アメリカ不動産投資で資産倍増中!ブログの中山道子です。
この記事の概要
よい投資案件を仕立てるほうが、資金を調達より難しいので、いい案件は、広告やセールスマンなど経由しなくても内々で終わってしまうというのは、本当です。
お金の調達より、物件調達のほうが難しい理由は、審査を厳密に行うと、成約率が落ちるためです。しかし、この事により、投資の精度は上がります。
私自身が、投資審査基準をより厳しくしていった経緯を振り返ってみます。
この2月は、まだ、17日だというのに、私のマネージメントする投資の償還合計金額は、すでに100万ドルを超えました。新規再投資案件は、今、待っているところです。
若いときは、単純に「もっと投資するためのお金が欲しい」と思っていましたが(苦笑)、経験を積んで、それなりの資金をマネージメントする立場となると、逆に、「お金の調達より、厳選された投資先を見つけることのほうが難しいのだ」ということがわかるようになります。
いい案件さえあれば、お金は、自然に集まってきます。(ちゃんとした実績があればですが。)逆に、いい案件がなければ、責任がある立場としては、投資案内ができません。
それでは、「いい案件かどうか」は、どう決まるのでしょうか?
リターンが高いかどうかということでもありません。もちろん、リターンが年率1,2%といった程度なら政府債のほうがいいわけですから、期待値というのはあります。
しかし、逆に、金利を年率30%払うから、貸してくれと言われても、怖くてできないこともありえます。
そう、投資前のリスク・アセスメント上、デューディリジェンス(日本語流に言う「デューデリ」、注意事項の事前調査)が固められるかという問題です。
過去には、私も、今ほど、デューデリに細かくなく、今考えると、「今はもう取らないリスク」をとってしまった経験がたくさんあります。
その結果、どういう危険があったかというと、過去の経験では、大体、金利をへらすことで和解する感じで終わります。
担保がありますから、お預かりした元本をスッてしまったことはありません。貸付で自分の元本をなくしたこともありません。
しかし、任意回収に手こずる場合は、「最終手段に訴えるコストと手を打つことのロス」を比較考量することになります。
この場合、ローン返済条件をリストラクチャリングして、かたをつけ、投資家様には当初の借用書より低い金利で手を打っていただくようにとお願いしたことは何度もあります。私の案件に対し、相当な額を、何年もにわたり、再投資してくださっている投資家様は、こうしたお願いを1度は経験されていたりします。
こういうデフォルト案件が出るたびに、融資基準や案件の性質を考え直し、デューデリのレベルを引き上げてきました。
例えば、数年前まで、「自宅購入のためのつなぎ融資」案件は、基本、了承していました。
例として、昔のブログに掲載したケースをご紹介します。
「過去に、借金したくせに、返済せずに、踏み倒した経歴がある人間」に、金を貸すってどういうこと!?
簡単に説明すると、「与信が悪くて銀行からお金が借りられない人に、自宅を買わせてあげる。1年後、与信改善したところで、正規の銀行ローンを取り直してもらい、当方はエグジットする」といった感じです。
2011年の上の案件は、「一度破産宣告経験がある人」に貸したケースですが、1年後、トラブルなく償還になりました。米国では、破産後、2-3年で自宅ローンが取れるようになるので、その期間を手伝ってあげたわけです。「破産後そんなにすぐに銀行融資が下りるなんておかしいじゃないか」と思われる向きもあるかもしれませんが、まあ、それが米国社会だということです。
いずれにせよ、個人に融資する際も、それなりのデューデリは行うわけで、大体はうまく回るわけですが、件数が増えていくと、15件に1件位の確率で、何らかのトラブルになることがわかってきました。
そういう場合でも、「返済を1ヶ月猶予した」とか、「弁護士に一度督促状を送ってもらった」等のちょっとしたことで、解決するケースも多いのですが、これらのトラブル・ケースのうちの半分が、本格的な弁護士介入案件になりえます。(つまり、30件に1件位)
そういう「弁護士介入案件」についても、前のブログで、一度言及したことがあります。
2015年のこのケースでは、つなぎ融資を受けた夫婦が、1年間の融資期間内で離婚、ご主人が家を出て、おかしくなったのでした。外野からすると、「家を買って1年以内に離婚するなんておかしいじゃないか」とも思うわけですが、これも、「それが、米国社会というもの」なわけです。
最終的には、該当案件は、物件を投資家様名義にした上で売却し、ぎりぎり、事なきを得ましたが、その間、ああだこうだといちいちもめて、本当に閉口しました。
自宅購入への融資案件の場合、物件を投資家様名義に変更するプロセスがより手間取る上、名義が投資家様名義になってから、今度は、居住者を追い出すための強制退去手続きを経なければいけません。2つの裁判が、同時にできればいいのですが、まず、名義を当方にしないと、相手が不法占拠者であることを主張できないわけです。
このケースでは、離婚した夫はおらず、投資家様名義になった段階で、奥さんとお子さんたちがこの物件に居住していました。
奥さんは、常識のある人でしたが、経済的な柱だったのはご主人です。
そして、ご主人はというと、物件を購入するためにそれなりの頭金を使い、当方への金利を半年以上払っていたところ、離婚になって家を追い出され、今度は養育費を払わなければいけないわけで、融資後1年経って、大きく変わってしまった自分の立場に大変な不満を持つに至っているわけです。
ということで、このご主人は、この頃から、反社会的、非常識な行動に出始めました。
彼に、夜中に自宅に押しかけられたブローカーからは、「このままでは、自分の会社の営業に差し障りかねない。自分からも頭を下げるから、投資家様には、この夫婦に、強制執行をかける代わりに、立ち退き料を払って任意に出ていってもらうようお願いしたい。当然、自分自身、コミッションは一切いらない。」ということを言ってきました。
こういう経緯があって、物件名義が投資家様に変更になった後に、投資家様にお願いし、このご夫婦に立ち退き料を払っていただき、物件が空室になった段階で、私も、現場を見に行きました。
立ち退いた借り手は、冷蔵庫等動かせる家電を持っていったのはもちろん、天井のライトまでなくなっている上、壁には穴がボコボコ。
奥さんが住んでいた時にここに立ち寄った担当者さんによると、出ていく前は、そんな状態ではなかった、キッチンにはシャンデリアが輝いていたということです。今、この記事のキッチンの写真をご覧ください。15ドルの照明に変わっています。そういうのは、全部、ご主人の仕業だと思うと、、、
まあ、私も長いので、過去には、わざとガソリンを床に流して腹いせをしていくような人まで見たことがあります。
なので、この件は、立ち退き現場としては、過去最悪ではなかったですが、相当な立ち退き料(しかも、夫婦に別々に!)を払った結果としては、非常に不満が残る状態でした。
最終的に、このように、取り立てコストが大変かさんだ上に、物件の状態は良くなく、2年分の固定資産税の滞納はあるわで、投資家様におかれては、私達へのコミッションはゼロだったにせよ、売却時には、元本を回収した以上のリターンはほとんどない状態で終わられることになりました。
融資執行から2年2ヶ月、滞納から1年3ヶ月です。
このケースを経て、私は、該当ブローカーに、「こういう居宅を担保にするタイプの融資はもうしない」と言い渡しました。
このタイプでも、大体はうまくいくのは経験則上わかっていたわけですので、苦しい決断でしたが、こういう投資がどんどん増えれば、統計的に、揉める案件が確実に増えていくことになります。
長年に渡って数千件といった数の物件をマネージメントする規模であるという前提であれば、統計的に数%の問題案件が出るというのは、オペレーション上、管理コストで吸収できるレベル、むしろ優秀な方ではないでしょうか。しかし、私は零細。母数が小さいですから、急に数件続くといった状況だって可能なわけで、そうなると、直ちに苦慮することになるわけです。
ということで、ここ2年ほどは、稼働中の商業案件への投資へのシフトを行い、デフォルトがあった時にも、当方が損をしないように、相当抜かりがなくなっています。
自宅用の案件と、収益がある案件への融資はどこが違うのかというと、例えば、後者の場合なら、デフォルトが始まった段階で、名義変更を待たずとも、すぐに家賃を差し押さえる手はずを決めておけます。強制退去をかけて、テナントを追い出す必要もありません。
反面、そこまで融資基準を引き上げた結果、審査を通らない案件が大変多く、投資家様には、「良い案件が出るのを待っていただく」ダウンタイムのお願いが長引く場合があります。
そこら辺の兼ね合い、「適当な案件をすぐお持ちする」ことができない理由を少し、自分の投資履歴をさかのぼって振り返ってみました。
興味深いのは、案件をより精査しても、デフォルトやトラブル率は、それほど落ちないことがわかったことでしょうか。
相手もお金持ち(=担保に差し出すための資産がたくさんある)なら「喧嘩せず」済ませられるのかと思っていましたが、こういう層でも、似た確率で、資金繰りの失敗をしでかしてくれます。そこは誤算でした。
しかし、現在は、トラブルが生じない前提で行動するのではなく、トラブルが生じることを前提に、それでも当方が損をしないような解決が容易に見いだせるときだけ、ディール・メーキングしているので、デフォルトが発生した場合も、心配せず、ブローカーに粛々と回収に出てもらい、私は高みの見物ができるようになりました。
「資産家相手への融資」に特有なトラブルについては、ちょっと下の記事で言及したことがあります。
自分だけの資産運用だったら、大した運用額でないわけですから、ここまで件数を経験できません。多分、今でも、普通に「居宅への融資」を喜んでやっていたと思います。その場合は、「どういうリスクがあるかを知らないでリスクを取り続ける」という「未知の未知」のリスクを取り続けることになるわけです。
それに対し、他の投資家様のお世話係をさせていただくことで、自分自身、このように、投資家としてのステージが加速的に上がってきました。なので、「考え方に賛同していただける少数の投資家様のポートフォリオを、自分の資産と同じ基準で運用させていただく」今のバランスは、割合、気に入っています。
この記事のまとめ
知り合いのビジネス・コンサルタントさんに聞いたところ、やはり、「投資関係の営業を長くしている不動産屋さんというのは、日本でも、大体、暇で、案件が出たときだけ電話を1、2本かけて、あとは開店休業状態」みたいな営業スタイルの会社も多いんだそうです。
いい案件は、広告やセールスマンなど経由しなくても内々で終わってしまうというのは、本当です。
「いい案件」と「そうでない案件」は、どこが一番違うかというと、「トラブルが生じにくいかどうか、見込み通りに行きそうかどうか」ということのほか、「トラブルが生じたときの対策がしっかりしてできているか」の度合いの差でしょうか。
付記 投資はリスクがあるので、よりベターな投資とはいっても、リスクがなくなるわけではありません。どのような案件にも、その案件なりのリスクがあります。商業物件には、居宅物件と違うリスク・プロフィールがあり、この記事では、その話には入りません。
国債であってすら、「将来の日本政府の信用力を前提に購入する想定」であるに過ぎず、実際には、「現在、返済のための政府財源自体が潤沢である」わけではなく、「長期的に、膨れ上がっている政府負債を減らしていく計画がちゃんとできている」とも言えません。
投資の「未知の未知」リスクをすべてなくすとか、リスクを数量化して予め明示するといったことは、不可能といっていいと私は考えていますが、知識量、経験量を増やしていくプロセス自体は大切にしています。