印象操作がウケる件! 報道されるデータの使われ方にはご注意

アメリカ不動産投資で資産倍増中ブログの中山道子です。

今日は、SNSを通して流れてきた日経の下の記事、さすがに、SNSで拡散されただけあり、アイキャッチャー的によくできていて、おもしろくて読んでしまいました。といっても、記事自体の内容が読ませた、すごい記事だ、というより、データのいじり方が、笑ってしまうので、くらいついてしまった、という趣旨です。

今日の記事は、アメリカ不動産とは関係なく、印象操作について。

専業主婦に貧困の影 夫リストラでも働かない不思議 周燕飛・JILPT主任研究員

どういう記事かというと、タイトルから推して知るべきで、データ部分については、たぶん、最初の一行、「かつて日本の標準的な家庭だった専業主婦世帯に、貧困の影が忍び寄っている。」がポイント、それをどう評価するかについては、「子育てが理由の自己都合であり、貧困でも専業主婦でいることを自ら選んでいる」(主任研究員引用)

というイメージ。

これを読んだ専業主婦の方々、さぞかし肩身が狭くなったのでは、、、

しかし、私は、世帯データに割合敏感なので、この調査(大体がところ、母体は高々2,000人に対するアンケートで、別に税務署のデータじゃない)で、「専業主婦世帯の貧困率が2011年に12%、16年に5.6%」とあるのを読んで、

つまり、専業主婦のいる家庭の貧困率は、一般の全国世帯平均より低いってことじゃん、しかも、数年で急下降してるじゃん

という感想しか持ちませんでした。日本の貧困率は、直近、15%とかですから(普通の日本人が知らない「貧困」の深刻な実態)、2016年段階で、専業主婦のいる家庭の貧困率が、5.6%といったら、その低さ、平均の3分の1くらいの勢いなんです。

貧困率の定義に多少誤差があるのかもしれませんが、奥さんが在宅の家庭は、余裕があるからそうしているという傾向が圧倒的であることを裏付けるデータだとしかいえません。

日経記事で根拠となっている調査自体を調べてみました。
平均収入は増加・高収入夫の妻の就業が一層進む「第4回(2016)子育て世帯全国調査」結果速報

直ちに気が付いたのが、日付の齟齬。この日経の記事は、2019年10月20日、このブログポストを書いている日の日付なんですが、実際に記事内で引用されているのは、最新の2019年10月発表データではなく、2016年10月に発表された同じ調査の昔の内容のほうでした。厳密には、3年前のデータ。ニュースでもなんでもないじゃないですか。

最新データが発表されたので、取材して記事にしろという指示があったが、2019年版は、内容が特に面白くないので、数年前のデータに食いついたんでしょうか、記者さん。。。

2019年の調査は、母子家庭貧困の深刻化を訴える内容で、「そういう切り口は、もう読者のほうも、飽きが来てるだろうから、つまらないですよね、デスク」みたいな?

記者も女性、取材された側の研究員も女性で、「男性都合の観点から専業主婦や女性をバッシングしている」というイメージを持たれないように、絶妙に「ダイバーシティ・カード」を使いこなしてますね。しかも、この調査を行った研究者は、外国人でもあり、「海外から見ると、日本はこう見えるんですよ」っていうサブリミナルなメッセージ付きですか?

実態は、専業主婦の割合は、この10年で大きく減った、理由は、女性の社会進出を後押しするアベノミクスの効果もあり、余裕のない専業主婦家庭では、奥さんが働きに出るようになったから。そのため、女性の就業率は今7割で、米国を超えました。それでも、奥さんが専業主婦を続けられている人の家庭というのは、普通に比べ、余裕があることが多い、だから、2011年と比べ、2016年には、専業主婦家庭の数も減ったし、と同時に、専業主婦家庭の貧困率自体が、数年で半減した、そういう流れですよね。

つまり、実態は、「記事が印象付けようとしている状況」とは真逆。働ける女性は相当、働きに出ている、あと残っている格差は、ほぼ、パートタイム等非正規と正社員の待遇格差の問題。

それなのに、貧困が自己責任で、労働政策や経済動向は全く関係ないよ、というメッセージも強力なんですけど、この記事、一粒で、どれくらいおいしいんでしょうか。完全脱帽、記者さんの出世を心よりお祈りしたいです。

英語で、見出しでそそる記事や見出しのことを、CLICKBAIT(クリックしてもらえるような餌」という言い方をしますが、新聞社さんも、いろいろ頭をひねらせているんだろうなと、感心させられた今日です。日経さんは、今後も、バランスよくいろいろな経済記事を今後もぜひよろしくです。

いや、この記事は、あまりにエンターテインメントバリューが高いので、ちょっと茶化しちゃいましたが、ほんと、データを読む側は、個々の報道やデータをあまりうのみにしないこと、気になるデータは、自分で、まずは、調べてみることですね。

この記事の場合は、貧困率のデータを覚えていたんで、何かがおかしいと、すぐわかりましたが、不案内な分野でこんな調子のフェイク報道されちゃったら、誰でも、丸め込まれてしまいますよね。

私ももっと精進しようと思います。