サンフランシスコの不動産は、東京より安いのか?

 

 

アメリカ不動産投資で資産倍増中ブログの中山道子です。

この記事の概要

アメリカの不動産価格は、賃金が高いため、割高が当然であり、むしろ、賃金比では割安であるという主張があります。この考え方からすると、米国投資をすることに、大きなうまみとでもいうものは、あるのでしょうか?

日本語のメディアをネットで追う限り、最近は、少子化や人口減少に対する危機感が、前に比べ、さらに高まっているようですね。

IMFによると、日本の長期人口減少の結果、GDPは、毎年、額面で、1%くらいの影響を受けるはず、受けるだろうということのようです。

How Japan’s ageing population is shrinking GDP

実質GDP換算で、0.6%台くらいのイメージ。低成長が続く昨今、先進国が、毎年、ニュートラルにしているだけで、これだけの自然減少を経験するというのは、実際に、大変なことです。

この長期トレンドは、もちろん、これまでにも分かっていました。

私が、日本に住むのをやめたのは、子供が小学生になった2011年でした。当時、人口問題研究所の予測を見て、子供が大人になった段階で、高齢者の比率が大変高くなることを知り、「日本で育てたら、子供の将来は暗い」と思ったのが、日本を出た理由でした。


「過半数が50歳以上」に──2023年のニッポン、一体どうなる?

2023年に人口の過半数が50歳以上というのは、10年前の予測を超えるペース。あの決断は正しかったと、今、思います。

これに加えて、最近のトレンドとしては、日本人の所得が上がらないことを取り上げる言説が見受けられます。それだって、1990年台から、長期的に、バブル時以降、なにをやっても戻らないということで、別段、新しい真実が発覚したということはないんですが、マスコミのメディア・サイクルなんでしょうか。

jiji.com より

というわけで、日経新聞が最近掲載した下の記事に対して、大きな波紋があったと、これも、ネット経由ですが、読みました。

「米国では年収1400万円は低所得」

年収1,400万は、米国でも、普通の世帯の中央値の二倍なので、低所得ということは、全くありませんが、ベイエリアや東部では、確かに、都市部で家族が文化的な持ち家生活をするための年収としては、足りません。シリーズ「安い日本」の看板記事としてのインパクトのある記事タイトルが、狙い通りに大波紋を呼んだようです。

とここまでが前置きで、ここからが、今日の記事の本題。

そんな「低所得の国」日本からすると、米国不動産は、本当に割高に感じますが、UBSの指摘によると、実は、米国主要都市の住宅は、サンフランシスコも、ニューヨークも、東京より安いんだそうで。

どういうわけで、そういう話になるのかというと、それは、

◆ 該当都市に勤務する熟練労働者の年収
◆ 該当都市近郊で60平方FTのマンション価格

を比べ、年収の何倍で、典型的なマンションが買えるかを表にすると、なんと、東京の場合、熟練労働者の年収の10数倍の価格になる、それに対し、サンフランシスコの例を取ると、9年位でマンションが買える、という話です。

こういうデータを持ってきて、サンフランシスコは、香港、パリどころか、アムステルダムより買いやすい、サンフランシスコは、国際的に見て、格安、買いだ!と主張しているアメリカ人のブログも読みました。

サンフランシスコでは、熟練労働者の年収が高く、東京や香港のような都市では安いという事実は、確かでしょう。

しかし、それでは、じゃあ、サンフランシスコのほうが本当に、お買い得なのでしょうか。

私がよく知っている東京についてだけ、言及してみますが、どう考えても、東京の物件が、賃金に比して高いのは、日本の金利が低いから。2020年のウルトラ低金利の今でも、米国で一番安い住宅ローンは、30年固定であれば、今、3.65%位。

それに対し、日本は、自宅の全期間固定ローンは、1%で組めるわけですから、比べ物になりません。

つまり、毎月の支払いで見れば、東京のほうが、高い物件を買い、返済を行うことが、より容易なわけです。だからこそ、その金利が安い分、割高価格、価格上昇が可能だったとみるのが正しいのではないでしょうか。

この他、固定資産税、保険、管理組合といった固定コストも管理会社も日本のほうが安いですし、修理代も、たぶん、同様でしょう。

不動産価格の国際比較が一律難しいのは、こういった地域性の違いを勘案するのが、難しいから。サンフランシスコの不動産が、地元のアッパー層の賃金に比して割安であるからといって、割安感があるということにはならないでしょう。

最後に、それでは、やはり、日本の不動産投資家は、低金利が恒常的な、恵まれた日本でのみ投資を続けるべきなのでしょうか?

私は、お子さんがいない方、日本の生活が好きな方には、ずばり、海外進出する必要はないと毎回申し上げています。

海外に行くということは、新規起業となるわけで、「ぬるま湯からあえて熱湯に飛び込む覚悟」が必要な行動であり、もう中年の方、将来の成長が特に必要ない方にとっては、不要なリスクテイクであるからです。

しかし、まだ若い方、または、お子さんのために、将来の展望が必要だと思われる場合は、アウエーな環境で、苦労をすることには、大いに意味があります。

決定的な理由が、まさに、日本の人口構成。

日本に住み続けるだけで、お子さん世代は、なにをやっても、バブル時の賃金水準に遠く及ばない可能性が続きそうです。上の賃金表には、インフレを加味してありませんので、普通に賃金上昇やインフレがある国と比べるとどんどん見劣りすることになり、海外進出はますます割高に感じることになり、難しくなっていく一方でしょう。しかも、若年層は、今後、社会保障への負担をどんどん増やすことになります。

不動産についてみても、人口、特に生産年齢の人口減少や、それに伴うGDPの自然減少に打ち勝てなければ、そういう前提の中、不動産価格や賃貸市場だけが毎年善戦するというシナリオには、統計的に見て、少し無理があるような気がします。現在、ウルトラ低金利で融資を受け、大きいキャッシュフローを取る日本式投資手法が、将来、元本返済で躓く可能性も、地方では、ゼロではないかもしれませんね。

この記事の結論

日本の万年低金利政策や周辺業界の人件費等の低さを前提にすれば、サンフランシスコの不動産が、東京より安いということはないと感じます。アメリカは、経費も金利も高いので、「米国不動産は、現地の所得に比して割安だから、対米不動産投資をするべき」とは言えません。

ですが、賃金や将来の成長展望には確実に大きな開きがあり、政策でこの状況を改善する可能性はある程度あるものの、個人単位の長期展望としては、今後も、日本でこのまま、不動産投資を続けることは、やはり、今後難しくなるという前提で行動していく必要があると考えられます。