過去6年年率20%の値上がり! アメリカ不動産が熱すぎる! ラスベガス編

「アメリカ不動産投資で資産倍増中!」ブログの中山道子です。

今持っている賃貸物件にオファーが来たら、どう評価するか。ラスベガスに物件を所有されているお客様とのやり取りをご紹介します。

基本、今、いい賃貸物件を持っている方は、売り時ではないでしょう。但し、管理に手こずっている物件は、手間に見合わないので、今売りましょう。

ラスベガスで私の御紹介で物件を買われた A 様から、今週、物件についてのご相談がありました。最初にお知り合いになったときには、東京で独身でおいででしたが、その後、結婚され、現在、ウエストコーストに在住中。今年お母さんになられました。

該当物件は、当時のレアルターさんがそのまま管理をしてくれています。このレアルターさんも、私が最初知り合いになった当初は、ご主人を亡くされたシングルマザーでしたが、ご再婚され、お嬢さんはもう大学生。

時が立つのは早いですね。

さて、ご相談の内容は、こんな感じです。

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さて、ひとつご相談なのですが、LVの家について売りませんかというお話を頂いています。

確か2013年頃に80kで現金購入した物件で、1人の借主にずっと借りて頂いており、レントも遅れる事なく、少しの修繕で、問題なく運用できています。

<レアルターさん>のお蔭もあり、ストレスの無い物件のため売る事は全然考えていませんでした。

子供が小学生に入るタイミングで、学校区を考えた引越しをしたいと思っていますが、その時もしマーケットが下がるような事があれば購入も考えますが、それまで現金が必要ないような状況です。

今回のお話は、95kでas isで良いとの事。

中山さんはどのように思われるでしょうか。お時間のあります時にでも、アドバイス頂ければ幸いです。

残暑がまだ続きますが、どうぞご自愛ください。

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正直、物件の詳細は覚えていなかったので、当時のファイルを取り出しました。といってもすべてデジタルですが。

時が立つのは、早い、早すぎる、、、

今回の物件概要

購入日時 2013年11月
購入価格 8万ドル
物件概要 1994年築、1,008SQFT、2BR2BA、木造(スタッコ塗り)、賃貸中
リターン 修理なし、経費後毎月600ドルほどの手残りということなので、大体ネットで9%!

減価償却 米国では、一律27年半に渡り、TAX BRACKET を前提に償却します。
     上もの比率は75%なので日本在住者なら、5年で割れば、1万2,000ドル

当時の写真が、MLS掲載からいくつか残っています。

写真を見ると、キッチンカウンターやバスルームバニティは、大理石で、標準仕様より上ランク。これは、ラッキーです。また、この物件、前のオーナーは、よほどのきれい好きだったのか、ペットオーナーだったのか、全タイルという珍しい物件。好き嫌いはありますが、ベッドルームがタイルでOKという人なら、掃除が楽ですし、こちらも、テナントがでていった後も、修理にカーペット敷き直しという手間がありません。タイル自体はそれほど高くないのですが、施工がカーペットより難しく、デフォルトでこういうスタイルを選ぶと、カーペットを敷くより、手間やコストがかかります。しかし、その恩恵は長く続きますね。

流石に私の見込んだ現地のアルターさんは、目の付け所がいいです。

仲介経験が豊富なレアルターさんでも、物件の修理見積もりが、ぱっと頭に入っている人は少ないものですが、彼女は、投資家向けのビジネスをやっていて、管理経験も豊富なため、物件を見れば、瞬時に賃料とか修理見積もりデータをはじき出せる得難い人材。

ということで、今回、引き続き、物件を管理してくれていたそのレアルターさんから「電話で、現金決済、現状有姿( as is )のオファーが入りましたが、どうされますか?」という問い合わせがあり、私の方に、「どう思われますか?」というお問い合わせとなった次第です。

検討方法は、下のような感じです。

 

《1、マーケットの動向を調べる》

早速、ZILLOW で該当エリアのマーケット動向を確認しましたところ、去年1年の値上がりは、18.3%、これからの1年で7.5%の値上がりが予測されるとあります。

ジローは、下に述べますが、個別データは正確性に限界がありますが、こういう統計処理に基づく傾向分析は、割合、信頼できると思われているようです。

値上がりについては、一戸建ても含めたエリア予測そのままの7.5%そのものが、向こう1年で、本当に真に受けられるかはわかりませんが、少なくとも、直近の過去についてのこのグラフを見ると、2012年からの6年で、流通するコンドミニアムの平均価格は3倍になっていますので、年率換算すると、年率で20%が実現したことになります。

これから1年で、それが7%になるとして、この方は、仕入れ値が低いので、買った価格に対する値上がり率は更に高いわけですから、こんなオイシイ話はなかなかないですね。

一応、2013年当時からエリアが変わっている可能性も想定し、最新のエリア貧困率や所得中央値も調べましたが、全米平均相当でした。

ベガス自体が、観光業中心の都市で、高スキル産業が多いというわけでもなく、そもそも、それほど所得が高いエリアではないので、ベガス内では、アッパーに入るといっていいでしょう。

ちなみに、私がラスベガスが好きな理由はたくさんありますが、固定資産税の税率もその一つ。カルフォルニア並みの税率で、しかも、物件価格自体がぐっと安いので、負担する税額も、安いのも魅力です。

その他の理由としては、乾燥していて物件のメンテが楽なこと(木造物件の最大の敵は水ですので)、物件管理が楽で、エリア全体が新しく、治安もいいために、保険の料率が低いこと(但し地震オプションは高く付きます)、物件価格が安いこと、その割には、テナント管理が楽で、というのも、オーナーの権利が相当強いこと、などがあげられます。

 

《2,該当物件の近隣類似物件売買価格を調べる》

ラスベガスは、実は近隣物件の COMPARABLES が大変調べやすいエリアで、私もセミナーでは、よくハワイとともにサーチ例として使っていました。

同じ建物内で、去年秋に同サイズの物件が売れた時の価格がすぐ見つかりました。12万7,000ドルです。

オファーされた9万ドルという数字、やはり同じ建物内で似た価格で売れた物件を調べたところ、最近、504SQFTの1BRが、8万9,000ドルで売れていたことがわかりました。

ZILLOW のような、一般向けのサイトは、あくまで一般流通情報を取り入れた処理サイト。関係者の自主報告制度もあり、関係者が、不正確な自主報告をする例まで報道されています。そのため、第一次ソースのデータを使いました。

市場はこの半年でも更にヒートアップしていますので、この物件を空室即入居可能状態で売るとしたら、やはり、13万ドル以上だと思われます。ZILLOW の ZESTIMATE は、14万ドル台をつけています。

ちなみに、日本人投資家にも流行のテキサスは、州独自の所有権に関しての哲学で、「売買価格は不開示」が原則。テキサスで物件を買うときは、ご注意ください。

 

《3,今回のオファーを考える》

今回、ワンベッドルームサイズの物件の一般流通価格である9万5,000ドルのキャッシュオファー。売り主としては、ちょっとウケますね。

ただ、ディスカウントについて、通常、このサイズの物件(10万ドル台)であれば、一般論として、以下の考察はありえます。数字のばらつきは、すべて、「市場による」から。どうしても、アバウトになってしまうのですが、ご自身の市場の動向に当てはめて考えてみてください。

  • テナント居住中の物件であること

一番いい値がつくのは、実需組のオファー。そのため、空室で即入居可能が望ましく、テナント付きの物件を買ってくれるのは、通常は投資家だけ。

投資家であっても、前のテナントをそのまま受け入れることを嫌がる投資家もいます。自分が審査をしていない場合、相手の属性等の詳細がわからず、苦労することもありうるからです。

ましてや、普通の人が、自宅用に買うなら、最大半年と言った期間にわたり、テナントが出ていくのを待つわけですから、即入居可能物件と比べれば、魅力が薄れます。

さらに、売る側に立てば、まず、テナントに契約更新しない旨を告知、契約を満了させ、テナントが出ていった後に、掲載し、オファーを待つとなると、手直し後、数ヶ月、無収入で物件を維持しなければいけません。

その間の手間を考えれば、売り手市場でないふつうのニュートラルな市場であれば、10万ドルの物件に付き、1ヶ月1,000ドル相当のプレミアムがつくくらいは、覚悟するべきな気がします。

  • 現状有姿で、別途建物検査条件なし。

これは、エリアによりますが、ベガスのような乾燥しているエリアでは、物件はそれほど傷みません。特に、マンションは、外壁は管理組合の責任。1994年築のマンションでしたら、深刻な傷は考えにくく、ふつうにカーペットとペンキだけでしょう。後は、稀に生じうる、水道管の故障です。

給水器やエアコンの寿命なんかは、どの段階で買ったかで、定期的に回ってくるコストですので、計算に入れる必要はないでしょう。なので、現状有姿でとくれば、まあ、この物件なら、ペンキとカーペットを新しくするコストとして、一般には、1,000SQFT台なら、5,000ドルの割引でしょうか。

ちなみに、降水量が多く、物件管理の手間がかかり、より古い物件が多い中西部などのエリアでは、現状有姿でディスカウント購入するというのは、修理対策がキッチリできるベテランの現地組のすることだと思います。

  • 現金オファーであること

融資が出なければ買わないというオファーだと、決済に、30日から45日かかりますし、その段階で、結局融資が通らなかったという可能性もありえます。

キャッシュオファーであれば、2週間で決済できますので、そうした手間の差を考えれば、やはり、数カ月の確実性を買うために、数千ドルの割引はアリ。

ただ、これは市場がどれだけ加熱しているかによります。サンフランシスコで、良い学区の物件を買うなら、掲載価格より上のキャッシュオファーをしてようやく売り主の合意が取れるといった状況もあるでしょう。

そもそも、余裕があれば、別に現金で割安で売らなくてもいいという考え方もあるわけですが、次に別の投資を考えているなら、次で逸失利益が生じうる可能性を考えれば、そちらの便宜を優先したほうがいいでしょう。

  • 売り主の事情

これは本当にケースバイケースですが、このブログを読んでくださる方は、私のこのお客様同様、資金には余裕があり、「別に今売らないといけないわけではない」「投資用の資金、遊休資金である」ということが多いでしょう。

この投資家様は、過去の購入プライスがベストタイミングだったため、この市場の本当にボトムがゲットできました。

何年も持っていたかいがあって、家賃も、今、購入価格から考えれば、ネットで9%と、相当なリターンをはじき出しており、今後も順当な値上がりが予測できます。テナントが購入当時、2014年から4年間トラブルフリーでいてくれるというのは、やはりエリアがよいからでしょう。

 

《総合判断に基づく結論》

以上考えると、オーナーとして、資金的に困っているならともかく、簡単に購入できるお手頃価格で、こういう欠点のない投資物件をいまどき見つけようとしても、もうほぼ不可能です。10万ドルを頭金にして50万ドルの物件を買うという話でも、無理。

私の周囲の賃貸経営志向の投資家様たちは、1年もの時間をかけて何度もオファーをしては競り負けたりを繰り返したりと、大変な労力をかけて遠方に物件を購入されています。

そして、こういう「購入や管理にかかるマイタイム」は、無料ではなく、有料と考えるべき。物件探しをしている時間に働くこともできますし、別の投資をすることもできるわけで、その分の逸失利益があります。

実際、高額所得者様皆さんが私のパッシブ案件に集中してくださる理由は、「減価償却狙いの賃貸経営に乗り出して、時間を使い、面倒やリスクを抱え込むのがいやだから」につきます。

以上全てを分析すると、この物件をそのままキャッシュで、テナント付きで、今、現状有姿で売るというなら、12万ドルなら検討に値するオファーですが、9万5,000ドルって、いくらなんでも、、、

まあ、毎日何十人に、こういうオファーの電話をしていれば、数ヶ月に1人くらい、「お金に困っているから、じゃあ、10万ドルなら」とか言ってくる人がいるのかもしれません。逆に、ふつうのパフォーマンスを上回る投資をしたければ、それくらいの手間や厚顔ぶりが必要だということです。

以上、いくつかのポイントを前提に、お客様には、

「そんなオファーは無視です」

というお返事を書きました。

投資家様からは、下のお返事を頂戴しました。

中山様

お忙しいにもかかわらず、この短時間で市場を調べて頂き、ご丁寧に返信して頂けるとは、感謝の言葉しかありません。本当にありがとうございます。

やはり市場はかなりホットなんですね。8万が13万になるとは。

現状有姿や、テナント付き、現金支払いだとそれぞれ少しずつ割引される事も承知しました。

やはり今回は売らずにもう少し保有し続けようと思っています。

経費を差し引くと月々600ドルほどの小さい物件ですが、このoperation gainも地味に嬉しい物件なので。

再度、アドバイス頂き本当にありがとうございました。
また何かありましたら、相談させてください。

 

最後に、今回は、うまく行った投資例を取り上げましたが、正直なところ、私自身、過去にお勧めした物件が一様に良い成績を出せたということではありません。

似た時期に投資家様が購入された物件を「これこれのタイミング、売りましょう」とお勧めすることも多いです。

前、シカゴで似た予算で別の投資家様が購入されていた物件は、当初から、この物件よりキャッシュフローが多かったのですが、反面、土地柄で、テナント管理には手こずった他、シカゴの値上がり動向はすでに頭打ちだったので、去年、「売って短期融資案件に行きしょう」とご案内し、無事、キャピタルゲインを確定し、短期融資投資の方に繰り入れていただきました。

その時の市場でベストを尽くすつもりはあっても、その後、実際にどうなるかといえば、やはり、正直言って、全方向にリスックヘッジ的な目配りするというのは、大変、難しいもので、このベガスの物件も、「腕しだい」というより、まあ、多少のスキルはもちろん前提なのですが、それでも、それに加えて幸運だったといっていいのだと思います。

ぶっちゃけ、「この記事に掲載されているベガス物件のような物件ならいつでも買いたい」と思う方は多いでしょうが、「もう無理です」としか言えません。いま買うなら、この物件は、最低13万ドル、リターンオンキャッシュは最高5.5%で、来年の値上がり見込みが本当に7%台だったとしても、それは、購入決済手数料をカバーするかどうかという額。

しかも、「今の相場でキャッシュオンキャッシュリターンが5.5%ならすごくいいよね。自分は日本在住だから、減価償却も取れるし、じゃあ、譲って13万ドルキャッシュで手を打つから、こういうの、持ってきてくれればいつでも買うよ!」といわれても、それでも、売り物件がないわけです。

例えば、このマンションのある郵便番号で、15万ドル以下の物件を探すと、2018年8月27日に売りに出されているのは14万8,000ドル、707SQFTのワンベッドルームひとつだけでした。

2018年の米国不動産市場、that ship has sailed (購入というタイミングは、逸した)なのです。

私も米国不動産市場は、2002年からウオッチングしていますが、やはり物件購入というのは、毎回毎回が大きなリスクであるのみならず、その時の波に大きく左右され、自分ではコントロール出来ない要素が多すぎるというのが、数を経験してきた私の実感です。

2011年から13年位までは、物件は買い時だと感じていましたが、それ以降、しばらく前から、値段が見合わなくなってきたと感じ、自分の投資も、投資家様へのお勧めも、「短期投資」のみにしてしまいました。

自分が過去に扱った数多くの物件取引の経験を前提として他人の不動産投資を評価する場合、より客観的になりやすく、戦績を安定・標準化させることがぐっと容易になりました。

今後、買い時が来れば、絶対もう買いに関与しないと決めたいうことではありませんが、現状では、誰にでも買えるような物件というのは、小規模投資家の期待値を到底満たせないのです。

ちなみに、このベガスのコンドを所有されているお客様も、私の短期融資案件に、並行して投資をしてくださっています。そちらは、現在、修理が終わり、FOR SALE 掲載間近で、そちらも、回収後、再投資をお任せいただけるように、お願いするつもりです。A 様、私こそこれからも宜しくお願いいたします。

この記事のまとめ

ラスベガス不動産市場は、2011年から13年がボトムで、今市場は完全な売り手市場に変貌した。賃料も上がっており、新規参入は大変難しい。

現在、米国の不動産市場はこうした市場が多く、すでに良い物件を保有している方は、まだホールディングしていれば、更にメリットがあるはず。

今エントリーしようとしても、労多く、メリットは少ないことを覚悟するべき。私自身の投資家としての実感です。