ウオーレン・バフェット氏が不動産投資に手を出さないわけ

アメリカ不動産投資で資産倍増中ブログの中山道子です。自分の不動産ポートフォリオを使って、年率10パーセントに迫るリターンをたたき出すパッシブインカム投資をしているミリオネア投資家です。私の投資手法(単純な賃貸経営ではこの数字は出ません)について知りたい方は、まずは無料メルマガご登録ください。

この記事では、今世紀最大の大物投資家、ウオーレン・バフェット氏がどうして不動産投資をしないのかを検討します。バフェット氏が、不動産に手を出さないということは、私たちが不動産投資をするのは、間違いなのでしょうか?

この記事のまとめ

バフェット氏の過去の発言を見ると、株式のほうが儲かる、不動産は、株式と異なり、物件価格に間違いがある可能性が低いため、競争が難しい、などと発言しているようです。

他方では、現在、彼の会社は、バークシャー・ハサウエイ・ホーム・サービセズという不動産仲介会社を経営しており、これは、全米一の取引高を誇るに至っています。仲介業なら、不動産市場の動向についての特別な知識がなくても、「仲介手数料」という形で売り上げが立てやすいであろうと想像されます。

豊富な資本力を投入し、買収を繰り返し、モノポリー的なシェアを取る。バフェット氏の経営哲学をそのまま反映した失敗しない「不動産投資法」ですね。

バフェット氏は、世界一の投資家などとも呼ばれています。もし、不動産が儲かる投資なら、どうして、バフェット氏は、不動産投資に着手しないのか、この記事で、検討してみましょう。もし、世界で最も頭のいい投資家が不動産に手を出そうとしないのであれば、あなたや、私が不動産投資をするのは、「骨折り損のくたびれ儲け」なのでしょうか?

バフェット氏の略歴によると、彼は、オマハで投資に着手するにあたり、最初、不動産投資にも手を出したのにもかかわらず、失敗し、その後、株式投資のほうが順調に進み、その後は、ほとんど不動産のほうには手を出していないようです。

当初、彼は、

不動産投資より株式投資のほうが簡単だ

と豪語していたようですが、ユーチューブに、昔の彼のインタビューで、「なぜ不動産投資をしないのか」について、チャーリー・マンガー氏と一緒にまじめな回答をしているビデオをこの前見ました。

下にご紹介してみます。

ソースが報道機関などではなく、はっきりしないので、正確な日にちが不明ですが、2002年のバークシャーハサウエー社の株主総会の場でのやり取りであるように見受けられます。

それによると、バフェット氏は、以下のように発言しています。

ーーーー 不動産についてのバフェット氏の発言、中山意訳に基づく概略説明 ーーー

不動産というのは、株式と比べると、価格の齟齬が少なくて、掲載されている物件のデータを見ると、大体、掲載価格が格段に安いといったようなことが少ない。

株式なら、時に、市場の価格付けが大きく間違っていて、バリューのある株式が割安で買えるということがよくあるが、不動産の場合は、つまり、そういう「オイシイ買い方」が難しい。

このため、経験豊富な現場の投資家と比べ、自分たちは、不動産について、特別な「儲かりポイント」がない。

また、こちらは、投資ファンドであるため、人様の資金を預かって営利企業形式で投資をし、確定申告をしなければならないが、それに対し、不動産専用の REIT や、個人レベルの自営業的な投資家、パススルーLLCで投資をしている人たちのほうが、不動産投資をする際の税金上の節税メリットがずっと高く、その意味でも、太刀打ちできない。

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バフェット氏が、不動産には、MISPRICING (価格付けの間違い)があまり生じない、と言っているのは、主として、正式な仲介取引のデータを見てのことかと思います。

プロの投資家であれば、それなりの方法で、正規流通ルート外の案件を仕立ててくる能力があるもので、それが不動産のプロがプロたるゆえんなのですが、バークシャー社の規模になると、仲介業者が扱わない「枠外」的な不動産の取得方法は、手間やコストがかかりすぎるのでしょう。

また、バークシャーは、投資ファンドですから、節税が難しく、リート( REIT )を設立してしまうと、その年の利益の9割を株主に再配分しなければならないという決まりを守らざるを得なくなります。周知のように、バフェット氏は、成長を好み、株主配当をするのが大嫌いですから、これも「ナシ」だということになるのですね。

ただ、実は、バークシャー社は、1999年に、不動産仲介会社を買収し、その後、バークシャー・ハサウエー・ホーム・サービセズ社は、バークシャー・グループの豊富な資金力を盾にした買収劇を繰り返し、取引高で全米一番の仲介業者に躍り出るまでになっています。

バフェット氏は、前々から、一番好きなのは、モノポリー、つまり、市場独占型タイプの企業への投資だ、と言ってきていますが、まさに、自分の取得した仲介会社を、市場寡占型トップ企業にまで成長させたわけです。

なるほど、仲介業者さんとしての立ち位置なら、取引高に基づくコミッションは、市場がどっちを向いても売り上げがあげられるわけですから、これなら、

> 不動産市場において大きな利益をコンスタントに得られやすい、
> 業界データを取得しやすい
> 自社の保険会社とのシナジーが高そう

とおいしいところだらけであろうことは想像に難くありません。

それでは、私たち個人投資家にとっては、これは、どういう意味を持つのでしょうか?バフェット氏がやらない投資というのは、無駄な、非効率な投資なのでしょうか?

彼のロジックを、丁寧に見ることでわかるように、バフェット氏が不動産に求めているものは、私たち個人レベルの不動産投資家が不動産に求めているものとは全く違います。

彼は、バークシャー社の株式については、「配当を絶対したくない」と明言しています。成長を追求するからですね。企業の生命は永遠、個人の人生を超えて会社の成長を未来永劫求めているわけです。

しかし、私たちは、高齢になり、リタイアをし、最後は死んでいくわけで、多くの個人投資家は、リタイヤ時のインカムゲインを目標に不動産投資をしています。バフェット氏と真逆で、最終的には、配当が、毎年最大限楽してもらえる、そこまで行くことが目標なわけです。

以上から考えると、バフェット氏が不動産に投資をしない理由は、理解できましたが、その理由は、私たちには必ずしも当てはまらないわけです。同時に、個人が不動産投資をするときは、まさに、減価償却が本業所得に引き当てられるなど、不動産には、株式と違う、オイシイ節税ポイントがいくつもあります。

ただ、一つ、注意を喚起したいのは、経験値の重要性。

株式のいいところは、多くのエントリーレベルの投資家が、プロに似た価格、あるいは、同じ価格で、下手をすると、大口プロより安く、株式を買えることでしょうか。エントリー障壁が限りなく低いわけです。

それに対し、バフェット氏の指摘するように、「市場に普通に流通する不動産物件」は、仲介業者さんが、売主さんに、適切な価格付けの指南をするため、それほどの価格のミスマッチはありません。

つまり、普通の買い方では、平均を超えるレベルのメリットは生じないのです。

この問題を解決するには、他の対策が必要になります。この記事ではこれ以上言及しませんが、ベテランになればなるほど、不動産は、買い方、案件の仕立て方しだいなのだということがわかってきます。

この記事のまとめ

バフェット氏が不動産に投資をしない理由は、ずばり、「配当より成長」という自分のビジネスモデルにあわないから。個人投資家は、逆に、リタイヤ後の毎年の配当がほしくて、不動産投資をするものなので、両者の考え方は、立場の違いの問題です。

個人投資家は、自分の投資の目標をしっかり見据え、適切な手段を選びましょう。うまく構成された不動産ポートフォリオは、株式市場より高いリターンをたたき出すことができます。

なお、どのような場合でも、素人が簡単に儲かるような市場というのはありません。あったら、それはバブルの症状ということでしょう。海千山千の業者さんに丸め込まれてしまわないためにも、まずは、勉強されてみてください。

参照記事
https://www.thebalance.com/warren-buffett-biography-356436
https://apnews.com/article/dcd0bc3c5b004c64a6f675c291788a8d