LEASE OPTION(リース・オプション契約) とはなにか 

アメリカ不動産投資で資産倍増中ブログの中山道子です。

今日は、最近見た公共放送の PBS の特集枠の動画が大変良くまとまっていると思ったのでご紹介します。リース・オプションという「物件の購入手段の罠」についてです。

記事(書き起こし)は、下からご覧いただけます。

Quest for home ownership turns dreams into nightmares

以下、ご説明すると、舞台は、オハイオ州ヤングスタウン。「デトロイトより酷い」衰退都市の代表です。

「ロウワー都市」の代表、ヤングスタウンが取材で取り上げられているのにはわけがあります。2008年までのバブル時には、銀行融資が乱発されたため、こうしたロウワー都市においても、多くの住宅ローンが組まれました。

しかし、金融危機で物件価格が急下落すると、微妙な物件は、大体、銀行の差し押さえに会い、地元の多くの人は、居宅を失い、与信に傷が付きます。

2008年時の大恐慌時以降、銀行は、金融緊縮を行い、高リスクな案件への融資は行わなくなったため、こういった「衰退都市」では、その後、ほとんどの人が、家を買うことができない状態が続いています。

こういった都市では、居宅の値段が、3万ドルとか5万ドル、家賃は600ドル、800ドルなので、第三者は、「どうして家がこんなに安いのに、買えないのか?」と思ってしまいますが、こうした歴史があるため、多くの居住者が、正規の銀行ローンを取得できないわけですね。

しかし、銀行放出のストック(低品質)は、たくさん積み上がっています。

そこで出てきたのが、こうした低所得者層相手に提供される

RENT TO OWN
LEASE OPTION

と呼ばれる「居宅購入プログラム」。

実態は、普通の賃貸なのですが、賃貸借契約書と同時に、居宅の買付オプション権を同時に購入する契約を締結します。そうすると、例えば、こんな家があるとします。

> 現金で買えれば、4万ドル
> 賃貸すれば敷金1ヶ月、賃料650ドル

こんな居宅をオプション権付きで RENT TO OWN 契約をすると、下手をすると、下のような契約になります。

1)オプション権購入に2,500ドルを払う
2)賃貸借契約で、家賃は700ドル
3)保険、修理や固定資産税は借り手が払う
4)5年後に5万ドルで購入する、最初の手付の2,500ドルは頭金に
5)途中で家賃が払えなくなれば、普通の強制退去でオプション権も失う

購入契約をした上で、1年といった期間、家賃を取り決め通りに払っていたことが証明できると、該当する家の購入につき、正式な銀行ローンが取りやすくなります。そのため、まずはこういう契約で、ほしい家に引っ越し、賃貸生活を始め、そこから、与信修復を始めることには、一応、ある程度の意味があります。

ただ、上の契約内容を見れば、どこからとっても、売り手からすれば、大幅なボッタクリ、買い手にとっては、いいことが一つもありません。もちろん、交渉なので、リテラシーが高い買い手は、一つ一つの契約条項を吟味し、逆に、下のような契約を締結することも不可能ではないのです。

1)オプション権購入には、1,000ドルを払う
2)賃貸借契約で、家賃は、400ドル
3)保険、修理や固定資産税は借り手が払う
4)7年後に4万2,500ドルで買う、手付は頭金に充当
5)途中で家賃が払えなくなれば、普通の退去でオプション権も失う

この契約なら、普通に賃貸するより割安で済む可能性が高く、また、物価上昇に伴い、居宅の価値が、4万ドルから5万ドル、6万ドルになったり、低金利のタイミングを上手く捕まえる可能性が高まります。売り手にとってのメリットは、修理等の不確定要因を相手に転嫁させられることでしょう。もちろん、売り手が、それでは、だめだということなら、成立しません。単に、契約なんで、お互い、勝手なことを言い合って、着地点を模索する余地があるということです。そこが、普通の賃貸や売買と違うリース・オプション契約のメリットと言えます。

「経済停滞エリアで、銀行融資を使って物件を買う力がない人が多く住んでいる地域」では、物件のエグジットには、リース・オプション契約を用いることにメリットがありえます。そうしないと、売れないのです。

逆に、結構なバブル・エリアで、不動産が値上がりする時期に、「1年後に今の価格で買うから」というようなリース・オプション契約をすることで、買う側が、大いに儲かることもありえます。バブル崩壊前の一時期、多くの値上がりエリアで、リース・オプションが、人気だったのには、こういう理由があります。

さて、このように、リース・オプションは、自由に設計できる反面、売り手にとっても買い手にとっても高リスクなのが問題。ヤングスタウンのようなエリアで、3年後にリース・オプションで物件を買う、といったような契約をしても、その契約を実際に遂行できる人の数は、多くないだろうということが想像されます。取材中に出てきたあるリサーチによると、最終的な成功率、20%です。

そこで、このリース・オプション契約を使い、組織的に、詐害行為を働く不動産会社が多く暗躍している、というのが、この取材で明らかになった成果。

取材から察するに、詐害行為で利益を出す手順は、以下のようなもののようです。

> 銀行の放出物件を格安でたくさん買う
> 一軒の仕入れ値は、例えば1,000ドル
> 修理などはしない、ペンキ塗りかえ程度
> 未払い固定資産税などもそのまま放置
> すぐにリース・オプション付き賃貸に出す
> ほとんどの案件がデフォルトすることがわかっている
> 最初のオプション権購入代金や、1、2年の家賃だけ取る
> テナントが払えなくなり、デフォルしたらそれで終わる
> 居宅は、最後には、崩壊状態で行政に押し付ける

イメージとして、例えば、物件を300軒、平均価格で1,000ドルで、銀行から一括購入し、すべての物件から、手付や1年分位の家賃をあわせて、その5倍、7倍位回収できれば、悪事が露呈して追い出されるまでの数年間、相当なリターンになるのかと思います。

ビデオで、実例として上がっているのは、VISION PROPERTY MANAGEMENT という会社。

取材されている被害者の女性は、ごく普通の方。子供の学校にいれば、軽く、ママ友になれそうに見えますが、発言をフォローすると、結構な驚きがあります。

> 買ったつもり。自分が賃借人だったは知らなかった。
> 入居後、水道管がまったくなかったことに気がつき、自前で修理
> 電気も暖房器も同様
> 最後に賃料自体払えなくなり、家自体失うことに
> 自分が悪かったのかと泣き寝入りするところを、
> 同社に対する集団訴訟を知り、自分が詐害行為の被害者だったことを知る

など、契約書を読むどころか、リース・オプションとはそもそもどんなものなのかという根本的なことが理解できていない、そういう方なのですね。

リース・オプションの根本的な問題はこれです。

一般的な不動産の相対取引は、普通なら、仲介業者さんを介して行われ、決裁には、タイトル・エージェンシー、融資には、買い手側銀行が関与します。そうすると、複数のアクターが関与することで、消費者保護法規が厳密に適用されるため、買い手を守る定型的なメカニズムが保証されます。

例えば、建物検査。不動産協会が作る定型的な契約書には、建物検査や鑑定についての言及があり、リテラシーが高い専業投資家が、案件によっては、わざと、そうしたプロセスをすっ飛ばすことはあっても、このランクの人が、生まれてはじめてマイホームを買うという状況ですから、建物検査をすっ飛ばすことは、ありえません。融資を取るなら、更に鑑定も必要ですので、お金を貸す銀行も、黙ってはいません。

しかし、この方は、そもそも、与信が悪く、銀行に相手にしてもらえないことが明らかという状況。不動産の仲介手数料も払いたくない、そういう気持ちになっているわけです。そこで、売り手と直取引をしてしまう。

こうなると、普通に、仲介物件を購入するという、「消費者保護のメカニズム」外に放り出されてしまい、いわば、自分から進んで、狼の巣窟に入ってしまった形。

正直、買ってから、家に水道管がないことに気がつくということは、建物検査どころか、購入前の確認時に、トイレの水を流してみる程度のチェックもしなかったようで、こんな人相手に、一方的な契約書にサインをさせるなんて、それこそ、赤子の手をひねるようなものです。

アメリカ不動産の醍醐味は、「なんでもあり」なこと。

個人レベルの投資家であっても、業者さんや大手銀行さんでないとできないようなことが実現できたりします。私自身、そうした例外的な投資を行い、投資収入で資産を倍増中です。

しかし、「なんでもあり」だからこそ、知識が無い方が、こういう罠にはめ込まれるケースも多数生じるわけです。

この方の例は、「現地の低所得者層」ということで、自分には関係ないと思われるかもしれませんが、過去には、私は、日本人の投資家が、リース・オプションで物件を買って、失敗したのを見たことも多々あります。海外居住者の場合、普通の融資が取れないため、それで、こういう物件の買い方を勧められるわけです。

こういう場合の問題点は、「自分の経験値が、やっていることにマッチングしていないことがわからない」こと。ベテランになる前の誰でもが陥いる可能性がある罠です。

くれぐれも、気をつけてください。

この記事のまとめ

米国のニュースで報道された悪徳不動産業者の詐害行為の例を紹介し、米国不動産市場の複雑さとリスクの一例をご紹介しました。まとまった資金のある日本人の遠隔投資希望者が、米国では、米国非居住者は銀行ローンが組めないということで、手に余る取引を勧められ、上の方と同様の失敗をする、そんな例も知っています。

個人投資家は、自己リテラシーや、付き合う人のレベルを上げることが、投資リターンを上げる唯一の方法です。この記事を読まれている皆さんはくれぐれも気をつけましょう。

私はリアルに、自己資産を投資、米国不動産のリターン上、年率10%以上叩き出し、それで食っています。無料メルマガはこちらからどうぞ。

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