アメリカ不動産投資で資産倍増中!ブログの管理人、中山道子です。私は、米国式に言うと、ベビーブーマー世代(1946‐1964生まれ)のすぐ下、ジェネレーションX(1965-1980)です。
この記事の概要
第二次世界大戦後のベビーブームを体現する「ベビーブーマー世代」は、米国で最大の人口グループを構成し、あらゆる消費動向をけん引してきました。今後数年後から数十年にわたり、この世代が順次、人生の末期を迎えていくことになります。
ZILLOWによると、このことにより、米国居宅ストックのうちの4分の1が転売を必要とすることになります。
この「シルバー・ツナミ」の波に最も影響を受けそうな市場は、マイアミ、オーランド、タンパ、ツーソンといった「リタイヤ世代大好き都市」。それでは、今後も若者に支持を受け続ける都市候補は、、、?
このブログでも、米国の住宅市場については、「在庫が足りない、新築が増えない」などの問題ばかりを取り上げてきました。2019年現在、不動産市場は、特にエントリーレベルの割安居宅不足が厳しい状況で、ここしばらく、「1年以内に不況になったらどうなる?」というシミュレーションを頭に描いてみますが、米国不動産市場がドカンと下がるようなイメージは描けません。
しかし、それに対し、「いや、そうはいっても、あと数年もすれば、いきなり供給過剰問題対策のほうが勝りそうなんだけど?」というナイスな指摘が出てきていますので、ご紹介しておきます。
まずは、下のチャート、PEW研究所から借りてきてしまいましたが、ご覧ください。米国の世代構成を見ると、直近、ベビーブーマー世代は、7,000万人以上。
Millennials projected to overtake Baby Boomers as America’s largest generation
ちょうど、いま世代交代の時期になっており、次に「ミレ二アル世代」(1981‐1996)が台頭するところ。この人口交代の波のうねり、日本人にとっては、垂涎の的ですね。
ベビーブーマー世代がリタイヤ年齢に到達しだした15年前には、「すわっ!米国株式市場は大量な売り圧力に服するのではないか?」という下馬評もありましたが、結局、株式保有が富裕層に偏っているなどの事情から、そのようなことにはなりませんでした。いいんだか、わるいんだか。
それに対し、住宅市場は、多少様相が異なる可能性があります。
この世代の持ち家率は、世帯総数比8割近く。この世代に属する方が世帯主である世帯のうちの8割が、持ち家族である、という意味です。
WSJによると、この世代名義所有居宅の総数は、2,100万軒です。最年長さんが、いま、70になったところで、そろそろ、養老ホーム入居、子供世代との同居、さらには、「お迎え」などによって、歴史的な中古居宅供給が始まるということです。
OK Boomer, Who’s Going to Buy Your 21 Million Homes?
ここで、
「だって、ブーマー世代に代わり、次の世帯の人口台頭があるでしょう?米国はまだ人口が増加しているんだから」
という疑問は当然生じるでしょう。
米国人口比4分の1を占めることになるミレ二アル世代は、いま、家が足りていませんので、ブーマー世帯の使った居宅は、普通に中古市場で消化し、あとは新築許可件数で調整していけばいいだけなんでは?
統計によると、世帯主が35歳以下世帯の持ち家率は40%以下なのですから。
ごもっとも、ごもっとも。しかし、問題は、世代的な好みや仕様、所在地!
米国には、このブーマー世代の需要を前提に開発した高齢者向けコミュニティが多数あり、「55歳以下入居お断り」で楽しく生活をする方々が多数おいで。日本でも、高齢者は、保育園の騒音が嫌いなんだそうですが、米国では、シニア用の計画都市に引っ越せば、子供の騒音どころか、公立学校運用に充てられる SCHOOL TAX の納税義務すら免除されます。
今のミレ二アルは、そう、まだ、すぐには55歳になれないわけですから、この部分を引き継げるのは、「ベビーブーマーの次の世代」である「ジェネレーションX(1965‐1980)の最年長組だけ。
いや、残念!
この世代は、そもそも、ベビーブーマー世代より総数が少ないうえ、ミレ二アルの先触れ的な傾向を持っています。
どういう意味かというと、まずは、2008年の大恐慌から立ち直れておらず、ベビーブーマーより資産額が低め。そのせいもあってだと思いますが、ライフスタイルも、都市型で、ゴルフコースがある閑静なコミュニティで趣味にいそしむというよりは、徒歩圏にお店があるようなアクティブライフを好む傾向がはっきりしています。可能な限り、現役を続ける覚悟をしている層なわけです。
そのため、ベビーブーマーの消費動向を、ジェネレーションXが自動的に継承できるとは、考えられないのです。
この大波、WSJによるとツナミに、一番やられそうなのが、フロリダやアリゾナに多いリタイヤコミュニティ。デベロッパーが土地開発から手掛けている「55歳以上ONLY」コミュニティの数々ですね。この他、人口減が続く中西部の都市群もさらなる衰退が予想されます。
まずいエリアの筆頭が、
◆ フロリダ州のデルレイあたり
◆ アリゾナ州のフィーニックス近くサンシティーやエル・ミラージュ
◆ ペンシルバニア州ピッツバーグ周辺都市であるウエスト・ミフィンなど
◆ オハイオ州のデイトンやケタリング
などだそうです。
高齢者コミュニティでヒットシリーズ SUN CITY を世に送り出したデル・ウエブ・ブランド(PULTE社)の旗艦コミュニティは、フィーニックスにあります。ここは、日本からの視察も多数あり、そのため、国土交通省のレポートなんかネットで見つかりました。
デル・ウエブ・ブランドの高齢者向けコミュニティはあまりに成功したために、その後、全国展開。
規模が大きく、一か所で実に、3万軒といった軒数の居宅があります。それが、全国、特にフロリダ、アリゾナ、ネバダなどを中心に、なんと現在120か所もあり、まだ、新規建築事業は続いているわけです。業界最大手のデル・ウエブ社の開発した55歳以下お断りコミュニティだけで、数100万戸単位の空き家が出るかもしれないという話です。
ここに居住する全世帯が、世帯主55歳以上、平日の過ごし方は、「ゴルフ三昧」。
これに対し、将来、ゴルフに特にメリットを見出さず、倒れるまで働かないと老後が成立しない後輩世代が、55歳になったからといって、これらのリタイヤ・コミュニティに家を買ってくれるかどうかは、やってみないとわからないとしか言いようがないのではないでしょうか。
こうしたコミュニティ運営側も、無策のままではないでしょう。将来模様替えの可能性もあるのかもしれません。今後とも、ベビーブーマーの動向には、大いにご注目のほどを。
The Silver Tsunami: Which Areas will be Flooded with Homes once Boomers Start Leaving Them?
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若者中心に人気を集めるのは、カルフォルニア、テキサスならダラス郊外、オースティン。ワシントン州シアトルやジョージアならアトランタのような、「リタイヤメント」とは正反対のイメージの都市群。
これに対し、退職者に人気のフロリダの主要都市(マイアミ、オーランド、タンパ)やアリゾナはフィーニックス、ツーソン、寂れる一方の中西部(クリーブランド・デイトン、ノックスビルにピッツバーグ)などが世代交代に悩みそう。
地元経済があまりにシルバー世代に依存しすぎている場合、これからは、いかに、コミュニティを次世代に継承させていくという課題に向き合っていく必要があります。
投資先のマクロ人口構成、こういう要素まで含めた長期予測は難しいと思います。不動産投資、長期賃貸経営であれ、想定外の事態に対面する可能性を覚悟する必要もあるかもしれません。