リタイヤメント優先か、教育費か。投資効率を考えれば、答えは明白!

アメリカ不動産投資で資産倍増中!ブログ中山道子です。

この3月には、「米国居住中で、投資/リタイヤメント/資産形成、居宅の買い替え」について、メルマガ購読者様から、1時間コンサルティング(120ドル)のご用命を受け、下のようなお声を頂戴しましたのでご紹介させてください。

ご利用いただいたのは、下のサービスです。

【50分電話会議】

メルマガを定期的に購読させて頂いていたのですが、アメリカに在住する私にとって中山さんは実際にアメリカの不動産投資をされているという部分で、税理士や不動産業者に相談するよりも、現実的で説得力があるアドバイスをしてくれるのではないか、という淡い期待がありました。

実際にカウンセリングを行う前に、メールで自身のファイナンス情報をお伝えしたところ、アポの日時だけお返事が来るのかと思っていたら、中山さんが多角的に分析してくれたメールが届き、その内容だけでも今迄モヤモヤしていたものがはっきりして、課題と検討事項が明確になりました。

私の子供や学区のことにまで触れて頂き、実際に身銭を切って投資を行ってきた方は、流石だなぁ、と感心してしまいました。

このメールだけでも暗中模索していた私にとっては、カウンセリング料の価値がありました。

50分のカウンセリングは非常に建設的で密度が濃く、そろそろ時間が終了かなと思ったらまだ30分ぐらいしか経っていませんでした(笑)

カウンセリングが終わってからも、その時の話に出た内容に関する詳細情報を送って頂いたりと、親身にフォローアップして頂きました。

投資に関しては初心者ですが、遠くない将来には中山さんが紹介されている、短期投資物件に参加出来るぐらい、資産を形成したいとモチベーションを上げた次第です。

今後ともよろしくお願いいたします。

50分に120ドルは高いです。

単なるオンラインのブロガーに、このレベルの信頼を寄せていただけるとは、大変ありがたいことです。私自身、本当に、数十分だけの話であれば、ここまで高額のコンサル料金をご請求する必要はないと思いますが、コメントしていただいているように、通常、その前後に、それぞれ最低1時間をかけることを想定した料金設定になっています。

さて、ここからは、このやり取りをきっかけにした派生的な、ごく一般論的な話です。

相談者様もそうでしたが、家族を持っている場合、「リタイヤメント」と「子供の養育・教育」問題を同時に解決しなければならないという悩みを抱えることは多いかと思います。「親の介護費用」との三択、という方もおいででしょう。

私に言わせれば、自分のリタイヤメントと教育費、「どちらもガッツリ」が難しい場合は、基本、リタイヤメント対策を優先して選ぶ必要があるのではないかと思います。

現在、米国で、ソーシャル・セキュリティを除き、DEFINED BENEFITS (年金支給額が確定している)の年金をもらっている人というのは、もう、多くありません。(連邦準備銀行の調査によると、全世帯の27%)

Getting Ready for the Golden Years

そのため、自分で自分の年金対策をしなければいけない人は、第一にはソーシャル・セキュリティでいくらもらえるかを確認し、第二に、それにプラス・オンで、就業期間中に投資を学び、自分の年金を、数十年間に渡って適切に運用する必要があります。

この制度は、すべての参加者に高度なファイナンシャル・リテラシーや長期にわたる節制生活を要求するという突き放し型の自己責任論が前提になっているため、政策的にはどうなのかなと、最近しみじみ思います。

というのも、いろいろなデータを見ると、明らかにこの転換に多くの人がついていくことができていないのです。

しかし、残念ながら、私達は、この現実の中で生きていく必要があるわけで、老後資金作りは、景気後退期や投資失敗も勘案すると、誰しも出来るだけ早く着手し、しかも、リタイヤ後の身の処し方まで合わせた長い目で見ていかなければいけません。これは、50年といった期間、死ぬまでギブ・アップすることができないプロセスとなります。

それに対し、教育費支出は、多くの場合、20年位で終わる出費。しかも、「より金をかけることで、どんな成果が上がるか」は、それほど一律でないようにも思います。

ついこの間の2019年3月には、米国は、「セレブリティ・お金持ちが、子どもを有名大学に裏口入学させるために大金を使った」という昔の日本を彷彿とさせるニュースに湧きました。

米史上最大の裏口入学スキャンダル 問われる子育てのあり方

最近のアメリカ、つくづく、アジア化(というか追随)していますね!

セレブリティの方々の場合、50万ドル、100万ドルといった額は、大した額のお金ではないのかもしれません。こうした方については、違法行為やアンフェアな出し抜きは困るということはそれとして、教育費の支出という観点からすると、総所得における比率がそれほど高くないのであれば、「50万ドルだろうと100万ドルだろうと、勝手にどうぞ支出されてください」という感じもします。

しかし、一般ピープルの私達の場合、そうは行きません。できるだけ良い教育を受けさせたい、そうなると、裏口入学は論外として、よい私立学校や家庭教師などで、使わなければいけないお金やリソースは、雪だるま式に膨れ上がる可能性を秘めています。

しかし、人生の勝負は、学歴だけではありません。

第一に、幸福感とか、人間性・精神力などの、数値化できない要素の問題。私も、周囲で有名校の方をある程度見ていますが、「無理をして入学したが、周囲についていけない気がして、脱落」したり、うつになったり。そこまで行かない場合でも、薬やアルコールで体裁を維持している人もいた気がします。

無理をさせすぎてしまい、精神的に不安定、不幸では、悲しいですね。

Suicide rate at MIT higher than national average

第二に、成功という言葉の意味が、「上院議員になること」などであれば、アイビーリーグを目指すことに大いに意味がありそうですが、「そこそこの経済的安定」という観点から見る場合は、高学歴は、それほどの意味を持たない可能性が高いようです。

ミリオネア研究で有名なトーマス・スタンレー先生によれば、100万ドル以上の資産がある人達を研究した結果、

資産家調査 学力・学歴編

大卒者の比率は9割、52%は大学院卒
SAT 平均スコアは、1190(旧スコアなので、600から2400の間、凡庸なスコア)、
大学卒業時の成績(GPA)は、平均2.92(最高は4.0なのでこれも普通)

The Millionaire Next Door by William D. Danko, Thomas J. Stanley Ph.D.

だったそうです。

この SAT スコアでは、有名大学には進学できません。

資産家は、教育を受け、大学院の学位を取得していることも多いが、他方では、有名大学のトップ卒業生というわけではなく、むしろ、「フツーの人、ただし、努力家」「むしろ、学校ではそれほど輝かなかった場合も多い」と評価するべきだということだそうです。

下のリンクから別の調査もご案内しておきます。軍の IQ テストを受け、高い IQ を示す人たちを調査したところ、所得は高い傾向があったが、資産は特記するべきレベルでなかったそうです。

Smarter people are no better off

こちらは、資産額の差は、むしろ、煙草を吸うかどうか(吸う人は資産額が低め)、離婚したかどうか(離婚経験者は資産額が低め)といった他の要素との関連がずっとはっきりしていたという興味深い調査です。

高学歴、高所得ばかりが人生ではないわけで、一般的なご家庭では、むしろ、教育については、お金はそれほどかけず、学業的にはある程度自主的にやってもらい、家庭では、「学校で学ぶ以外」のお金のかからないソフトなスキルなどを大いにサポートする、そして、リタイヤ資金を優先し、「老後は面倒かけないから」と言える立場に身を置くほうが気が楽です。

私がティーン・エージャーの親になり、感じたことは、「親が子どもに知っておいてほしい」と思うことと、学校で勉強させられること、子どもが興味を示すことは、すべて、バラバラだということです。こう書くと当たり前過ぎますが、そこで、適性がない場合に「学校で勉強すること」を強調しすぎると、「親が思う社会常識」を教える時間もなく、「子どもがやりたいこと」をやらせる余裕もない状況で、子どもを、「ラット・レース最後尾予備軍」に送り込むだけに終わりかねません。

子どもが自然に学業に秀でていて、という場合は別ですが、そうとも言えない状況で、みんながアイビー・リーグを目指すから、地元有名州立を目指すから、コンピュータ・サイエンスを目指すから、我が子も、足りない分は、お金に物を言わせてしゃかりきにやらせないと、ということになると、好きでも得意でもないのに、やることは「よそとすべて同じ方向」を目指すはめに陥ります。

こうなると、子どもは、「過当競争」(別名、レッド・オーシャン=競争の激しい既存市場)の定義そのままの世界に身を投じることになります。

しかし、親は親で、ラット・レースから卒業するためにやっているはず、会社は会社で、市場がレッド・オーシャンでは、商売は成立しません。

オトナである私達は、日々、ラット・レースやレッド・オーシャン状態から脱却するためには、どうすればいいかという問題に解決を得るために、知恵を絞っているというのに、どうして、大切な子どもには、世間的多数との同調、ラット・レース(親の世代より競争はより激しくなっていく)への新規参入を押し付けるのかという話になります。

やはり、それは、「それ以外のオプションがないから」と思い込んでいるからなのだと思いますが、実際には、親が常識だと思って育ってきた社会というのは、今後、もう存在しなくなるのだということも、親世代は、わかっているのではないでしょうか。

今の世の中、親は、親で、職業知識に加え、老後を豊かに生きるため、投資の知識等、学校で学ばなかったことを学ばなければならず、また、子どもは子どもで、やはり、他人ができること、学校で教えられたことではなく、他の人ができないどんなことができるのかが問われてくるのだと思います。

親世代のキャリアであれ、子どもの教育であれ、「学校で、他人と同じことができるようになる努力だけをずっとしてきた人」には、どんな立ち位置が残されるものなのでしょうか。また、長い、長い、かけがえのない人生は、それで、充実するものでしょうか。

脱線してしまったので、お金の観点に戻ると、リタイヤメント費用の貯蓄、投資というのは、以下の特徴があります。

1)期間が一生にわたる
2)目標は誰しも、”お金の額を増やす”という指標で一律
3)自分のことなのでコントロールしやすい

(夫婦でお金に対する考え方が、相当かけ離れていて、老後の計画が進まない場合は、カウンセリングもいいかもしれません。)

しかし、子供の教育というのは、

1)期間は、20年位
2)目標が一律とは言えない
3)他人のことなので、コントロールしにくい

という特徴があり、投資効率から見ると、両方が難しい場合は、どう考えても、リソースを老後に傾けることのほうが、結果をコントロールしやすいと感じます。

「教育は、聖域だから絶対譲れない」と思われる方もいるかもしれませんが、子供の教育に分不相応な額の支出をしてしまい、その結果、親の老後を経済的に面倒を見させることがその代償になるという EITHER OR (あちらを取ればこちらが立たなくなる)になってしまってしまう可能性がある場合は、より大局的に考えていくことが必要です。

最後に、コンサルティングをさせていただいた相談者様に対しては、子どもに対する支出についてのスタンレー先生のデータをもう一つ、ご紹介してみました。それは、

資産家調査 経済的支援の有無

親が、大学生以降、オトナなった子どもに対して経済的援助を続けた場合、全く経済的援助をしていない子どもと比べると、その子が、オトナになったときの資産額には、統計的に有意なレベルの大きな差がある。

具体的に言うと、職業ごとに、職業人になって以降の子供の資産額を比べると、

「大学生以降、親の経済的援助が続いている医師」vs「親が大学生以降、経済的援助を全くしなかった医師」

という形で、年収期待値をコントロールするため職業ごとに、経済的支援の有無で区別すると、なんと、援助を受ける子は、援助を受けなかったこと同額の所得を得ていながら、実に、資産について着目すると、援助を受けなかった子の6割程度しか資産がないのだそうです。

唯一の例外が、学校の先生・大学教授。この層は経済的支援を受けると、見栄をはらずに、それをそのまま貯蓄し、投資できるそうです。

重要なのは、この調査は、「大学卒業後」ではなく、「大学進学時」や「高卒後」を起点としているということ。大学を奨学金だけ、自分の所得だけで卒業した学生のほうが、「丸抱えで学費を払ってもらった学生」より、お金の重みを早く理解するということが、これほどはっきり結果として出るとは、という話です。

The Millionaire Next Door, Chapter 5, Economic Outpatient Care

これは、もちろん、一律、子どもに経済的支援をすることがだめということではないのでしょうが(特に、大学・大学院の進学費用や、開業支援)、しかし、教育の目的が、自律を促すことであるとすれば、リタイヤ資金を削ってまで、子供の教育、経済的支援に奔走するのは本末転倒。

周囲が思う存分、子供の教育にお金をかけているのを傍目で見るのは、親としては、辛いものですが、こうしたデータを見ておくと、教育は、突き放すことで目標である自律が促されるのだという側面があるということが思い起こされます。金に糸目をつけず、好きなことをさせることがままならない場合でも、そのプロセス自体が成長と自覚を促すのですから、罪悪感に悩まされる必要はないのではないでしょうか。

最後に、こうしたやり取りの結果、相談者様から、こんなお声を頂戴しました。

大学生以降の子どもに金をかけると、その子が40台50台になった時、資産額に統計的に有意な差があるというのも面白いですね。

これで心置きなく、その時が来たら両親の介護を優先させて頂こうと思います(笑)

色々と情報ありがとうございます。

 

ぜひそうされてください。それが、正道だと思います。

 

 

ディスクロージャー:
私自身は、大学卒業まで、全面的に、親の経済的支援を受ける「丸抱え状態」で、日本で東大を卒業、その後、米国でハーバードの大学院を卒業し(奨学金と貯金)、所得は確かに学歴相当にあったものの、資産形成はほとんど進まない状況で30台まで来てしまった口です。投資家修行のおかげで追いつくことができましたが、大学時から、お金のことをもっと学んでいたら、スタンレー先生のおっしゃるように、若いときから、資産形成に着手できていただろうと感じます。
私の子どもは、勉強が得意とはいえず、有名校進学については「戦力外」のタイプだと思いますが、英語と中国語が話せ、また、努力の重要性もわかってきたので、進路については、なんとかなるだろうと楽観視しています。現在、お稽古を含めて、高校生の子どもにかけている教育費は、年間5,000ドル前後で、大学進学を希望している中産階級層としては、平均以下です。中国語は、小学校のときに、中国に住んで学ばせたため、生活費も安く済み、一石二鳥でした。
自分自身、受験、進路については、”勝手にさせてもらった” だけの話なので、子供についても、大学進学自体はしてほしいですが、「親が無理をし、大金を使わないと行けないようなところに入学して頂く」必要はないと思っています。
参考:Cost of Raising a Child Calculator