中山道子です。
今日の記事は不動産投資と全く関係ありません。
親の出身国と違う国で育つ子のことを、サード・カルチャー・キッズと呼ぶことがあります。移民の子と似ているのですが、違いは、滞在国が、移民先ではないこと。
日本語では、帰国子女という言葉が一般的です。
サード・カルチャー・キッズの悩みは、「アイデンティティ」など、どこにおいても、自分の居場所を見つけるプロセスが、複雑なこと。
国際的な環境で育った方や、お子さんを育てている方に、《サードカルチャーキッズ 多文化の間で生きる子どもたち (クロスカルチャーライブラリー) (日本語) 単行本》をお勧めします。
50過ぎて、子供の時の話を持ち出すのも変な話ですが、私も、「帰国子女」です。
実は、帰国子女の問題は、移民組の問題と似ているのですが、「サード・カルチャー」という言い方をする理由は、通常、「親の国」と「移民先」の他に、「第三国」での経験があるため。
移民の子であれば、ストレートに、「中国から子供の時にアメリカに移民し、その後、中国とアメリカのカルチャー・ギャップの中で悩んだ」という感じなのですが、
サード・カルチャー・キッズは、多国籍企業の転勤族タイプで、「日本人だが、シンガポールとオーストラリアを経て、最終的に、日本に帰国した」のような経歴になります。
もちろん、バリエーションとして、「転勤族が転じて、親が最後の勤務国に移民を決めた」というようなハイブリッド型の場合もあるでしょう。
欧米で典型的なのは、宣教師や軍人さんのお子さん。日本で一番多いのは、転勤族の家族ではないでしょうか。
帰国子女の問題点は、
・親は日本でおとなになったので、アイデンティティは日本
・そのため、親に苦労をわかってもらえない
・移民と違い、日本以外でやっていく選択肢がない
といった感じでしょう。
そのため、「勘違い」が起こることもあり、この本で取り上げられる「エリカ」の例は、わかりやすく痛いです。
「エリカ」は、アメリカ人でありながら、高校までずっと、シンガポールで育ちます。そんな彼女、大学は、アメリカに進学しますが、馴染めず、シンガポールに舞い戻ってしまいました。
しかし、子供として、シンガポールに住んでいたときは、親がアッパーな転勤族で、豊かな生活がのびのびできていたのに、いざ、大人になって見ると、これといってスキルがない外国人は、仕事自体にありつくことができないことに気がつき、結局は、実家のあるオハイオに帰ることに。デイトンは、「片田舎」過ぎ、シンガポールに慣れ親しんできた「エリカ」には、話の合う友達一人、できないのです、、、
帰国子女の悩みというのは、日本で育った親には、理解ができません。というのも、日本に帰国すると、親は、日本国内での自分の立ち位置ははっきりしているので、それほど悩む必要がないわけです。
それに対し、色んな所で育つことを強いられる子供は、海外でもサバイバル・モード、日本に帰ってきても、サバイバル・モード。「この場面では自分がどう行動するのが適切なのか」がわからないKYモード、「迷子」状態が続くわけです。
私の場合は、幼稚園から大学院までの段階で、日本を含め、5カ国で教育を受けました。しかも、いずれの国でも、一度もインターナショナル・スクールや日本人学校に行かず、毎回、現地校でした。
現在は、その背景があって、どこに行ってもそこそこやれるのですが、子供のときは、「今日から白人だけの学校に行くのか」「2年たったら黒人だけの学校に編入したぞ」「今度は日本人しかいない学校だ」と環境が目まぐるしく変化するため、どこに行っても、空気の読み方を間違えまくるわけです。白人の行動パターンと黒人の行動パターンは、結構違う上に、そこから更にアジアのカルチャーに戻っていく必要があったわけなので、今から考えると、我ながら随分よくやったものだなと感心します。
一般に、サード・カルチャー・キッズは、サバイバルのための戦略として、下のいずれかを採用するそうです。
・「同化しようと努力」
・「目立たずごまかす」
・「自己の違いを強調する」
私自身、どれも経験がありますが、同調圧力が高い日本では、第3の戦略は、自爆まっしぐらになってしまうのではないかと思います。聞くところによると、今でも、できるだけ「目立たない」ために、英語が堪能でも、学校ではわざと日本人英語的な発音を使い、「アリバイ工作」するなどは、常識なんだそうですね。
正直言って、いいことばかりではなく、精神のバランスを崩す人もいることは、事実なのです。
うちの子も、私のせいで、幼少期は日本、小学校は中国で過ごすなどのサード・カルチャー経験者となりました。高校生になり、ホームスクールしているので、つい今週、この本を、自主課題として読ませ、我が家の状況などを話し合う機会を作りました。自分の置かれた立場を理解するフレーム・ワークがあるというのは、重要なことだと思います。
今このブログをやっていると、日本人にとっての米国投資というアングルがあるため、国際結婚、移民組の方も、転勤族の方も、多くの国際的な方々とお知り合いになります。皆さん、お子さんの子育てには熱心な方ばかりです。思い当たることがあれば、ぜひ、この本を読んでみてください。
日本在住で、お子さんをインターに行かせているご家族にも、意味があるのではないかと思います。この選択肢が、独自の大きなリスクを伴っていることも認識できると思います。
補足
サード・カルチャー・キッズ関係の本は、その後いくつも出版されており、2020年8月段階で、下のティーンエージャー向けの本は、アマゾン米国で、KINDLE版が99セントになっています。