《投資案件実例シリーズ》実際の投資検討の段取りってこんな感じです

「アメリカ不動産投資で資産倍増中!」ブログ管理人の中山道子です。

この記事の要点

投資案件を吟味するスケジュールと判断基準を、ご紹介します。今回、2018年5月25日から6月1日までの8日間の流れで、25万ドルの案件を吟味し、投資をしないことに決めました。

私のやっている「個人やビジネス向けの高金利短期融資」は、時間との戦いです。

理由は、「あちらは、スピードに対してお金を払っている」からです。時間の猶予があれば、相談者の半分は、普通の銀行融資に行けるわけです。

「急に買いたい物件が出たけど、銀行融資NGで、現金でないと、オファーを受け付けてもらえない。その物件を担保にして、再来週、100万ドル貸してくれ」という話が来たら、「もちろん!」と即答しなければいけません。お金を準備し、それから審査に入ります。

今回、25日にブローカーから回ってきた案件は、下のような概要です。決済は、最初、6月1日を希望していましたが、書類が揃うのが遅れ、31日昨日木曜日、6月4日に設定され直しました。

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《投資対象:鑑定予想額38万5,000ドル物件、希望融資金額25万ドル・融資期間3年間》

融資希望者様は、過去9年間、自動車の修理工場を月額4,000ドルで賃貸して経営してきており、その敷地を買い取る合意ができた。

■ 借り手の希望融資額:25万ドル
■ 担保:9年間賃貸・操業歴のある商業敷地。
■ 担保の市中価格:鑑定予想額38万5,000ドル
■ 購入価格:35万ドル
■ 借り手の自己資金:10万ドルと決済手数料
■ 担保の価値に対する融資比率予想:65%(250k÷385k)

対象物件の他に、自宅と3件の賃貸投資物件を抵当権なしで所有中。

現金中心の商売。自営業の常で、確定申告上の申告額が低く抑えてある。そのため、正規商業案件用の銀行融資を調達して購入するには手が届かず、今回生じた購入の機会を行使するに当たり、急遽、融資が必要に。

3年間のうちに、「営業中の自己所有修理工場」という実績ができた段階で、商業ローンでリファイナンスをして、当方元本を返済する予定。

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以上の申し送りを受けて、この数日、融資する方向で動いていました。ご融資資金のおありになる投資家様に、お声をおかけしてもいました。

ただ、より細かく検討するためには、最終的な一式書類が必要。

それらの決済用の書類が、「鑑定書を除いて揃った」ということで、5月31日の昨日届きました。鑑定については、口頭で、目標の38万5,000ドルではなく、37万5,000ドルだったという申し送り。一両日中に正式に鑑定書を送ってくるということでした。

ブローカー自身は、融資了承したということで回ってきた案件ですが、一式書類を眺めながら、ここから、私自身が最終判断を下します。

補足情報がたくさんあるので、何度か電話会議もしました。

借り手の賃貸投資物件はいずれも1万ドル程度の価値のCONDOというか長屋(ROW HOUSE)の一区分所有権のような感じで、それぞれ、賃料800ドル。

自宅の価値は、5万ドル前後で、2008年に5,000ドルで購入しているようです。働き者で、なかなか目先が利く経営者なのかと拝察します。

今回、これら3つの投資物件のうちの2つが共同担保の対象となります。商業取引として完結させるため、自宅を抵当に入れることはしません。

返済プランは、25万ドルを15年ローン計算方法で、元利ともに3年間返済後、残った元本を銀行融資でリファイナンスする計画。毎月の返済額は、金利12%、3,300ドルからで、金利はプライムレートに上方連動します。いずれにせよ、返済額は、9年間払ってきた実績のある家賃の4,000ドルより低いので、問題なく月の返済ができるという算段です。

経営者が1人でローンを申請するので、保証人や共同経営者がいません。

実際にはご主人はいて、この修理工場の修理工だそう。息子さんもやはり該当工場で働いているので、彼女が短期間病院に入ったりしても、営業が止まるということではないようです。

以上、融資業務ベテランのブローカーの審査を通り、一式書類が来て、そこから、私自身、別途、審査をしました。

多くの場合、経験豊富なブローカーの判断は、割合、安心できるのですが、時々、私自身が拒否権を発動することがあります。

今回のケースは、残念ながら、そうしたケース。

投資家様には、「この案件への融資のお勧めはしないことにしました」というご連絡をし、それについては、以下のご説明を申し送りしましたのでここでシェアさせていただきます。付随して各種書類も投資家様にはお目にかけましたが、ブログでは、対象物件住所も含め、それはしません。

 

=== 中山が今回の案件を却下した理由===

> 商業案件にしては、鑑定額に対する融資比率が高すぎる。37万5,000ドルに対し25万ドルなので66.7%

商業案件を担保に取るときは、通常、普通の住居より流動性が落ちるので、鑑定額の6割以下、普通なら5割以下を目標にしたいところです。

ビジネスにキャッシュフローがある場合、それを差し押さえる事ができるので、融資比率を多少上げられますが、この案件は、小口現金商売なので、毎月の返済が滞っても、債権差し押さえが困難。いきなり強制執行に入らないといけません。

融資比率が4割なら、以下の悪条件が変わらなくても私は、OKすると思います。

> 与信は682で、高くない。

一度購入できれば、今は所得証明不要のローンも再開しているので、修正確定申告なしでも、数年後、商業リファイナンスできるとブローカーはいっています。普通の銀行ローンが取得できることを期待すると言うより、ノンバンクの融資しか、オプションがないということのようです。


>現金商売はわかるが、やはり、収入が少し物足りない。

過去にミシガンで、自動車修理工場に融資をしたことがあるので、その時の書類を参考に引っ張り出してきました。

そのときは、「修理工場1」がうまくいっているので、「支店2」を買うという話。

「支店2」の購入価格は18万5,000ドル、鑑定額20万ドル、当方融資額は10万ドルで、融資比率は、バリューに対し、50%でした。

「1」からの粗収入は、確定申告書上、やはりめちゃくちゃ経費が計上されていて、最終的な手取りは低く抑えてありましたが、売上自体は100万ドルが計上されていて、相当なキャッシュフローがあることが一目瞭然な状態でした。

実際、その案件は、1年で現金を貯め、元本を返済してきました。

今回の借り手は、申し送りによると、AGI(ADJUSTED GROSS INCOME、確定申告書上の最終所得額)は、5万7,000ドルだそうです。

当方への申請書には、実際の個人所得は、家賃を入れて月額1万4,000ドルがあるとありました。つまりは、それ以上は確実に「ない」わけで、それだけだと、フツーの人なら、3年間で25万ドルを貯金はできません。(ご主人のサラリーだけで生活するみたいな例外的な行動にでない限り)やはり、エグジットとしては、融資頼みになりますので、プランBがないことになります。

> 共同債務者がいない。

ご主人とお子さんはこの修理工場で働いているということですが、ご主人は共同債務者にリストアップされていないので、10万ドルの頭金も申請書の所得も全額彼女、彼は、彼女からもらう修理工としてのサラリー以外には、お金がないということなのかと思います。

彼女も40過ぎと若いので、お子さんも、まだ最大25歳でしょうか。

彼女が、このご主人とは共同で物件を買いたくないという状況であるのはミエミエ。ブローカーも、「最近の再婚相手かもしれない」と言っていました。お子さんも共同債務者になるレベルではないようですし、3年間の間に彼女が病気をしたら、困ります。

当面の稼働はできる可能性は高いにせよ、このご主人、お金のことは全く駄目な人なのかもしれず(奥さんは明らかにそう思っている)、そうとなれば、経営者が病に倒れた際は、月利返済が滞る可能性も考えないといけないということになります。

ここでも、「1年でエグジットの見込みがある場合」、3年融資であっても、「ご主人か息子さんが共同債務者になれる人材」、であれば、融資比率がこのままでも、投資をOKすると思います。

> 追加担保が弱い。

所得がある物件を2つ、つけるということですが、これらの物件は、つまりゴミ物件のようなもので、鑑定額は1万ドルなので融資比率を上げる効果はなし、そこに家賃が800ドルあるという話で、いわゆるセクション8(低所得者層の公的家賃補助)のようなランクの投資かと想像しています。(詳細情報はないということでした)低所得者層向けの賃貸物件は、デフォルト率が高く、確実なプラス所得という位置づけは困難。そうすると、それを抜いた所得は、月額1万1,900ドルで、更に下がります。

> 他の資産がない/自宅に資産価値がない。

自宅に融資がないのはいいのですが、自宅は、ググると、鑑定額は5万ドル前後と出ます。ジローの言うことが本当なら、2008年に5,000ドルで買ったことになり、「しっかりしているな」とは思う半面、このランクの物件では、安心材料になりません。

通常の銀行の融資額というのは、5万ドルから。自宅にローンをつけるのは不可能ではないかもしれませんが、少し難しく、キャッシュを作るのには、たいして意味がないため、せいぜい、生活費が低いかもしれないという程度のプラス材料です。

=== 中山が今回の案件を却下した理由・終わり===

 

以上、いろいろケチを付けました。

この女性が目が利く働き者なのは大変良くわかり、好意以外の感情はありませんが、3年付き合うとなると、融資に対するリスクに対し、他の部分が弱すぎると判断しました。

さて、悪いことばかり並べましたが、ブローカーは、そこら辺は、任せてくれれば、最終的に、フォークロージャー手配で解決するのだから心配ないと言ってきました。

そのことも、間違いないので、「損が出るレベル」というほどの大きなリスクがあるという認識はなく、「合意通りに回収できる可能性が9割」、また「万が一焦げ付いても、強制執行すれば、きちんと元利が満額回収できるランク」という意味では、持ってきてもらって当然なレベル、融資審査合格案件なのだとは確かに思います。

単に、今回、本当にギリギリの決断で、

焦げ付きは、回収の手間が面倒で、余計なエネルギーを使うのが常なので、結構エクイティがあって、裁判にすることで、大きく得をするというUPSIDE POTENTIAL(プラスの儲け要因)があるという場合以外は、手を出したくないという、ある意味では、贅沢な「ノー」

なのではありました。

この8日間のうち、31日は、特に、「来週6月5日に決済」というタイムスケジュールの中、投資家様に、案件をお勧めするか、しないかを、自分のメンタルを整えながら、考えるのに使いました。

パソコンに向かうだけでなく、料理をしながら、または、プールで泳ぎながら、あるいは一晩寝かせるなど、時間を経過させ、また、過去の例を引っ張り出して参照したりした後に、案件に戻ると、よりクリアな決断が出る気がしています。

毎回、苦労して案件をまとめてきてくれる現場のブローカーは、こうなると、別の投資家を探すか、自社資金で投資をすることになり、こちらがノーと言ったことで、相手の土壇場の手間は増えるわけなので、相手の立場も考え、こちらの判断基準を伝えるときは、「できるだけ迅速に」「今後の参考」にもしてもらい、また、更に引き続き、案件をどんどん持ってきてもらうためにも、「できるだけ客観的に、具体的な理由を説明」し、「単に、印象や好き嫌い、表面的なレベルでえり好みしているではない」ことを理解してもらうことにも尽力します。

顧客様にとっては、ブローカーの審査と、その次に、私自身の審査という二重の審査を経ての案件お届けとなり、今回のように、「待っていただいた挙げ句、ダメになる」ケースはあるわけですが、大切なご資金ですので、このようなプロセスがあるということをちょっとご披露することで、よりご安心していただけると思い、「融資をしなかった案件」のご紹介をしてみました。

こんなサイクルを、繰り返す、これが、私の日々です。

案件をご検討いただいた投資家様には、上のレポートに対し、下のようなコメントを頂戴しました。

中山様、

詳細な分析をありがとうございます。 〇〇は見送ったほうが良さそうですね。Google Mapでの写真では車も敷地内に多数置いてあり、商売繁盛にともなって修理工場の賃貸から自己所有へとステップアップするのかと単純にポジティブに考えておりました。

まあきっと現状では順調なんでしょうけれども、Exit予定の3年後の商業ローンへの切り替えが予定通りいかなくなるシナリオも、ご指摘の通り多数考えられますね。中山様の洞察力には脱帽です。ありがとうございます。

(一部略)

商業物件への融資は、いろいろな角度から見ないといけませんね。

<今回融資をご検討いただいていた△△様より頂戴したメールから>

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