インフレ率が不動産の値上がり率をうわまりだした!

アメリカ不動産投資で資産倍増中ブログの中山道子です。

ここ20年程度しか、対米不動産投資をしていない私にとっても、歴史を振り返る局面という気がします。

それが、インフレと不動産価格の関係。

上のチャートを御覧ください。

アメリカ不動産、額面価格だけを見ると、19世紀末以来、ぐんぐん値上がりしているように見えますが、2点注意があります。

第一に、不動産の本当の値上がりは、全米不動産協会の仲介価格の推移を見るのでは、多少不正確である可能性があること。

理由は、NAR の数字が、「その時市場に出てくる居宅」の価格を比較しているだけだから。

例えば、1920年代には、3ベッドルーム、1バスルーム、1,000SQFTの居宅が標準サイズだったとします。それに対し、現在の中古物件の標準サイズは、3ベッドルーム2バスルーム、1,800SQFTです。

1920年代の中古市場で、当時の物件の中央値がいくらだったか、ということがわかっても、現代の中古市場での取引価格と、それを比べて、「この部分が値上がりだ」というふうに判断することはできませんね。スペックが異なるからです。

それに対し、毎回このブログで述べていますが、この「同じ家が、違う時期に、いくらで売れたか」を方法論的に追求するのが、ケース・シラー・インデックス。そのため、厳密性を要求する株式市場では、こちらの数字が徴用されています。実際問題として、今市場の物件はどのようなものが流通しているのか、ということを知りたいときには、NAR の数字のほうが、意味がありますね。

投資家は、長期的には、ケース・シラーを優先するほうが冷静になれるでしょう。

第二に、このケース・シラー・インデックスは、インフレアジャストしていません。そのため、加工データを見つける必要があります。

オンラインの下のサイトから、ここで紹介する図表は、借りさせていただきました。転用自由とあったので。

Inflationdata.com

インフレアジャストすると、不動産は、比較的最近まで、インフレにキープアップする程度で、100年くらい来ました。長い歴史的な価格の推移自体を前提とすると、別段、インフレ対策の優等生というわけではありません。

もちろん、この間、家賃があり、また、減価償却がありますので、その部分は、価格には反映されていません。その部分をプラスして始めて、インフレ対策として、そして、投資の優等生となるのです。

いずれにせよ、長期的には、価格だけでいうと、インフレを必ず上回るものではなく、20世紀後半、1970年代後半以降の状況のほうが例外である可能性もあります。私自身の投資家としての体感からすると、インフレ率が2%台で、不動産は4%といった価格推移をする、それが体感なのですが、実は、これは、歴史、政策からして、限られた時期の「常識」だったことがわかります。

ということで、ここしばらく、インフレ率が急に3倍に跳ね上がり、不動産は、それに大きく下回る成長率を示すという逆転が生じています。

ここから、歴史的標準への回帰となるのか。

それとも、連邦政府主導の「普通の人に家を買わせて、国富を増やす」アグレッシブな戦後不動産政策が功を奏しはじめていて、19世紀後半以降の米国不動産市場は、それ以前の市場と違う環境にあるのか。

連邦政府や業者、中産層は、当然、私のイメージするニュー・ノーマル(インフレ2%、不動産価格値上がり4%)を志向しているのかとは思いますが、ここ10年間に渡る値上がりは、バブル崩壊後の回復ということで、それを大きく上回っていました(インフレ2%、不動産価格値上がり6%台)。

そのため、関係者は、2%/4%のニュー・ノーマルに「戻る」までに、引き続き、多少の後退的な調整を、想定しているのではないでしょうか。

直近1年間のケースシラーインデックスによると、年間値上がり率は、0.66%。インフレ率を考えると、アバウトに、5%といった後退をした計算になります。

ケース・シラー・インデックス・ページ

別の、もっとわかりやすい言い方をすると、レジデンシャル不動産価格、多分、ざっくりした言い方をすると、ここ数年、インフレ率が落ち着くまで、ここらへんの価格でしばらくとどまるのかなと思います、全米レベルで見れば、下がる予兆はありません。ただ、過剰にヒートアップしたエリアは、すでに下降しており、落ち着くまで、それは続くかもしれませんね。

しかし、それは、緩やかなガス抜き(バブル崩壊という言葉は該当しないと思いますが、不動産価格が、インフレ比で、毎年5%下がる状況が数年続くイメージ?)であって、別段、普通の波の一貫なのかなと。

繰り返します。

100年単位で遡ると、不動産価格は、インフレとほぼ同率でしか進行していません。前世紀後半からの新時代の状況に絞ると、インフレ率の2倍の値上がりをするようになりました。ここ10年は、インフレ率に対し、3倍の値上がりをしてしまいましたが、それが恒常化するべきではない、と、関係者は考えています。一旦値上がりをした不動産をお持ちの方は、その意味での調整を経験されることになるでしょう。ただ、額面価格下落を経験するエリアばかりではないということです。

皆さんのエリアでは、いかがでしょうか。ここ10年以内に大家さんになった方は、アメリカ不動産ってすごいな、と思われたかもしれませんが、ここにきて、値上がりの一部は、調整を経験されるでしょう。それは、普通で、長期ホールディングスれば、当然起こることです。

サンフランシスコやシアトルは、すでに10%以上の下方調整を経験していますが、マイアミなんかは、インフレ以上の値上がりをしましたね。