3年目のフィックスアップシーズン(過去最大規模)を終わらせられそうです。

こういった細かい話は、11月10日土曜日の昼食会の場で、真剣な投資家様向けには、より突っ込んでお話しようと思いますが、ブログでは、こんなところで。

さて、今週、こうしたフィックスプログラムの融資案件例で、珍しいケースが償還されました。

それが、今回の記事のテーマ、REDEMPTION に関わるというわけです。

デトロイト市内で、写真の物件を取得するという話になり、当方投資家様が、取得価格プラス修理代ということで、合計9万ドルのご融資をされました。

これが、2018年6月のこと。

今週になって急に、「償還する。デリケートな状況なので急な話で申し訳ないが、一両日中に投資家様に当帰建解除書類サイン等お願いしたい」といった話になりました。

大体、わたしの投資案件は、普段は全く放置していただければいいのですが、お願いがあるときは、こういうふうに、急にお返事をお願いしなければいけなくなります。

そこは、何年もお付き合いのあるお客様なので、すぐにお返事をくださり、無事、決済の準備が整いました。

ところで、どういう「デリケートな事情」なのかというと、それが、この「債務者の買い戻し」だというのです。

ローンを組んで物件を買ったのに、返済が滞った場合、銀行等債権者が、強制執行の手配に入り、最後には物件は競売にかかります。

この競売で、第三者が買い付けをするか、あるいは、他の入札者がいなければ、抵当権者が名義人になって、債務者の名義は正式に物件登記から外れるのですが、実は、米国では、この裁判所の設定する競売後、債務者に、半年から1年の間にわたり、「物件を REDEEM(買い戻し) する権利」を与えることが一般的。

別の言い方をすると、

米国では、ローンを組んだマイホームから、返済滞納ということで、叩き出されることに決まった後も、所定期間以内なら、なんとか現金をかき集めることができれば、買い戻しの権利が法的に保証されている

のです。いわば、消費者保護法ですね。

買い戻しの金額は、落札者の好きな額が突きつけられるわけではなく、落札金額に金利がついた額ということで、計算方法は、決まっています。

なので、買戻権を行使されてしまうと、エクイティがあると思って買い付けた買い手は、そのエクイティのほとんどをゲットできず、「骨折り損」で、撤退するしかありません。

この買い戻し権は、法的に保証されているので、物件を落札しても、その期間、名義は、実は、正式には、落札者には完全に移りません。

私が一番詳しいミシガンの例をとって説明をすると、競売で物件を買ったときの名義というのは、

    SHERIFF’S DEED(「法執行官/郡保安官が出す名義書」)

と呼ばれます。

それに対し、自分が物件を好きにしていいという意味の名義は、やはりミシガンの例を取ると、

    WARRANTY DEED(「売り手保証付き名義書」)

と呼ばれます。

ナポレオン民法(フランス法)の流れをくむ近代的でわかりやすい民法を持つ日本人にはイマイチ感覚的にわかりにくいですが、近代革命前からイギリスで用いられてきたコモンローの流れをくむのが米国各州の民法制度。

なので、”所有権は絶対”という感覚ではなく、

「こういう所有の方法には、こういう制限があるんだよね」
「あ、こっちのタイプの所有権だと、好きにしていいんだよ」
「細かいことは州ごとに違うからね」

みたいないくつもの種類(レベル)の所有権があって、なんだか、こちらのイメージする取引の安定性がないのです。

詳しい話はいいとして、一ことで言うと、

競売物件の落札者というのは、半年か1年待たないと、日本人が思うフルの所有権は持てない

というわけです。占有権が行使できるようになるのも、その後の話です。こういった複雑な事情があることが、何にでもいちいちその分野を専門とする地元の弁護士が必要な理由の一つでもあるでしょうか。

と、ここからが、今日の記事の本題。

今週あった償還案件は、当方が融資をしたフィックスアッパーの戦略としては、

1)債務者デフォルトゆえの競売案件への入札で格安物件をゲット
2)買い戻し期間中は、物件をおいておいて、名義が自社のものになるのを待つ
3)そこから修理をして転売するつもり

だったのです。

競売ものを買った場合、ふつうは、債務者あるいはその関係者が現金を揃えてきて、期間内に買戻権を行使するというケースは、珍しいので、

「まあ、待てばこっちのものになるだろう」

と思って、計画したところ、この案件については、見事に当てが外れ、法的な買戻権の行使をされてしまったのです。

デフォルトした債務者も必死で、どうやってお金をかき集めたのかはわかりませんが、「あと1週間で、ゲームオーバー」という段階での決済になりました。

今回、この立派な家が、落札購入価格6万5,000ドルほど。修理後、3倍位で売れる目標でしたが、結局、あちらの希望買い戻し価格、つまり、落札価格に多少の日割の金利が上乗せになった額での売却を強いられることになり、当方提携のフィックスアッパーは、投資家様に金利をつけて、融資額を返済した後、この案件については、損得は、ほぼプラスマイナスゼロか骨折り損で終わるということです。

買い戻し権を行使したこの債務者の方、逆に、当初、いくらのローンが組まれていたのかは知りませんが、10万ドル以上の残高だっただろうと想像します。

この債務者、最初に組んだローンの返済を滞納させ、競売を経験したことで、物件をたかだか7万ドル程度で買戻しできたというわけ。

ですから、外から見れば、経済的には得した結果になります。

計画的に仕組んだ思う理由はありませんが、、、

それをすると、与信に傷がつく他、ローン残債がチャラになった部分については、抵当権者からの贈与とみなされ、差額分に対し、申告納税の義務が発生することにもなります。また、もし、銀行を騙す意図(INTENT)があったということを証明できる場合は、銀行に対する詐欺で、連邦犯罪にもなるでしょう。ただ、モーゲージ危機のさなかには、こういうことを計画的に行っているのではないかと思うレベルの人もいました。

私も、こういう仕事なので、デフォルト事例にふれることはよくあり、毎年、1軒位、こういう買い戻しのケースを自分の関知する案件で、見聞きします。

物件を取得する立場に回ると、総てのリスクをひっかぶるので、こういうことも生じます。

フィックスアップ業者というのは、10軒やって、7,8軒で儲け、均しで成立する商売。どんなベテランでも、10軒に1軒くらいは、損をする覚悟で行う必要があります。しかし、私の投資家様は、定率融資なので、フィックスアップ業者が儲かったか儲からなかったかにかかわらず、当然、利息を合わせた満額返済をお受けになられました。

興味がある方は、各州の買い戻し(リデンプション)制度の説明が、こちらの法律関係の会社のページからご覧いただけます。

この記事のまとめ

米国では、競売後、債務者が半年間といった一定期間に渡り、所有していた物件を買い戻しをする権利が法的に保証されていることが一般的。

競売案件の買い戻しは、REDEPTION と呼ばれ、実際に行使をされるケースは、稀ですが、ゼロではありません。

競売物件の競り落としの場合、利益を得るためには、それなりにハードルがあります。