この記事の概要
米国では、一戸建てが基準。多くの都市部で、一戸建て以外は建ててはいけないという建築基準条例(ZONING、ゾーニング)があり、経済格差、人種差別の根深い温床といわれてきた。
人口成長の結果、一部の都市圏で、「一戸建てONLY」の建築基準条例を見直す機運が生まれている。
アメリカ不動産投資で資産倍増中のブログ管理人中山道子です。先日は、「米国人の一戸建て信仰がいかに根強いか」について、ブログ記事を書きましたが、
今日は、そんな一戸建て信仰をめぐる政策について。
私が若いころは、日本の住宅事情は、それほど充実しておらず、父の仕事で北米に引っ越した時には、いきなり立派な社宅に住ませていただくことになり、びっくりしたことを思い出します。
工場勤務のいわゆるブルーカラー層であっても、庭付きの一戸建てに住んで、リッチな生活をしていて、、、
こうした風景は、実は、アメリカでは、市町村レベルの建築条例上、「一戸建て以外は禁止!」といった決まりがあって実現しているのです。人口が密集しているアジアでは考えられない思想ですが、、、
Cities Start to Question an American Ideal: A House With a Yard on Every Lot
きれいに手入れされた庭付きの一戸建てが並ぶ通り、お店もなく、閑静な高級住宅街を演出するには、最適戦略で、長期的には、この結果、居宅の価値を高めることも可能です。問題は、行き過ぎという弊害。
長年の一戸建てオンリー政策の結果、多くの都市では、主要エリアには、庭付き一戸建てだけしか建築できません。都市の人口密度はあがらず、成長するためには、郊外へとスプロールするしかないことになります。居宅はおのずと割高になりがちで、通勤時間は長くなるばかり。さらに、低所得者にとっては、そもそも、住宅を買うこと自体が、困難になります。
また、歴史的な経済的弱者である典型的なアフリカ系アメリカ人にとっては、割高になってしまった一戸建てを買うことは、昨今、依然、難しく、住宅難の結果、白人と非白人との間の人種経済格差は、固定化、拡大の傾向があります。
こうした背景に対し、一部の自治体が、対策に立ち上がり始めています。
今年、オレゴン州では、市町村ではなく、州レベルで、「一戸建てONLY」政策を撤廃。アパート建設というより、二世帯、三世帯、四世帯住宅までが許容されるということなようです。
Oregon Nixes Single-Family-Only Zoning in Cities Over 10K
カルフォルニアでは、「抵抗勢力」の力が強く、ここまでいかないものの、やはり、条例改正で、今年、「自宅の車庫を改造して居住空間を作る」こと、「自宅の裏庭に小規模住宅を建てること」などが可能になりました。
How lawmakers are upending the California lifestyle to fight a housing shortage
これらの改造がOKになれば、実質、「一世帯」しかなかった敷地に、2世帯、3世帯が居住できるようになります。「裏庭を使っての賃貸経営」が可能です。いわば、既存の一戸建てONLY条約を骨抜きにする方策ですね。
市レベルでは、やはりミネアポリス市が、一戸建てONLY政策を撤廃することに成功しました。
Minneapolis, Tackling Housing Crisis and Inequity, Votes to End Single-Family Zoning
これだけの住宅難、建築規制がある国であるため、米国には、「きちんと許可を取らずに、居宅を改造してしまったケース」も後を絶ちません。
遠隔投資をする際には、一戸建てがまだまだ基本ですが、不法増築物件にも気を付けましょう。キャッシュで買う場合は気が付かないことも多いですが、火災保険のトラブルのもとにもなりますし、そもそも、いざ、転売しようと思うと、買い手の銀行審査を通らないといった可能性もなきにしもあらず。
さらに、もし、こうした二世帯、三世帯住宅への政策プッシュがどんどん成功していったりすると、逆に、住宅価格は長期的に停滞することになりうるわけですから、そこにも注意が必要です。
この記事のまとめ
米国居宅の資産性にとって、一戸建て条例の演じる役割は実は決定的。多くの地方自治体の住宅難対策が成功を収めれば、住宅の価値が長期的に停滞する可能性もある。こうした観点からも、不動産投資のポートフォリオづくりも、あまりに長いスパンで計画することは困難であるといえましょう。
住宅政策は、連邦レベルというよりは、州レベル、自治体レベルで決定されていくので、お気を付けください。