ポピュリズムの台頭が米国投資を脅かす 「ふたつの米国」に気をつけろ!

アメリカ不動産投資で資産倍増中!ブログの中山道子です。

トランプ大統領が選出されてから、米国でも、ポピュリズムの台頭という厄介な問題について、多くの考察が行われてきました。

私自身、米国不動産を15年にわたりウオッチングしていますが、現在、米国投資をする際に、特に気をつけなければいけないのが、不穏な空気のもとである貧富の差の問題。

この記事のポイント

日本人が米国不動産投資に着手するに当たり、貧困エリア、成長機運が無いところに物件を買ってしまうケースがあとを絶ちません。

日本から見ると米国は、今、大変成長しているように見えますが、実際の米国は、ここ数十年の間に、「成長している米国」と「取り残されていく米国」という2つのエリアにきれいに分かれてしまっており、後者に足を突っ込んでしまうと、大変なことになります。

この記事では、まず、米国経済の格差問題と、そのことが米国の長期成長に対して、マイナスの影響を及ぼし始めていると思われる状況を取り上げます。

その分析をもとに、遠隔投資家が、不用意に、「取り残されていく米国」への長期投資に着手してしまうことへの警鐘を鳴らします。

現在、米国では、国民総所得の半分が、トップ10%に行きます。資産ベースで見ると、77%がこのトップ10%所有。

別の言い方をすると、人口9割の総資産保有額は、トップ0.1%と同等なんだそうで、下のグラフは、この貧富の格差拡大を歴史的に見ているところが重要。

上の表にあるように、歴史的に見ると、これは、「1937年という過去最大の格差が生じた年と同じ数字」に戻ってしまったということ、1980年前後以降、格差拡大傾向に歯止めが止まらない、ということなのだそうです。

人口の9割にとっては、2008年のバブル崩壊どころか、1980年からこっち、経済成長なんか、全く関係なく、社会における相対的立場は悪くなるばかりというわけです。

政治にも、この貧富の差、社会経済格差というテーマが、色濃く反映されるようになりました。

2016年のトランプ政権成立は、当時のインテリ識者にとってはショックでしたが、今回の2018年の11月の中間選挙での分析では、この貧富の差が、投票行動の差としてそのまま投票パターンに反映された、という身も蓋もない結論がいち早く出ました。

「2つの米国、両極化が続く」

2018年11月の下院選の結果、民主党の勝利に終わった228選挙区を調べると、これらの選挙区は、米国経済の60.9%を占めるアウトプットを体現するエリアだった。

対して、共和党が勝利した200選挙区が米国経済に占める割合は、37.6%だった。

労働者ごとの生産性(GDP)は、民主党勝利エリアで、年間13万ドル、共和党勝利エリアでは、10万ドル、大卒率は、民主党勝利エリアが35%、共和党勝利エリアでは、28%だった。

下院では、民主党がこの繁栄圏の利益を代弁することになるが、上院では、引き続き、「取り残されていくアメリカ」が、政策を左右し続けることになる。

(中山まとめ)

America’s two economies remain far apart

政治的には、過疎化が止まらないエリアが、それに反比例して、ますます発言権を増していっているため、現在の共和党政権が成立しているわけですね。

しかし、裏返して、経済の観点からのみ見れば、基本、大都市、大卒比率が高いエリア、ハイテク等の成長産業の拠点エリア、つまり、今回の下院選挙で民主党がより強かったエリアこそが、基本、今後の成長の多くを担っていく傾向があるのだという事実を踏まえて投資をしていかなければいけません。

基本、大都市というわけです。

しかし、より細かく見ていくと、大都市内ならなんでもいいというわけではなく、成長機運のあるメトロ圏においては、貧富の差というのは、実は、全米平均より更に極端であることもわかっています。成長圏内にも、「成長圏」と「取り残されていくアメリカ」が両立しているわけですね。

City and metropolitan inequality on the rise, driven by declining incomes

そのため、成長メトロ圏内であっても、貧困エリアでの中長期賃貸経営に、不案内な遠隔投資家が着手するのは、2018年現在、大変危険な戦略であると言っていいでしょう。

低所得者層向けの賃貸については、連邦の RENT VOUCHER(旧:SECTION 8、セクション8)による家賃補助システムが有名ですが、共和党政権は、2019年の予算では、この家賃補助制度の予算カットを要求しています。

そもそも、連邦予算による家賃補助が受けられているのは、全米賃借人世帯総数4,200万世帯のうち、200万世帯。5%未満です。(ちなみに、連邦定義の貧困率は現在13%台)

低所得者層の10世帯中7世帯が、予算がないため、必要としている連邦家賃補助を受けられていないという調査もあり、申請の手間を計算に入れずとも、低所得者層への家賃補助は、確実な予算とも言えないことがわかるかと思います。Housing Choice Voucher Fact Sheets

あまりに貧富の差が拡大し過ぎてしまうと、このように、様々な社会問題が生じてきます。

  • 低所得者層は家賃が払えなくなる、
  • 中間層には不動産が買えなくなる、
  • 教育レベルが確保できず、生産的な労働者層の供給に手こずる、
  • 社会不安や対立が増し、安全のコストが更に高くなる、

勝ち組にとっても、住み心地は悪くなり、企業も商品を売る先がなくなってしまうわけです。例えば、今、景気絶好調で、金利もまだこれから更に上る予定なのに、不動産市場はすでにもみ合いに入ってしまいました。

「中間層には不動産が買えなくなる」

2018年11月現在、完全雇用に近い状態で経済は躍進しているのに、不動産市場は早々に頭打ちに。

理由は、所得の伸び悩みと思われれる。

2011年以来、不動産価格指標であるケース・シラーインデックスは、48%上昇したが、個人所得は、25%しか上昇していない。サンフランシスコ市内で見る場合、個人所得は、この期間、40%上昇したが、物件価格は96%上昇した。

今の不動産市場が、バブルだということではないが、この流れを打開するには、所得アップが必要だ。

(中山まとめ)

Why the Housing Market Is Slumping Despite a Booming Economy

先の折れ線グラフに戻ります。

ソースは、実は、ランティエ(RENTIER、資産運用で生計を立てる層)経済の立役者、レイ・ダリオ氏(世界一のヘッジファンド、ブリッジウオーター社創始者)の最新著。

2018年9月18日付 ダリオ氏のインタビューから

「0.1%のトップ資産家の総資産額が、人口の9割と同じ額だというのは、20世紀最悪の1937年以来の深刻さ。

1930年代後半というのは、

  • 国際的には、米英覇権に、ドイツや日本が挑戦、ポピュリズムが国内外で台頭。
  • 国内的には経済格差が頂点に達し、経済サイクル上、経済縮小前夜だった。

現在の状況は、この時期に環境が似ているため、注意喚起したい。

類似点は、以下。

  • 中国が米国の経済的覇権をチャレンジしようと台頭してきている不穏な時期。
  • 国内の格差問題が過去最悪の1937年次水準に戻った
  • ポピュリスト政治が国内外で台頭。
  • 経済サイクル上、米国は縮小に向かう前夜。景気後退は2020年だと思う。

現在、40年代のように戦争が始まるとは思っていないが、後退が始まってしまうと、膠着状況を脱するまで、相当手こずるかもしれない。

問題を先取り解決できるのであれば、現在の格差問題については、大統領に緊急事態(national emergency)を宣言してほしい。

資本主義社会が力強くあるためには、一部の人間だけではなく、多くの人にとってもメリットのある開かれた機会均等社会でなければならない。」

(中山解釈・まとめ)

Ray Dalio says the economy looks like 1937 and a downturn is coming in about two years

金の卵を生むガチョウは、瀕死状態。景気が良い今を逃すと、社会問題を解決するための財源もなくなるというわけです。

重要なのは、バーニー・サンダースのような、民主党主流派か見ても”左”すぎる立場の人たちだけがこういう事を言っているわけではなく、現在、社会状況について、ウォールストリートのリーダーが、サンダース氏らと似通った認識を示すに至っているという事実でしょう。

本来、こういう社会の分配問題を解決できるのは、非合理なプロセスである政治だけ。

2008年時、オバマ政権の経済安定化策のおかげで、金融市場や不動産市場は回復したものの、儲かったのは、それらの市場に投資ができた層だけでした。

人口の多くが、その恩恵に預かっていません。

一般ピープルは、それでもまだ我慢し、オバマ政権下、経済回復を待ちましたが、その間にも、賃金の伸びではカバーできない不動産、教育、医療費の高騰に対面することに。

そういう経緯を経て、1980年以来の民衆の怒りが、たまり溜まったツケとして、2016年のトランプ政権誕生をもたらし、引き続き、爆発中というわけです。

しかし、「取り残された人々」の支持を受けて政権を担ったはずの共和党政権は、もともと、持てる者のための政党です。

大衆迎合は選挙対策に過ぎず、当然、貧困問題の解決という根っこの問題に対する抜本的な解決をもたらそうとはしません。

むしろ、貿易保護主義や移民排除へと、論点をナショナリズムへとすり替える扇動作戦を、展開中です。

この中間選挙のキャンペーンで、これだけ経済がうまく行っているのに、地方巡業中、経済運営には殆ど触れず、移民警戒論ばかりを叫んでいたトランプ大統領は、本当に、天才的なデマゴーグ(扇情的な政治家のこと)だと思いました。

彼には、自分がアピールをしている層には、実際には、経済成長の恩恵はほとんど行っていないことがわかっています。

ですから、教科書通りに経済が順調であることを強調してしまったら、「オレらには関係ないよ!」と、逆ギレされるだけ。

だから、選挙演説中は、

「経済が順調であるのは共和党の功績、今後も経済振興を任せられるのは共和党だけ!」

というイケイケのスピーチではなく、

「民主党が勝てば、キャラバンに乗った下層移民が入国して、そういう奴らと福祉パイのシェアを分け合わなければいけなくなり、庶民の立場は、もっとひどくなる。民主党を勝たせるな!」

と、生活防衛を論じたわけです。‘Democrats won the House but Trump won the election’ – and 2020 is next

ニューヨーク出身の資本家が、どうして、これだけ、純な地方貧困層をころがすテクに長けているのでしょうか。誠にわかりやすいことに、選挙後、この話題は、完全にたち消えになりました。

ということで、問題解決は、基本、最終的には、今度こそ、財界のダリオ氏すらがいうように、「より積極的な所得再配分や教育機会均等を牽引役に、国民みんなを巻き込んでのボトムアップの経済成長」を目標とすることだということは、ほぼ、明らかですが、まだ、具体的な展望は立ちません。

話が大きくなってしまいましたが、ここまでが、投資戦略の背景となる米国経済の現状分析についてのお話。

実際の小規模不動産投資家戦略としては、当面、方向性なき膠着状態が続く中、格差社会の下方圧力に引きずられることは、避けなければいけません。

日本での賃貸経営や成長に限界を感じ、米国なら、成長の恩恵を受けながら、同時に節税対策ができると思って、米国不動産に着手される方は多いです。

しかし、そうした方が、”米国の2つの顔”についての深い理解なく、貧困層向け賃貸に不用意に着手してしまうケースがよく耳に入ってきます。

その段階で、「いい管理会社はどうやって探せばいいのか?」などと慌てても、問題はそこではなく、解決は、損切りしか無いということになりかねません。

私も50なのでわかりますが、私の年齢以上の方というのは、自分の若いときのあこがれの国、中産階級が強かった米国のイメージが、まだ、脳裏に張り付いているのかもしれません。観光地に行けば、今の米国は、たしかに、期待を上回る活況ぶりを見せてくれます。

しかし、それは、あくまで、米国の一つの顔。

この30年間のうちに徐々に台頭してきた”もう一つの顔”には、くれぐれも、お気をつけください。

この記事のまとめ

世界的な流れとして、社会経済格差の拡大傾向と、その反映としてのポピュリズムの台頭が広く指摘されています。

直近の米国の格差社会ぶりの極端さは、1937年という、20世紀最悪の格差度と同じレベル。トップ0.1パーセンターが、社会の9割の富と同じ総資産額を誇っています。

社会の不穏、不満を解決し、景気が次ステージで浮揚するためには、所得の再配分が必要になるでしょう。

しかし、今は、政治が混迷していて、解決の糸口が見えません。

こういう中、地元ベテラン組はいざしらず、遠隔の初級不動産投資家は、期せずして、下層化するエリアでの長期投資に着手してしまわないよう、くれぐれも注意する必要があります。