不動産におけるスタバ効果とは 

アメリカ不動産投資で資産倍増中ブログの中山道子です。

物件取得の際には、周囲に目配りすることが必要です。近所の店舗がどのようなお店かということから、「投資先エリアの相場観」が体感できます。

この記事の趣旨

米国では、スターバックスの出店があると、一年以内に、同じ郵便番号エリアで、0.5%の不動産価格上昇が認められたと報道されており、米国では、これを、STARBUCKS EFFECTといいます。

実際のところはどうなのか、原典論文にあたってみました。

私は、「マクドナルドの出店」に、「これからの発展」が予感されるということで、家を買ったことがあります。2004年のことでした。今、私の持っているその投資物件の周囲には、歩いて行ける距離にスタバが数店舗あります。(スーパー内店舗ですが)

庶民派イメージのマクドナルドに対し、スターバックスは、よりアッパーなイメージがあります。

昔は、「サード・プレイス」(家や学校・職場でない、くつろげる第三の場所ということらしい)というコンセプトをプッシュしていましたが、今や、メインのドル箱は、全く滞在する気はないテイクアウトのお客さんでしょう。

私は、通勤というものはあまりしないので、「あんなに待つくらいなら、自宅や職場で飲めばいいのに、時間の無駄じゃないかなあ」と思ってしまいますが、コーヒーショップのドライブ・スルーでの朝の混雑は、米国ライフの風物詩です。

そんなわけで、高級路線のスターバックスは、まさに、毎朝、1杯のコーヒーに何ドルもかけてくれるアッパーなプロフェッショナル層が大量に居住しているところを狙う出店が命です。

関連し、2018年に、ハーバード・ビジネス・スクールの教授らが発表した研究が、下。

Nowcasting Gentrification: Using Yelp Data to Quantify Neighborhood Change

この研究論文によると、米国国勢調査の結果とオンライン・レビュー・サービス、YELPの結果を掛け合わせて研究した結果、

《ある地域のジェントリフィケーション(高級化、不動産価格上昇)は、スターバックスに代表されるカフェのレビューの増加に追随する傾向が全米で見られる》

というのです。

どうしてかというと、あるエリアで不動産価格が上がるためには、地元の人のサラリーが上がる必要があるわけですが、その代表的な例が、「大卒者の比率が上がること」。進学率が上がるとか、より手っ取り早くは、大卒の人間がそのエリアに引っ越してくる、という状況ですね。

そして、大卒の人間が転居してくることの結果として、まず、食品店、バー、カフェの増加が、始まる、そこから、不動産価格上昇までつながるんだそうです。

この流れは、不動産価格上昇の後というよりは、前またはさなかに起こることが多いのだそうです。

論文は、こうしたビジネスが増えたかどうかを調べるために、YELPという無料口コミサイト(ビジネス電話帳、YELLOWPAGESの略)で、これらの《大卒者が好むビジネス》のレビュー数が増えたかどうかという指標を使っています。いちいち、スタバがどこに出店したかとかビジネスごとに調べるより、確かにわかりやすいですね。なるほど。

YELP

研究の対象となった期間は、2007年から2011年。

大卒好きサービスのトップ・スリーが、

1)ベジタリアン料理店
2)スタバ
3)ワインバー

には、笑ってしまいました。外出嫌いの私は、どれも全くと言っていいほど、行かないという。。。

不動産を買うなら、スタバが出店したばかりのところが、チャンス!?

そんなに簡単ならいいのですが、実は、スタバは、最近、COMMUNITY STOREというシリーズを展開しています。

Starbucks announces push to open more stores in lower-income communities

どこが、普通の出店と違うかというと、いわゆる貧困エリアに、行政の経済振興政策と連携して行うものらしく、場合によると、OPPORTUNITY ZONE(経済振興のため出店すると補助が受けられる)内であったりして、普通に考えれば、GENTRIFICATIONが自然に生じているエリアというよりは、「何とか雇用を増やさなくっちゃ」というエリア。

そうなると、不動産におけるこのスタバ効果も、今後は、一筋縄とはいかないかもしれません。

貧困エリアに対するいろいろな行政補助政策はこれまでにも何度も試みられていますが、多くは、お役所の思う通りにはならず、保守派にとっては、「だから、行政補助は無駄なんだ」とも揶揄されるわけです。

行政やUNITED WAYとの連携(実は補助狙いもある?)で、いささかの職を提供する代わりに、「毎日一杯のスタバ・コーヒー」という素敵な習慣を、ロウワー層にも学んでもらおうという果敢な企業戦略、吉と出るでしょうか。

いずれにせよ、原典に当たると、ジェントリフィケーションが進むかどうかは、スタバに限らず、「おしゃれなカフェやベジタリアン料理店、ワインバーといったような大卒が好むサービスがあるかどうか」というより広い観点からの評価だったようです。

投資物件を買うときに、「若い大卒、大卒の若い家族が喜んで住みたがるエリアかどうか」という眼で見ていくというのは、確かに、有効な視点だと思います。

この記事の概要

エリアがジェントリフィケーション(向上、不動産価格上昇)するかどうかは、そのエリアに、統計上、給料がより高い大卒層が新規に引っ越してくるかで決まります。そのため、こうした動向に敏感なビジネスの出店状況を確認してみると、エリアが向上傾向があるかがわかるようです。

ベジタリアン、カフェ、ワインバー。高級スーパーを含め、今後気を付けてみてください。