米国全世帯の下半分は、経済回復後、1970年次より貧困化

アメリカ不動産投資で資産倍増中!ブログの中山道子です。

この記事の概要

ウオールストリートジャーナル報道のある調査によると、大恐慌前と比べ、米国全世帯の下半分は、1970年次と比べ、インフレを勘案すると、32%の資産減。

白人世帯と黒人世帯との間の格差も、1940年代と比べ、進歩無し。

調査のもととなったデータは、連邦準備銀行の Survey of Consumer Finances (SCF)

この記事の作成に当たっては、下の記事を参照しました。

Historic Asset Boom Passes by Half of FamiliesScant wealth leaves families vulnerable if recession hits, economists say

論文の原典は、下。

Income and Wealth Inequality in America,1949-2016Moritz Kuhn, Moritz Schularick, Ulrike I. Steins, June 7, 2018

このブログでは、これまでにも、ずいぶん、「貧富の差」拡大の問題を取り上げてきました。貧困層を相手にする「貧困ビジネス」が、不動産投資家にとって、いかに危険かという問題に警鐘を鳴らすためです。

10年前までは、経済の「トリクルダウン」(上から下に流れていく)ということが言われていて、経済が向上すれば、一般ピープルへも、恩恵がいきわたると単純に考えられていました。

象徴的だったのは、過去の日本の経済政策を主導する立場だった竹中平蔵・元総務相の「手のひら返し」。ネットでも、以下のように報道されています。

「トリクルダウンあり得ない」竹中氏が手のひら返しのア然

これは、竹中さんだけが悪いのではないのだろうと思います。当時は、経済学者は、みんな、「アッパーが良くなれば、全国民に恩恵がある」と思ってきたわけです。私自身ももちろん、単なる新聞の一読者レベルの一般人ですから、当時、そうした識者の見解を信じていました。

しかし、大恐慌後、経済が回復するにつれ、アッパーはますますイケイケ、それに対し、ロウワー層は弱るばかり。この10年を経て、「トリクルダウンにはならなかったんだよなあ、、、」という現実を突きつけられることになっているわけです。

振り返って考えれば、理由ははっきりしています。政府の不況対策が、アッパー層に対する意味しか持たなかったからですね。

低金利政策は、個人レベルでは、正社員や、頭金が用意できるなど、不動産が買えるランクの人だけにしか役に立ちません。量的緩和は、株式を買う人、上場会社関係者だけ。

この間、ほぼほぼ完全雇用は実現できていますが、それは、雇用の定義のレベルの問題な気がしますね。所得はあがっていないわけです。(最近ようやく多少の上昇がありますが、もう景気回復最後のこの時期、too little, too late 感があります。)

それで、賃金をアップさせることができなかったのが問題だったのだということで、現在、最低賃金アップを目指す政策が出てきています。移民制限と合わせて、多少の成果も見せている反面、並行して、オートメーション化が進むかもしれないとか、マス層には、厳しい話が続きます。

現在、米国は、依然、消費者の消費行動が経済のけん引役を演じていますが、実際には、総世帯の半分は、収入的には、歴史的に、ほぼ、横ばいが続きます。

資産総額的に見ると、この層は、自宅を買えていた場合は、1971年から2007年までに、額面資産額が増えていたようですが、その後、バブル崩壊したので、最終的に、現在、インフレアジャストをすると、1971年の水準と比べ、3割減となっているという衝撃。

これは、ロウワー層が、自宅を購入していた場合、手放したケースもあったでしょうし、この層については、自宅が、まだ、バブル直前の水準に戻っていない可能性も。

これが、投資家にとってどういう意味を持つかというと、不動産市場について、貧困層、ロウワー居住エリアで物件を買ってしまうと、よしんば、賃貸が安定する場合であっても、居宅の資産性は、アッパーエリアの物件に比べ、上がりにくいだろうことが予想されます。上がらないどころか、最悪の場合は、アメリカですら、日本のように、「買ってしまったが、賃貸経営(破綻)後、もう、売ることができない」、といった状況に陥ることがあります。

ロウワー層が、「1970年以来所得が横ばい」と聞けば、家賃はインフレ以上に値上がりする傾向があるわけですから、「居宅難民」が増え、ロウワー地域においても、家賃が払えない層が増えている可能性があるわけで、賃貸自体も、この層においては、15年前より難しくなったという私の現状認識が、このデータで裏打ちできる気がします。

現在開催している「投資塾」(有料1年間6万・年次中途参加可能、過去分はすべて動画と資料で復習可能)では、投資物件のエリアリサーチを行う方法を初回にご説明しましたが、「周囲の所得水準」や「持ち家比率」、「家のサイズや建築年数、価格」がエリア相応かなど、あらゆるファクターを確認しながら投資物件取得を進めていくことが、過去に増して、ずっと重要になっています。

この記事の結論

米国全世帯の下半分は、景気改善の恩恵を全く受けておらず、むしろ、長期的に状況は悪くなるばかり。この格差は短期間では解決できないでしょう。この層は、収入は横ばいで、家賃の値上がりについて行けず、資産は3割目減りとなれば、新規に居宅購入にも、至りようがありません。

不動産投資は、ロケーション、、ロケーション、ロケーションです。ロウワー層の歴史的停滞は、この層が居住するエリアの経済的停滞そのものに直結します。

不動産関係者の言うことではないかもしれませんが、いい物件を買えないなら、買わないほうがましなのが最新米国不動産事情です。