「アメリカ不動産投資で利回り倍増中!」ブログ管理人の中山道子です。
今日は、リタイヤ計画について。
今日の記事の概要
リタイヤ・プランニングにあたっては、パーソナル・ファイナンスの勉強は、投資の研究より、大切。
1)人口動態的に見ると、米国でも、もう、核家族が典型的とは言えず、成人した子供の多くが親と同居。
2)米国でも、今どきのリタイヤ・プランは、成長した子供の経済的独立を視野に入れて行う必要がある。
3)さらに、成人した子供に経済的援助を行うと、その子供の蓄財能力に差し障る可能性もある。
しばらく前に、不動産とは全く関係ない日本人の方々との飲み会があり、職業を聞かれ、「投資家です」と答えたところ、
「投資で生活をするなんて、怖くないんですか?」
と質問されたということがありました。
あちらは、「来月の生活費を今月、投資でひねり出している」イメージだったのでしょうか。
質問者に対しては、お茶を濁しましたが、実際には、私は、今後、全く自己資金を運用せず、また、コンサルを明日やめたとしても、預金を引き出していくだけで、今の生活水準を、向こう50年近く、維持できます。
それに対し、逆に、私に質問をされてきた方は、零細ビジネスに雇用されている給与所得者。私こそ、年齢相応の貯蓄計画や失業時の対策が実現できているか、コンサルティングをしてあげたいくらいです。
ただ、振り返ると、この方の
「投資=ギャンブル、給与所得オンリー=ノーマル」
というメンタルは、珍しいものではなく、私も、20台は同じでした。やはり、パーソナル・ファイナンス(PERSONAL FINANCE)を学ぶ場がないことが理由でしょう。
私が若い頃から今に至るまで、学校では、 人生を送るにあたって必要になるお金の問題を学ぶという場所はあまりなく、欧米では、HOME ECONOMICS、日本では、家庭科に該当する領域が類似しているといえるのかもしれませんが、現在の「パーソナル・ファイナンス」と呼ばれる分野の射程は、昔の家庭科の領域を遥かに超えた複雑な内容になっています。
思いついた項目を順不同にリストアップすると、
> 結婚や離婚
> 持ち家購入の是非
> 年金積立計画
> 投資
> 税金
> リタイヤメントプラン
> 相続
> 教育など子育てに関わるお金の問題
などなど。
上に加え、与信の管理方法、クレジットカードの仕組みや学生ローン返済、医療問題、下手をすると破産法など、複雑化した現代社会においては、昔は考えなくてよかったレベルの膨大な知識が必要になっています。
この間に、高校や大学の授業科目が、すぐにこの問題にタイムリーに反応できたかと言うと、そんなことはなかったわけですし、おとなは、仕事をしながらこの問題に直面し、いきなり実地で、自分の行動を選択せざるを得ない状況に追い込まれるわけですから、多くの人にとっては、子供に、問題を体系だって教えるどころの話ではないわけです。
米国でも、流石に、最近は、選べば、高校でも大学でも、こうしたトピックが、選択科目上、オファーされていることが多いのですが、大学進学に関係するアカデミックな分野という位置づけでないため、現実的には、それほど重視されていないイメージがあります。(お子さん向けの教材に関心がある方は、DAVE RAMSEYの高校生向けシリーズをお勧めします。)
そんなわけで、パーソナル・ファイナンスという分野、誰もが必要なのにもかかわらず、発展途上の新しい領域。体系だって勉強した、最新状況を大体掌握できている、という人が、少ない分野なんですよね。
私自身も、お恥ずかしながら、米国式のパーソナル・ファイナンスをきちんと勉強するようになったのは、40台になってからです。
その反省から、子供には、できるだけ早めに、こういうことに触れさせるようにしています。(参照記事「13歳のファイナンシャルリテラシー教育 不動産投資編」)
これからリタイヤメントプランニングをしなければ、という方は、投資とパーソナル・ファイナンスをセットで考える癖をつけていってください。
投資だけを勉強しても、本格的な資産形成に至ることが難しいのは、ザル家計になったり、離婚ですべてを取られたり、キャッシュフローをきちんと見なかったがゆえに、分不相応な家を建ててしまった、といった life happens (人生の様々なことが起きる)があるからです。
私も、投資家や不動産業者を名乗り、それらの仕事においては、それなりに経験があるのにもかかわらず、上のいろいろな理由から、資産形成に失敗している人を数多く見てきました。また、一見、成功しているように見えても、実際には家計管理ができていない人というのは、最後には、必ずそれが仕事内容にも影響を及ぼします。酷なようですが、職業上は距離を置くしかありません。
さて、「パーソナル・ファイナンスとはなにか」についての説明が長くなりましたが、週末のウオールストリートジャーナル紙を読んでいて、不動産投資家にとっても興味深いこんな記事があったため、この記事を書くことを考えつきました。
<WSJ紹介記事の概略>
米国でも、若い世代は親との同居を強いられている。今どきのアメリカの親世代のリタイヤメントプランは、おとなになった子供の独立計画を伴う必要がある。子供が小さいときから、こうした布石を打つ教育をしていこう。
日本人にとっての一昔前の米国人のイメージは、
> 大学進学とともに親の家を巣立つ
> その後、実家と別の都市で就職
それが、実際には、イマドキの米国人、
> 18から34歳の32%が親と同居(2014年)
> 25から29歳で見ても、30%が異世代と同居(主として親)(2016年)
といった結果が出ているというのです。(ピュー研究所。国勢調査の分析)
この年齢層、1960年時には、調査対象の6割以上が、独身ではなく、世帯を構えていたというのですから、人口動態の変化の急激さには、驚きですね。
この背景には、医療費、住居費、学費などが高騰した反面、最低賃金等、低所得層の賃金の増加率がこれらの諸経費の増加率に見合っていないことが理由として指摘されています。
半世紀前には、大学進学率は低かったわけですが、現在は、高卒者の65%が、とりあえず大学に進学してみていますので、基本、18歳が「親から独立した大人」という定義自体が、成立しなくなっているという変化もあります。
また、米国が人種的に多様化していることも、価値観の多様化をもたらしています。核家族は、アングロ系などの一部の白人カルチャー。他のほぼすべての人種において、MULTIGENERATIONAL(二世代、三世代)同居の伝統があります。
この結果、全米国人のうち、2016年段階で、2割(6,400万人)が、異世代同居をしていると推定されるそう。
参照:ピュー研究所調査
A record 64 million Americans live in multigenerational households
リタイヤ前の世代がおとなになった子供を扶養するなんて、一昔前の米国なら考えられなかったかもしれませんが、現在、同居していない子供であっても、生活費を支援することが一般化しているようです。
「18歳以上の子供を持っている親世代に対するアンケートにおいて、過去12ヶ月以内に、子供に金銭援助を行った親の比率は、61%」
参照:ピュー研究所調査
5. Helping Adult Children
こんな状況を受けて、昨今のファイナンシャルプランニングでは、(大学等高卒後の)教育費を計算に入れて考えることが、一般化しています。しかも、それに加え、子供が就業した後、または安定就業できない場合のサポートという問題がリタイヤ資金づくりにとって、重要になってきているというわけです。
NERDWALLET社主催のアンケートによると、「18歳以上の子供が過去に何年間、あなたと同居をしていますか」という質問に対し、実に、回答者の2割が、「自分と5年以上同居している子供がいる」、と回答しています。
Supporting Adult Kids May Cost Parents $227K in Retirement
この記事には、「子供が18歳以上になってからかかる各種経費(学費も含める)をリタイヤメントに回していれば、いくらの老後資金ができるか」を試算する計算式もついています。
18歳以降の子供に対するサポートで、親は、最大、20万ドル以上の老後資金をパーにしているかもしれない、という同社の試算は、最近の大学の学費が、州立大学であっても、1年で1万ドル以上かかることが当たり前の昨今、妙な説得力がありますね。大学を卒業できても、日本のように、一斉に就職できるわけでもないですし。
というわけで、老後資金が心配な方は、子供の学費、また、子供が社会人になった後の金銭支援が問題にならないように、子供に対するパーソナルファイナンス教育を早くから行い、子供が20歳になる前に、リタイヤ協力を要請するくらいの必要がある、という話です。
実は、お金がある場合であっても、子供のためには、簡単にはあげないほうがいいという調査もあるのです。
資産家層のライフスタイルを研究して一躍古典となったトーマス・スタンリーら著作《となりの億万長者》には、まさにこの問題を扱っている章があります。
どうして、著者らがそう断言するのかというと、
資産家の子供が「40台から50台半ば」になった段階で、職業別に、子供世帯の資産額を調べると、「過去に親から金銭援助を受けた層」と「受けたことがない層」のうち、「支援を受けたことがない層」のほうが、「親から支援を受けた受けた層」より、調査回答時の資産額がずっと多かったというわけです。
にわかには信じられないこの結果、理由は、「援助を受けると、浪費体質になり、資産管理が下手になる」からというのが著者らの分析。親が、お金を上げても、それを貯金できるのは、調査で見ると、医者や弁護士ではなく、学校の先生と大学教授だけなんだそうで、その理由は、「学校の先生は、消費志向が低く、高い車や素敵な家を見栄で買う必要がないから」。
その後、スタンリー博士の娘さんが、やはり研究者になっており、彼の死後、遺稿ともなった共著を仕上げ、発表することになっています。
米国アマゾンでは、10月発売に向けて、予約が可能。
The Next Millionaire Next Door: Enduring Strategies for Building Wealth – October 1, 2018
現代社会では、子供が責任感があるタイプであっても、これまで以上に経済的援助を必要としているように見受けられます。
アッパー層では、「無料のインターンシップ」(高所得の就業機会につながるが、その間、親が生活費の面倒をみることになる)、箔付け留学(STUDY ABROAD、高額な海外インターンシップを含む)、サンフランシスコなど、生活費が高い都市で、より有利な就業機会を狙うため、家賃や家を買う際の頭金をサポートするなど、あらゆる経済的援助が一般化しています。
そして、昨今では、こうした世代間資産移転、親からの leg up (優位に立たせてあげる)があるからこそ、アッパー中産階級は成功し続けているのだ、これは、成功機会を独占する抜け駆けだ、これをやめさせないと、アメリカの活力は失われる、という批判も先鋭化しています。(Richard Reeves, Dream Hoarders)
《となりの億万長者》が出版されたのは、1996年ですが、その後登場したこういう新種の経済支援も、「アッパー層による腹黒い成功機会の独占」戦略であるようにみえて、実際には、子供自身の”成功力”を奪う無意味な介入なのでしょうか。
話がどんどん複雑になるんでもうやめるべきなんですが、例えば、私の知り合いで、「お父さんが大学教授で、よい医療保険が大学を通して提供されている」ということで、独立した子供たちを、夫婦、孫と各世帯まるごと、彼の医療保険に加入させてあげている人がいます。そのため、お父さんは、どうやら、本当はリタイヤしたいけれど、一族に対して遠慮するところがあるようです。
お子さんたちも別段無為に過ごしているわけではなく、非営利の私立学校の先生とか、単に給料が低くて、医療保険を職場で提供してもらえていない職にしかありつけなかっただけなんですが、ここまで来ると、”子供世代に対する甘やかし”というより、連邦政府の医療政策の破綻にも責任の一端があるようにも感じますね。
逆に、親のほうが、破産や低収入などで、与信枠が足りず、住む家を買うために、実家を巣立った子供の与信を使い、子供に住宅ローンを組ませているケースも、仕事柄、よく見ます。つまり、親のほうが、子供の経済的支援を必要としているケースも健在なわけです。
ああ、複雑、、、
今日は、不動産投資プロパーの話というより、リタイヤメントに向けての人生設計について、国勢調査に基づく最新の人口動態学の成果をご紹介しながらお話させていただきました。
私自身の老後計画においても、子供が、独立自活できるようになることのみならず、投資とパーソナルファイナンスに強くなってもらうことが、私が順当に死を迎え、子供が相続を経験するにあたって、最重要。
今日も、子育て、頑張るとしましょうか。
今日の記事の概要
リタイヤ・プランニングにあたっては、パーソナル・ファイナンスの勉強は、投資の研究より、大切。
1)人口動態的に見ると、米国でも、もう、核家族が典型的とは言えず、成人した子供の多くが親と同居している。
2)米国でも、今どきのリタイヤ・プランは、成長した子供の経済的独立を視野に入れて行う必要がある。
3)さらに、資成人した子供に経済的援助を行うと、その子供の蓄財能力に差し障る可能性もある。