2024年7月、デトロイト再起業の理由、抱負と中間報告

アメリカ不動産投資で資産倍増中ブログ管理人の中山道子です。

去年から子供が大学に進学し、「リタイヤ式」のゆるい仕事の仕方を見直すことができることになりました。この間、いわゆる更年期的な体調の変化なども体感しましたが、生活習慣等の見直しを行った結果、エネルギーが戻ったのを感じます。それについては、下の記事を書きました。

生産性を上げるために、プロ投資家である私がやっていること 2024年

ブログでは、アーリー・リタイヤをキーワードとしてきて、全く働かなくても、生計が立つという看板は嘘ではありませんが、カミングアウトすると、現在の本音は、「死ぬまで働きたい」です。周囲は仕事が嫌いな人も多いですが、日々、仕事が楽しい自分は、ラッキーなんだと思います。

2023年8月以降の起業準備を経て、正式な体制の発足が決まったところですが、その部分については、法的な側面については、この前、下でご案内をさせていただきました。

不動産投資会社発足に当たり

今日は、「どうして、デトロイトで、ミシガン中心の投資という初心に戻ったか」という間の事情をご説明します。

《ミシガン州デトロイト市場とは》

そもそも、フォード起業に始まるモーターシティとしての栄華を誇ったデトロイト市が、黒人がマジョリティの貧困都市へと転落したのは、他の多くのメトロエリアで起こった「政策の失敗」の結果です。

具体的には、1970年代に展開された、いわゆる”BUSING”(バス通学強制)がきっかけ。

つまり、人種差別を積極的に是正するために、<白人を黒人が多かった学区、黒人を白人が多かった学区の学校に、わざわざ通学時間を大幅に増やしてまで、送り込む>という政策が全国的に行われ、「家の目の前の学校に歩いて行かせられなくなった!そこまで付き合いきれない!!」と判断した多くの白人が、そのような政策を展開しない近隣サテライト都市に大量移住したのです。これを、”WHITE FLIGHT”(ホワイト・フライト、白人離れ)といいます。

ニューヨーク、ロス、シカゴなど、ほとんどの大都市がこれを経験し、同様の憂き目にあっています。もともと、白人のほうが所得が高いという背景があったため、この事により、これらの都市は、一挙に黒人中心の貧困都市へと転落をしたのです。

白人ラッパー、エミネムの自伝的映画、《エイト・マイル》はまさにこのような荒廃しきったデトロイトを描いたものでした。現在でも、デトロイト市の市民の所得は、4万ドルを切っており、1960年に、180万人いた人口は、3分の1の60万人台になってしまっています。この事により、不要になった住宅ストックの多くが荒廃の憂き目に会い、犯罪の温床となる状況が続いたわけです。

現在も、物件価格の中央値は8万5,000ドルと、全米中古売買価格が40万ドルになっている中、その5分の1という「お値頃感」。デトロイトの自動車産業に従事する日本の駐在員などは、「市内は危険なのでいかないように」と注意されていると聞きます。

そんな中のデトロイト市場の魅力は、やはり、格安価格と、いわゆる VALUE ADD(付加価値をつけること)が可能であること。

例えば、ハワイの不動産市場で付加価値と言ったら、通常は、長期賃貸の代わりに、エアビーやバケーション・レンタル経営で収入を増やすことができるかどうか、程度の話なわけですが、デトロイトの場合、例えば、一棟そのまま、放置アパートが、銀行から随時放出されたりすることまであり、そこまでいかなくても、適切な要修理物件の修理が自前でできれば、まだまだ、大きなバリューを生むことができるわけです。

□ 全米レベルでは、住宅価格が高騰
□ コロナ以降、フィックスアップが難しい
□ 若い世代が物件購入に苦戦する中
□ リモート志向が普通になった

といった前提条件の結果、デトロイト投資は、地元をよく知る玄人にとっては、より魅力的になっていると感じます。市内には、300万ドルといった値段がつく物件もあり、すべての物件が8万ドルなわけではなく、修理を適切に行なった物件は、中産階級向けに、20万ドル台で売れることが多く、昔のこだわりがない若い世代が中心になった現在、買い手は、別段、黒人とは限りません。

この記事の冒頭で取り上げたレンガ居宅の写真ですが、これは、当グループで手掛けたフィックスアップで、$264,900 で売れました。ZILLOW で、該当物件近隣物件売買履歴を見ると、下のように、10万ドル台の物件も、20万ドル台の物件もあり、玉石混交なのは、修理の度合いで、鑑定額が大きく異なるから。いわゆる「長らく修理、リフォーム、アップデートをしていない、賃貸レベルのストック」と、「最新家電、高級キャビネットやライトを導入し、使いやすく、すべてがきれいになっている実需レベルのストック」との差です。

以上がデトロイト市場の現在の特徴。私は、デトロイトの投資仲間たちとは、もう15年といった付き合いがあり、この前まで、全国区における融資案件を手掛けるブローカーと付き合っていましたが、いわば、「地元回帰」を果たすこととなったわけです。

具体的な理由はいくつも挙げられますが、<景気後退時には、あまりアウエーで融資案件を手掛けることには、より大きなリスクが生じる>というマクロ的な背景に基づく判断が根底にありました。

《地元のメリット》

私にとっての<地元のメリット>は、昔の仲間が現地で大きな成功を収め、マルチプレイヤーとして大活躍をしているという背景に乗っからせてもらえることになったこと。

今回の共同経営者は、もともと、大学時代にローン・オフィサーからはじめ、管理会社を設立、仲介も同時に行ってきた敏腕経営者。彼は、現在、管理物件3,700戸というデトロイト市内でナンバー2の管理会社へと成長しており、並行して、建築会社など、シナジーの高いビジネスをいくつも合わせて抱えるに至っています。

去年、私は、彼に、「連邦の高金利による好景気潰しの中、全国区での融資案件を広く、浅く続けることに懸念がある」という相談をしました。それに対し、「自分は、これまで、管理会社などの体制充実に全力投球してきたが、現在、有能なスタッフを動かせる所まで来た。自分のリソースと道子のリソースをあわせ、デトロイト都市圏(GREATER METRO DETROIT)で融資会社を共同起業しないか」というオファーがもらえ、合同新規起業を決意したという経緯があります。

私のリソースとは、商業案件を中心とする物件のデューデリなど、融資会社経営のノウハウと、既存の投資家様のご投資資金、彼のリソースは、現地での彼のスタッフや他の不動産ビジネスのすべて。

その後、いくつもの融資案件を成功裏に実現することになりました。下はそのうちの例です。

2024年3月、220万ドルの案件決済しました

この物件は、工場兼会社本部、カテゴリーとしては、主としてインダストリアル。商業案件は、高金利の中、総崩れですが、実は、インダストリアル(工場、データセンター、研究所など)は、現在に至るまで、この10年間、全米でもっとも高く安定したパフォーマンスを維持してきたセクターで、地元起業してから、こうした「安定案件」への投資を実現することができるようになり、「投資」ですから、元本保証や100%といった話をしているわけではありませんが、不安定な空気が増していく中の精度、成果に大いに満足しています。

これらの案件のデューデリや商品化は、地元の強力なコネクションがあって初めて実現したもので、地元で一、二を争う弁護士事務所の紹介から、案件の取次まで、各種お膳立てをしてくれた共同経営者には、感謝、感謝です。


《現在体感している改善点》

これまで全国区のブローカーの商品を紹介して貰う形でしたが、現在、自分自身が独立、デトロイト近郊の案件を企画立案するブローカーとなりました。ここで、現在の体感メリットをあげます。

□ 自分の思うデューデリ、案件作りができる

当然ですが、これまでは、「ある案件を流してもらう」形で、デューデリに参加するのも困難で、意見を言う程度。現在はすべての案件は私がメインで思うようなディーディリができます。

□ 案件の質が向上

景気が良いときは、多少荒っぽくても、融資先は成長できます。高金利による<官製不況>時代に入り、多くの商業案件がバリューを失っていく傾向。こういうときは、案件をより精査する事が必要になります。ビジネスパートナーの顔の広さ、ネットワークの凄さからいい案件が、広告費なしに多数入ってきます。また、まさかのときの債権回収に関しても、安心感があり、これは、やはり地元への長期コミットメントならではです。

□ 優秀な固定メンバーで固められる。

これまでは、ブローカーの会社の従業員とのやり取りでしたが、すぐやめたり、間違いが多く、ストレスの塊でした。現在、敏腕な共同経営者が選んだ人選に基づき、優秀なメンバーでやり取りできるので、スピード感や能率は比べ物になりません。

□ 地元の決まった会社と付き合える

これも上と同様ですが、弁護士、決済代行会社と、当方の丸抱え状態となり、書類の間違いなどがぐっとコントロールしやすくなりました。前のブローカーとの付き合いの場合、決済書類を依頼しても来るのが遅かったり抜けていたりと、アメリカあるあるでしたが、現在、この問題により丁寧に向き合えています。

《最後に》

長くなるので、また別途、市場動向をお伝えしたいと思いますが、以上のように、2023年8月に、デトロイトでの共同起業を決めてから、ブログ更新の余裕もなく、走り続けてきました。今後もよろしくお願いいたします。