米国に投資用の LLC を設立する段取りは、銀行口座開設の旅程から逆算します

アメリカ不動産投資で資産倍増中!ブログ管理人の中山道子です。

この記事の概要

アメリカ在住でない方でも、米国に、投資用に LLC を設立することは可能です。米国外居住者が LLC を設立する場合、LLC が認められるための要件の一つとして、LLC 名義で作成した銀行口座が必要になります。

米国以外の国に居住している方の場合、銀行口座開設のためだけに、米国に旅行される必要があります。事前に納税者番号を取得しておく必要もありますので、段取りに気をつけましょう。

アメリカ不動産投資の醍醐味は、様々。

A) 発展途上国と異なり、取引の透明性や安全性が高い、
B)停滞が続く日本と異なり、国に勢いがあり、不動産に長期的な資産性が期待できる、
C)経済第2位の中国と異なり、米ドルが依然、世界的な基幹通貨であり続ける可能性が高い、

などが思いつきます。

私自身、米国で不動産投資に着手してから15年、投資収益で生計を立てています。

このブログは、投資家としての自分の過去の失敗などに照らし、現役投資家の目線で書いていますので、「アメリカ不動産」・「海外投資」、「資産形成」、「リスク分散」、「アーリー・リタイヤ」などに興味がある方は、無料メルマガへのご登録もおすすめします。

この記事は、こんな米国での投資を進めてきて、「そろそろ、会社名義に」という方向けです。米国在住者にとっては、段取りはそれほど重要ではありませんが、海外居住者が、LLC 設立をする場合は、旅行をする必要がありますので、事前の計画が必要です。

LLC 設立のタイムライン(外国人向け) はプランニングが必要

1) LLC を設立する段取り(代行業者に依頼。海外から遠隔で可能) 所要日数⇒数日間
2) LLC の納税者番号取得代行依頼(代行業者に依頼。海外から遠隔で可能) 所要日数⇒1)と同時に可能
3) 合衆国内国歳入庁( IRS )が納税者番号( EIN )を発行 所要日数⇒2週間
4) 渡米、銀行口座開設 納税者番号が無い限り開設できないのでご注意

★ 納税者番号発行申請の方法はいくつもあるので、詳細は下を参照。

簡単には、以上の通り。

多少、ご説明しますと、海外居住者にとっても、段取りは、「人に頼めば簡単」なのですが、昨今のテロリズム対策等に鑑み、銀行口座開設だけは、ご自身が直接される必要があります。

一時は、業者さんに紹介してもらい、代行で口座を開設することも可能でした。私の顧客様でも、そのような段取りをお手伝いしたことはあります。

しかし、現在は、御本人が行かれることが必要です。

もちろん、忙しければ、今でも、委任状を用意すれば、第三者に代行をしてもらうことは可能ですが、その場合、窓口になってくれる人が、LLC 定款上で役職を持っている必要があり、ひいては、該当 LLC の銀行口座へのアクセス権を自動的に与えられることになるため、横領の可能性がゼロではありません。

家族か、顧問弁護士への依頼以外は、これだけの権限を他人に与えることは、現実的ではありませんね。私だったら、弁護士であっても、頼むのは嫌です。

ということで、普通は、本人渡航が必要です。

個人用の銀行口座開設なら、日本在住者様の場合、三菱UFJ 銀行を経由して、カリフォルニアのユニオン・バンクで郵送手配が可能であるのですが、ユニオン・バンクも、法人口座開設は、個人口座をすでにお持ちの方であっても、窓口受付オンリーです。

段取り上、一番気をつけなければいけないのは、渡航前に、アメリカ合衆国内国歳入庁から、納税者番号を取得しておく必要があること。LLC の納税者番号のことは、

EIN NUMBER (employer identification number)

と呼ばれます。

普通は、投資用の一人 LLC では、人を雇う必要はないので、EMPLOYER IDENTIFICATION NUMBER(雇用者ID番号) といわれるとぎょっとしますが、単に、会社の納税者番号ということで、こう呼ばれているのです。もちろん、実際にスモールビジネスを開始するため、人を雇う場合に、使う事ができるわけです。

LLC は、設立するだけ、納税者番号を取得するだけ、申告するだけでは、フルに機能することを認められていません。米国で、個人名義と別の専用の銀行口座開設手配が必要です。

渡米の際には、LLC を設立した州で銀行口座開設をする必要があるわけではなく、例えば、

「テキサスに不動産を購入し、テキサス州で設立した LLC 名義で物件を所有するが、今度、ハワイに家族旅行のついでに、ハワイで、銀行口座を開設する」

ということで問題ありません。

銀行口座がハワイの銀行の支店での開設であっても、LLC は、この場合、設立州、投資物件所在州であるテキサスが営業拠点であることには変わりないのです。

LLC の納税者番号取得にかかる時間についての IRS の回答

回答の直接リンク

★ オンラインで申請すれば、すぐ発行できる。
★ 米国人でない場合は、オンラインは利用できず、最短は、ホットラインに電話をする必要がある。
★ FAX 申請の場合は、4日から1週間
★ 郵送申請の場合は、4,5週間

注意点として、オンライン申請には、米国の SSN ナンバーが必要です。一般外国人は、専用ホットラインを利用するようにという注意書きがあります。

ご自身で外国人用のホットラインにかける場合は、日本時間の夜中に、担当者が出てくれるまで、何時間でも、電話口で待っているイメージでいてください。業者さんの代行を頼む場合は、電話ではなく、ファックス手配での申請代行になると思います。

上の IRS のサイトの説明だけではよくわからないところもあるので、業者さんに、「現在なら、自分の場合、どれくらいの時間がかかりますか?」ということを確認しながら旅行の段取りをするのがベストです。

上に述べたように、IRS のサイトには、ファックスを受けたら、最短4営業日で番号発行と書いてある箇所もありますが、なんと言ってもお役所なので、私の経験では、そこは、真に受けるところではないのです。

最後に私があるお客様のお手伝いをしたときは、2017年の10月でしたが、当方から申請のファックスを入れてから、IRS の回答ファックスが来るまで、10日かかりました。

ですから、日数は、多めに見積もり、「覚悟したより早かった」と喜ぶくらいの予定を作っておくほうがストレスがありません。

2018年12月に連邦政府関係当局が予算問題を巡って閉鎖したときは、「法人を設立したのに、営業のための納税者番号が取得できず、集金のための銀行口座が開設できない!」というアメリカ人の悲痛なインタビューが報道番組で取り上げられていました。

流石にこういうケースは稀でしょうが、普段、仕事がある人が、海外渡航の段取りをする場合は、「口座開設を目的として、旅行を予定してしまったが、納税者番号がまだ届かない!」といった状況だと、困ります。納税者番号の取得申請は、普通に考えれば、旅程の1ヶ月位前までに済ませておくことを目標と考える必要があるのではないでしょうか。

さて、晴れて、LLC を登録し、IRS から納税者番号が来たとします。渡航の際には、可能であれば、事前に、該当銀行に、どんな書類が必要かを聞いておくことができれば、一番いいのですが、一般には、下の一式を持っていく必要があります。身分証明証以外は、いずれも、原本である必要はなく、PDF 等でやり取りした書類のプリントアウトで問題ありません。

米国 LLC 銀行口座開設のための渡航にあたって用意する書類(外国人向け)

1) パスポート。米国の自動車運転免許証やSSN ナンバーがある方は合わせてお持ちください。
2) LLC 設立の定款。 通常、Operating Agreement と呼ばれています。
3) LLC 設立州ウエブサイト上で、LLC が登録されていることが確認できるページのプリントアウト。
4) EIN ナンバー。IRS から帰ってくる FAX のデジタルコピーのプリントアウト。

3つめは、銀行側でも確認できますので、よくわからなければ、多分、設立州をいえば、担当者がやってくれると思います。

★ 具体的には、必ず銀行で、最新情報を直接聞かれてください。出直しする必要がある可能性がありますので、銀行来訪予定日の翌日に、半日、予備の時間を作っておくことをお勧めします。

「一人 LLC で経営者である私は、海外に居住しています」と申し出ても、連絡先は、米国の営業住所を利用する必要があります。この営業住所は、RESIDENT AGENT(営業住所を貸す業者さん)の提供してくれる住所を使うわけです。

おいおい、気付け住所には、新しいデビットカードやオンラインのパスワードなどが送られてくることになります。

貸し住所業者さんには、それらを国際郵送しなおしてもらったり、書類を開封して PDF 形式でメールしてもらったりする必要がありますので、信頼できるかわからないところは使わないことが無難です。私が相談を受けるときは、LLC 設立代行や貸し住所利用にあたっては、私の CPA の事務所を紹介しています。

さて、銀行での口座開設の当日は、銀行での滞在時間としては、最大3時間を予定してください。

銀行側のほうで、色々なマニュアルがあるらしく、世間話的な部分も含めて、審査の対象になります。書類の確認やプリントアウト、裏であちらがやるチェック、その上で、どういう口座を開設し、どういうサービスを必要とするかといったコンサルティングもあるため、心配するようなことでありませんが、結局、結構な時間がかかります。

2019年現在のところ、最初の預金額は、100ドルとか数百ドルあれば十分で、「どういうビジネスですか」ということは、根掘り葉掘り聞かれますが、他方で、資金源を証明する必要などは、ありません。

注意点として、銀行のオンライン送金サービスは、口座開設と別に、提供されている送金サービス商品から自分の希望するものを選び、別途、口座開設と別の書類にサインをする必要があるので、これをせずに帰国してはいけません。

また、そもそも、銀行によっては、「オンライン送金サービス」自体をやっていないところがあります。

例えば、最大手の一つ、ウエルズ・ファーゴは、基本、送金は、支店に実際に行って手配をする必要があります。バンク・オブ・アメリカも大差なかったような覚えがあります。これらは、結局、銀行のセキュリティ対策の一環としての自主ポリシーなのでしょう。

なので、日本在住者が、LLC 口座を開設する際には、必ず、「支店に行かないと送金ができないポリシーの銀行」ではなく、オンライン送金サービスが可能な銀行を選ぶ必要があります。また、オンライン送金サービスが可能な銀行であっても、「自分名義の他の金融機関へは自由だが、他人名義の口座への振込はできません、手続きがずっと煩雑です」といったポリシーのところもあります。

銀行ではありませんが、私は、イー・トレード証券の口座を持っていますところ、ここは、「私自身の名義の口座への送金」は簡単なのですが、「米国内の第三者口座、例えば不動産決済代行会社への送金手配」は、公証した書類を実際に郵送しないと、対応してくれません。不動産決済にありがちな「すわ、今週中に、あそこに送金!」ということができないので、そういう目的に使おうとすると、大変不便です。

また、金融機関によっては、「口座にいくら資金があろうと、1日に送金できる金額に制限がある」という形で、セキュリティ対策をしているところもあります。

そんな中、私の知っている範囲では、シティーバンクなら、金額にかかわらず、第三者にもスピーディーにネット送金ができますので、よくわからなければ、まずは、シティーバンクをあたって見られることをお勧めします。また、ユニオン・バンクも、支店がカルフォルニアにしか無い反面、日本人には便利な銀行だと思います。

注意点として、一番人気のハワイには、ファースト・ハワイアンなど、日本人向けサービスを提供している地元銀行がいろいろあるかと思いますが、たしか、この「オンライン上のスピーディな送金」ができるところばかりではなかったと思います。

なので、ハワイの銀行から融資を受けて物件を購入するといった場合、そちらがメインバンクになるかとは思いますが、オンライン送金手配を自由にするためには、ハワイに行った際に、別途、オンライン送金目的のために、シティなどの他の銀行の口座を、合わせて作っておくことも検討しましょう。

最後に、2019年1月現在、シティーバンクで法人口座を開設するに当たり、法人の納税者番号(EIN)があれば、経営者の納税者番号(ITIN か SSN)は不要と聞いていますが、いずれかの段階で、個人としての納税者番号取得の手配もする必要があるのではないかと思います。

この記事のまとめ

外国人でも、米国で、「一人 LLC 」を設立することはできますが、段取りは、設立のみならず、納税者番号取得と、銀行口座開設という3点セットで考えてください。

この記事では、米国に居住していない投資家用の LLC 口座開設段取りのご説明をしました。

★ 米国投資のための LLC 用の銀行口座開設手配は、実際に渡航が必要です。
★ 納税者番号取得は歳入庁待ちです。設立手続きは、渡航前に余裕を持って準備を開始しましょう。
★ 渡航時には、銀行で口座開設のため、順番待ちも含めると、最大、合計で3時間過ごす覚悟でいてください。
★ 書類が足りない時、あるいは別の銀行を回る可能性を前提に、翌日も時間的余裕を作っておきます。
★ 外国人用の銀行は、オンライン送金が自由なところを選び、必ずその手続きをしてから帰ります。
★ 可能であれば、渡航先で、複数の金融機関をリストアップしておき、行った段階で、自分の目的(オンライン送金機能)に合わない事がわかったら、別の金融機関での問い合わせをしてみる覚悟をしておきましょう。

この記事は、2019年1月30日に作成されました。最新情報は、ご自身で、直接、LLC 起業支援業者さんや、該当金融機関にご確認されることをお勧めします。